製鉄所の空気分離装置の解体作業で保冷材の抜き取り準備中に流出した保冷材に埋没し死亡
【発生状況】
この災害は、製鉄所の空気分離装置の解体作業で発生したものである。
この製鉄所では、製鉄用プラント設備(分塊冷却塔設備)に付属した空気分離装置の解体撤去を行うことになり、被災者の所属する会社は3次の下請として作業に加わった。
当日、現場では、元請の現場監督者2名と下請の作業者16名が現場に集合し、空気分離装置本体の解体、空気分離装置内部の保冷材(パーライト)の抜き取り、冷却塔のはつり作業等を行うこととなった。被災者は同僚と2名で空気分離装置内部の保冷材(パーライト)の抜き取り作業を行うことになった。
そこで、まず午前中に保冷材を凝固させるために3回の散水を行い、午後からは冷却装置の側壁に保冷材の抜き取りを行うための開口部を作る作業に着手した。
作業の分担は、同僚が高所作業車に乗って地上約7m付近の側壁に開口部を設けるためガス溶断を行う。被災者は高所作業車と側壁との間に立ってガス溶断の火花が地上に用意してあった保冷材飛散防止用シートに着火しないよう監視する業務を行うことになった。
午後1時50分頃、同僚が、側壁に沿って縦1m、横1.5mにわたってわずかに切り残すよう(切り残した部分は、後で車両系建設機械のバケットで突き破り中の保冷材を一気に落下させる)に溶断したところ、突然、開口部が全開して中から保冷材が流出(約400~500m3)し、ほぼ真下にいた被災者は逃げ遅れて生き埋めになった。
それを見た同僚は、保冷材の落下が治まってから高所作業車から降りて被災者を探したが、見当たらないので応援を得て探したところ、保冷材の中に埋没している被災者を発見した。
その後、被災者は、直ちに病院に搬送されたが死亡した。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 保冷材が凝固していなかったこと
保冷材の抜き取り作業は、保冷材に十分に散水し凝固させる⇒空気分離層の側壁を10cm角程度にガス溶断し、中の保冷材の固結状況を確認する⇒保冷材の自立性が認められたなら、そこからガス溶断で徐々に開口部を拡げる⇒車両系建設機械により内部の保冷材を抜き取る手順で進めることになっていたが、中の保冷材が固まっていなかったために一気に開口部から噴出した。
2 手順に沿わないで溶断したこと
被災者らは、災害のあった冷却装置のガス溶断の前に、別の冷却装置について同様の開口作業を行っていた。そのときには保冷材が固まっていて問題がなかったことから、作業時間を短縮するため開口部を徐々に広げることなく、一気に1m×1.5mの大きさにガス溶断したもので、元請会社が定めた作業手順に沿わない作業を行った。
また、昼の休憩中に、元請等に対して作業要領の変更を報告しなかった。
3 作業方法の確認が不十分であったこと
当日の作業開始前に、元請を中心として打ち合わせを行ったが、当日の作業内容についての検討と指示はなかつた。
また、現場の作業責任者は、災害が発生したときには現場に不在で、作業の実態の確認も行っていなかった。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 保冷材の凝固度合を必ず確認すること
災害の直接の原因は、散水によって保冷材が自立する程度まで固まっていなかったことである。散水を行う場合には散水量と時間によって凝固度合いが異なるので、標準作業手順に沿って確認用の開口部を設け、そこから凝固度合いを必ず確認する。
2 作業方法等の確認を行うこと
あらかじめ定められた作業計画、作業手順も、作業者の慣れ、作業時間の短縮等のため変更されることがある。その日の作業の開始前に予定されている作業について関係者で手順の確認を行うとともに、現場責任者は随時現場を巡回し作業の実態の把握と必要な指示を行う。
特に、建設物、機械設備等の撤去作業においては、手順の省略等が行われやすいので、作業方法等を変更する場合には、元請の責任者等に連絡して了解を得ることを関係作業者に徹底する。
また、作業の監視者を配置する場合には、作業用機械との接触危険、物の不意の落下又は飛来によって危害を受けることのない位置を指定し、危険のある場所への立入禁止を明示する。
3 安全衛生教育を実施すること
各事業者は、配下の作業者に対して安全衛生の基本についてあらかじめ安全衛生教育を実施する。
また、元方事業者は、その日の作業開始前にKY(危険予知)活動等を行って、その日の作業に伴って想定される危険有害性とその対策について周知する。
【業種】
機械器具設置工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100933より一部抜粋
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