溶接ラインの分電盤接続ケーブル付け替え作業中、線間短絡が発生して作業者が火傷死亡
【発生状況】
この災害は、自動車製造工場構内において、溶接ラインの分電盤に接続された負荷側ケーブルを付け替える作業中に発生したものである。
ケーブルの付け替え作業は、分電盤の電源側が通電状態で始められ、先ず、作業責任者が分電盤内のブレーカーがすべてOFFになっていることを確認し、作業員2名が扉を取り外し、負荷側のアクリルカバーを取り外し、作業員Aが検電器により負荷側の端子に通電されていないことを確認して始められた。
その後、作業責任者は元請との打ち合わせのため現場を離れ、作業員Bが必要部品を資材置き場に取りに行った。
一人残った作業員Aは、分電盤に接続されていた2本のケーブルを取り外し、アース端子に接続されているアース線を取り外した。そして、取り外したケーブルを分電盤背面に引き抜くため、分電盤内から揺すったところ、アース端子から外したアース線の先端がブレーカーの電源側ブスバーを覆っているアクリルカバーの隙間から入り込み、スパークが発生して電源側の線間が短絡してアークが発生し、この短絡アークにより、アクリルカバーが溶けて飛散し、作業員Aのズボンに付着して燃えて火傷を負い、2週間後に死亡したものである。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 分電盤内での作業が負荷側だけに限定された作業であったため、ブレーカーを開路することで危険性がないものと判断し、分電盤の電源側を通電状態としたまま分電盤内での作業を行っていたこと。
2 取り外したアース線が固定されていなかったため、ケーブルを揺すったときにアース線が振れ、その先端がブレーカーの電源側を覆っていたアクリルカバーの隙間から入り込み、線間短絡が発生したこと。
3 ブレーカー電源側に接続されたブスバーを覆うアクリルカバーの隙間が広すぎたため、アース線の先端が振れた際に容易に隙間から入ってしまったこと。また、覆いに熱に弱いアクリルカバーを使用していたこと。
4 下請業者として具体的な作業手順を作成しないまま、作業の安全性について事前の検討を行うことなく請負業者の作業責任者および作業員の経験による判断により作業が進められたこと。
5 単独作業が行われていたことにより、取り外したアース線が振れて危険な状態を引き起こす状況を見過ごしてしまったこと。
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 分電盤内の露出する充電部分を覆うカバーは、導電性の物が入り込まないように隙間を可能な限り狭くする必要があること。なお、カバーに使用する材質は高温に耐える難燃性の物に替えることも検討する必要があること。
2 ケーブル付け替えなど分電盤内で作業行うときは、分電盤の電源側を開路して停電作業を原則とすること。
3 分電盤内など低圧活線近接作業を行うときは、絶縁覆いに隙間が生じないようにすること。
4 工事ごとに、作業方法、作業手順、監視人の配置などに関する作業手順を定め、作業指揮者の直接指揮により作業を行うこと。
5 活線近接作業を行うときは、単独作業を排除し、監視人を配置し、作業員および機材などが安全隔離距離に接近したとき、迅速かつ明瞭に作業を停止させること。
6 活線近接作業における感電、導電性の物による線間短絡などの危険性、およびその対策について安全衛生教育を繰り返し実施する必要があること。
7 元請は下請に対して、作業場所の巡視、作業手順の作成および安全教育の実施に関する技術的な指導援助を行うこと。
【業種】
電気通信工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100701より一部抜粋
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