杭打機の作業台上でスクリュウを誘導中、主フックが落下
【発生状況】
この災害は、杭打機(アースオーガー)の作業台上でスクリュウを誘導していたときに、浮きクレーンの主フックが落下して発生したものである。
この工事は、ふ頭の護岸に沿って、幅10m×長さ200mの桟橋を設置する工事であった。桟橋は上部工と下部工に分かれており、下部工から先に行われ、下部工は桟橋の基礎杭を打ち込む作業であった。
災害発生当日、杭打機を乗せた台船と浮きクレーンが岸壁の係留場に係留されていたので、午前10時頃から作業打合せが行われ、詳しい作業手順を確認した後、午前11時に作業が開始された。
まず、浮きクレーンの主フックでケーシングをつり上げ、杭打機の近くに垂直に立てた。一方、クレーンの補フックでスクリュウを吊り上げ、ケーシングの上端まで移動した。
被災者は、杭打機の作業台に乗り、つり上げられ、振れていたスクリュウをケーシングの穴に誘導していたとき、突然、主フックが下降して被災者に落下し、その反動で作業台から転落したが、安全帯を使用していたので空中にぶら下がる状態となった。
現場にいた同僚が救出し、救急車で病院に収容したが、死亡した。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 ケーシングをつっていた浮きクレーンの主フックがスクリュウに引っかかり、一旦持ち上げられてしまった後、スクリュウをケーシングの穴に誘導しているときに、その引っかかりが突然はずれ、被災者に落下したこと。
2 浮きクレーンの主フックにケーシングをつったまま、補フックにもスクリュウをつり上げるという2つの危険な玉掛け作業を同時に行ったこと。
3 浮きクレーンの主フックの玉掛けの状態を事前に十分確認することなく、また、主フックとスクリュウとの接触の有無など観察することなく、スクリュウをケーシングに誘導することのみに気をとられていたこと。
4 この一連の作業について、作業指揮や監視を行う者がおらず、被災者が玉掛けの合図者となって誘導を単独で行ったこと。
5 作業開始前に一応の作業手順の打合せを行ったとはいえ、これからも繰り返し行われる玉掛けや誘導の作業時の危険性についてのシュミレーションや安全作業方法の確認が不十分であったこと。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 浮きクレーンの主フックによりケーシングのつり上げ作業と補フックによるスクリュウのつり上げ作業を同時に行わない作業方法、作業手順を採用すること。
なお、主フックとスクリュウの接触、脱落等の危険性の有無について検討し、安全な作業方法、作業手順などを定めた作業計画を作成すること。
2 この作業計画に基づいて、毎日の作業開始前の安全ミーティングにおいて、必ず危険のポイントと安全作業のポイントを関係作業員全員にKY活動等により確認させること。
3 スクリュウをケーシングに誘導する場合には、作業開始前に必ず主フックの状況、特にスクリュウとの接触、脱落等が発生しうるかどうかを再度確認するとともに、作業全体を指揮する作業指揮者を配置し、その者の作業指揮の下に玉掛けの合図を行い、適切に誘導などを行うこと。
4 ケーシングの組立作業の手順についても、あらためて作業のプロセスにおける危険度評価を行い、その結果に基づいて、作業者全員に対する安全教育を行うこと。
【業種】
港湾海岸工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100788より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
立木の伐倒作業中、激突され
発生状況
この災害は、立木の伐倒作業中に発生したものである。
この工事は、砂防ダム建設工事のうちの準備工として、河川両岸の立木の伐採(抜倒、枝打ち、玉切り、搬出等)を行う作業であった。
災害発生当日の朝、午前7時50分頃から、現場作業の説明・打合せが始まり、伐採範囲、地形、立木の状況、作業方法、作業分担などが確認され、KYミーティングの後に作業が開始された。
午前11時頃、元請の現場責任者が、被災者に対して立木の抜倒箇所から南東方向に約13m離れた地点で別の抜倒木の枝払い作業を行うよう指示を与えた。あわせて、立木の抜倒方向を伝えていた。
そして、現場責任者は、現場入口から東北方向約70m離れた地点で、高さ約17m、南東方向に約30度の下り斜面に立っていた立木をチェーンソーで南西方向(川下方向)に倒そうとし、受け口を切り込み、次に抜倒する旨を被災者に伝え、最後に追い口を深く入れたところ、川下方向からの風が強くなり、抜倒方向が約90度ずれ、チェーンソーで枝払い作業をしていた被災者の右肩に直撃し、被災した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 抜倒木の倒れる範囲内で作業をしていた被災者を、安全な場所まで待避させることなく立木の伐倒を行ったこと。
被災者の所属する会社では、安全教育時に使用する「抜倒作業手順」および「作業注意事項」において、「伐採作業を行うときは、作業員の間隔を立木の樹高の約1.5倍の距離をおくこと。」としており、このルールが守られていなかった。
2 チェーンソーによる伐採方法が不適切であったこと。
(1) 受け口および追い口の切り込みを立木に水平に入れるべきところを、地山の傾斜面にほぼ平行(角度は約15度)に入れたため、力学的にみて被災者の作業位置方向に倒れる力が働いたと思われること。
(2) 追い口を深く入れすぎたため、抜倒方向に直角に残るべき「つる」が被災者方向に約7cm残る程度であったことにより、被災者方向に倒れやすい方向になったこと。
3 被災者が抜倒箇所に背を向けて枝払い作業を続けており、抜倒方向を確認していなかったこと。
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 立木の伐倒作業を行う場合には、あらかじめ「抜倒作業手順」および「作業注意事項」に定められた作業方法による作業計画を作成し、当日のKYミーティングなどで、特に次の点の安全確認を行わせること。
(1) 抜倒作業を行う場合には、抜倒範囲内で作業する者に対し、必ず、立木の樹高の1.5倍以上の間隔を確保し、抜倒作業を行う者と枝打ち等の作業を行う者との安全な退避距離や位置を相互に確認させてから作業を開始させること。
(2) チェーンソーによる伐木作業時の技能の判断基準として、伐倒方向が地山の傾斜面の横方向または斜め下方向に受け口および追い口の切り込みを入れ、作業手順どおり、抜倒方向に垂直に「つる」が伐根ばっこん直径の約10分の1以上残るようにすること。
2 作業時の危険性を再評価し、作業手順や注意事項の内容を見直し、現場責任者、関係労働者全員に対する安全教育を行い、周知徹底すること。
3 立木の伐採作業についての知識の習得や経験を積ませるため、現場責任者等に対し、専門機関の研修を受講させ、効果的な技術の習得や安全意識の高揚に努めること。
【業種】
砂防工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100789より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
- ■前の記事へ
- 立木の伐倒作業中、激突され