建設業の労災事例

休憩時間に吊り足場を移動中、川に墜落

   

【発生状況】

この災害は、橋梁塗装工事用の吊り足場解体作業において発生したものである。

この現場では橋梁の塗装工事が行われていたが、それが終了したので作業用吊り足場の解体作業が始められており、前日までに墜落防止用の防網等は撤去されていた。

災害発生当日は、吊り足場板の解体・撤去作業が行われることになり、2次下請3社の7名の作業員により災害発生時までに足場板緊結用の番線の切断、足場板の取外しと移動式クレーンによる搬出のための積み重ね作業等が行われていた。

2次下請に所属する被災者は、職長の指示により午後2時頃から船が通る際の目印としていた赤布(20cm)の取外し作業を一人で行っていたが、午後3時の休憩になったので作業を行っていた足場板の上で休憩をしていた。

被災者の近くの足場上では、他の4名の作業員が休憩をしていたが、そのうち一人が被災者に側に来るように声を掛けた直後に「ぼちゃん」という音が聞こえたので、被災者の居た箇所を見たところ、足場上に姿はなく川に墜落していた。

その後、4名は、救出作業を試みたが被災者を発見できなかったので、消防署へ通報しレスキュー隊が捜索したところ川底にいた被災者を発見して引き上げたが、すでに溺死していた。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 墜落防止措置を行っていなかったこと

被災者が行っていた吊り足場の番線切断、船舶用の目印の取外し箇所は、川の水面から2m以上の箇所で解体作業中に墜落による危険があったにもかかわらず、安全帯を使用させていなかった。

なお、解体作業時に安全帯を使用するための吊りチェーンはあったが、移動の際に安全帯を掛けるための親ロープ等の取り付け設備は設けられていなかった。

2 未成年者に高所で作業を行わせたこと

被災者は、雇入れ後9日しか経過していない18歳未満の者であり、しかも鳶職の経験もないのに墜落危険のある場所で作業を行わせていた。

3 作業計画が作成されていなかったこと

この工事現場では、足場の解体作業の手順等についての作業計画を定めないまま作業を行わせていた。

4 統括安全管理等が不十分であったこと

この現場では3次までの重層構造で作業が進められていたが、元方事業者による連絡調整、指導援助が十分に行われていなかった。

また、足場の組立等作業主任者は、安全帯の使用状況監視等の職務を履行していなかった。

なお、被災者を雇用する事業者は、作業者に対して墜落災害対策等に関する安全教育を実施していなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 吊り足場の組立、解体等の作業を行わせるときには、作業者に安全帯の使用など墜落を防止するための措置を徹底すること

安全帯の使用については、作業時だけでなく移動の際も確実に取り付けができるよう親綱を張ること等を行うとともに、その使用方法を教育訓練する。(安衛則第519~521条関連)

2 18歳未満の者を足場の解体・変更等の作業に従事させないこと

満18歳に満たない者は、足場の解体・変更(地上または床上における補助業務を除く)等の作業には従事させない。(労基法第62条・年少則第8条関連)

3 作業主任者の職務を確実に履行させること

吊り足場の組立・解体の作業を行う場合には、足場の組み立て等作業主任者を選任し、作業方法および労働者の配置を指示するとともに、安全帯や保護帽の使用状況の監視などの職務を確実に履行させる。(安衛則第566条関連)

4 統括安全管理等を実施すること

元方事業者は関係下請業者を含めた安全協議組織を設置し、作業に関する連絡調整を行うとともに、作業場所を巡視し必要な指導援助を行う。(安衛法第30条関連)

また、労働者を雇用する事業者は、あらかじめ墜落危険とその防止対策等について安全教育を実施する。(安衛法第59条、安衛則第35条関連)

 

【業種】

橋梁建設工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100620より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

 - 函館の建設業, 旭川の建設業, 札幌の建設業 , , , , , ,