建設業の労災事例

コンクリート打設後2ヶ月経過した地下ピットに型枠解体のため入り酸素欠乏症となる

   

【発生状況】

この災害は、大学の研究棟の建設工事中に発生したものである。

この工事全体は約2年間の工期で行われるものであったが、約1年が経過した時点でコンクリートが打設されてから約2か月間密閉されていた地下ピット(ケーブルや上下水道の配管等を収容するためのピット)内の型枠の解体作業を行うことになった。

災害発生当日の作業の内容は、幾つかに分割されているピット間に設置されている型枠材に穴を開け人通孔を確保するもので、被災者は同僚と2人で朝から地下ピットに入ってこの作業を開始した。

午後3時頃、被災者は、ピット2とピット3の間にある型枠材を手鋸を使用して切断し、ピット3に入ったところで気を失って倒れた。

その後、被災者は元方事業者の職員等によって換気したのち救出され病院に移送されたが、3日後に酸素欠乏症のため死亡した。

なお、被災者および同僚は形式上は2次下請の労働者であるが、実際には派遣労働者で作業の指揮・監督は元方事業者または1次下請事業者が行っていた。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 ピット内が酸素欠乏危険場所になっていたこと

災害が発生した後に同様の条件で他のピットで酸素濃度を測定したところ、3.5~3.6%であったことから、ピット3の中は著しい酸素欠乏危険場所になっていたと推定される。

なお、その原因としては、ピット内において好気性の微生物が増殖したことによるものと推定される。

2 作業主任者の未選任、酸素濃度測定の未実施など安全衛生管理を実施していなかったこと

この災害の直接的な原因はピット内が酸素欠乏状態となっていたことであるが、間接的な原因としては次のことがあげられる

(1) 元方事業者は換気の必要性については認識していたが、それ以外の酸欠災害防止対策については特に指示を行っていなかった。

(2) 1次下請(被災者の派遣先)の現場責任者も酸素欠乏危険については認識していたが、元方事業者に対して換気以外の酸欠災害防止対策について要請せず、また、換気の実施についても明確な指示を行っていなかった。

(3) 酸素欠乏危険作業主任者を選任して、酸素濃度等の測定、作業の監視等を行わせていなかった。

(4) 関係労働者に対して酸素欠乏危険およびその防止対策についてあらかじめ教育を実施していなかった。

なお、被災者らは、派遣労働者であったが、危険有害な業務に安易に従事させていたことも原因の一つとしてあげられる。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業主任者を選任し、その職務を励行させること

酸素欠乏危険作業主任者を選任し、次のような職務を励行させる。(酸欠則第11条関連)

(1) 作業の方法を決定し労働者を指揮すること

(2) 作業開始前等に酸素濃度を測定すること

(3) 測定器具・換気装置・空気呼吸器等の点検を行うこと

(4) 空気呼吸器等の使用状況を監視すること

2 特別教育を実施すること

関係作業者に対して酸素欠乏危険に係る特別教育をあらかじめ実施する。(酸欠則第12条関連)

なお、酸素欠乏危険場所には、関係者以外の立ち入りを禁止し、その旨を表示する。(酸欠則第9条、安衛則第640条関連)

3 換気を十分に行うこと

地下ピット内で作業を行うときには、あらかじめ換気を十分に行う。(酸欠則第5条関連)

4 安全衛生管理体制を整備すること

酸素欠乏危険場所等を有する工事現場においては、元方事業者による関係請負人の連絡調整、作業場所の巡視等を行う体制を整備する。(安衛法第30条関連)

 

【業種】

鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100732より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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家庭用プロパンガスの供給切換中に酸素欠乏症

   

【発生状況】

この災害は、家庭用プロパンガス供給設備工事中に発生したものである。

災害発生当日、住宅地で使用されているプロパンガスをボンベ方式から集合方式への切換工事を請け負ったX社では、専務と作業員3名で作業を開始した。

作業の内容は、道路下に埋設されているプロパンガス(1.39Mpa)の本管(内径150mm)から一般家庭への供給管(内径32㎜)を接続するもので、まず住宅の北側から道路まで(延長11m、幅0.86m、深さ0.3m)のうち、本管に接続している枝管部分を深さ1.7m、幅0.78m、長3.2mを専務Aが小型ドラグ・ショベルを使用して溝を掘削した。

次いで、作業員Bがドラグ・ショベルで掘削した溝に入り、枝管をパイプカッターで切断してプロパンガスが漏れないように防食テープを切れ目に巻きつけ、さらに防食テープを巻いた本管側25㎝をパイプカッターで切断し、ストッパーを切断した枝管に取り付けようとしたがうまく取り付けることができず、手間取っている間にBが溝内で倒れた。

これを見た作業員Cが溝内に入ってBを救出した後、溝内に入って、ストッパーを調整していたがまもなく倒れたので、Aと作業員DがCを救出するため掘削溝に入ったが、両名とも気を失って倒れた。

近隣の主婦が消防署に通報し、救出されて病院に移送されたが、4名とも酸素欠乏症のため2日から6ヵ月の休業となった。

【原因】

この災害は、家庭用プロパンガス供給設備工事中に発生したものであるが、その災害原因としては、次のようなことが考えられる。

1 管理責任者をはじめ、作業者全員に酸素欠乏危険についての知識がなかったこと

たとえ明かり掘削した溝で上部が開放していても、狭い場合にはプロパンガスは空気より重いために溝の底部に滞留して、容易に酸欠危険場所になるおそれのあることを知らなかった。

2 本管のガス供給を停止せずに作業を行ったこと

この作業は、プロパンガスの本管から家庭への供給管を取り付けるものであったが、ガス本管側の供給を遮断しないまま作業を行い、作業に手間取ったため、プロパンガス供給管埋設用に掘削した溝内にプロパンガス漏洩して充満した。

3 溝内が狭いため取付け作業が円滑にできなかったこと

本管と枝管との接続箇所の掘削範囲が小さかったため、ガス漏れ防止のために取り付けるストッパーを正しく、手早く装着することができなかった。

4 作業手順が定められていなかったこと

プロパンガスが供給されている本管と、これと接続している枝管にストッパーを接続する作業の手順が定められていなかったため、短時間でストッパーが取り付けられると考え安易に作業を実施した。

【対策】

この災害は、家庭用プロパンガス供給設備工事中に発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 ガス管の接続作業の手順を定めて作業を行うこと

プロパンガス等が供給されたままの本管(または枝管)の一部を切断、開放することは極めて危険であるので、次のような事項を含めた作業手順を定め、関係作業者等に徹底する。

(1) ガスを遮断した場合でも本管に残存しているガスが漏洩することによる危害を防止するため、空気呼吸器等を使用すること

(2) ストッパー等を取り付ける場合には、一旦、本管のガス供給を遮断すること

(3) 溝内に有害なガスが滞留しないよう換気すること

2 安全な作業が行えるように掘削すること

掘削溝内でガス配管工事を行う場合には、溝内作業が安全に、かつ、効率的に実施できるよう十分な広さの溝を掘削する。

3 酸素欠乏危険等について教育を実施すること

掘削溝内においてガス配管工事等に従事する者に対しては、供給されているガスまたは地層による危険有害性、漏洩することによる危害の種類とその防止対策、危害防止のための空気呼吸器の使用方法等について、あらかじめ安全衛生教育を実施する。(安衛法第59条、安衛則第35・36条関連)

 

 

【業種】

その他の土木工事業

【被害者数】

休業者数:4人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100733より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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