マンション建設現場で荷を吊り上げようとしたクライミングクレーンが転倒、倒壊
【労災概要】
15階建てマンション建設現場で、吊り上げ荷重10.6トンのクライミングクレーンを用い、約900kgの鉄板を、ジブ角度60度で吊り上げ、右旋回していたところ、突然、吊り荷と逆方向にクレーン本体が傾き、そのままクレーンが転倒、倒壊した。
クレーン運転士は、運転席とともに落下し、倒壊した衝撃で胸部を骨折し、倒壊した旋回台が走行中のトラックに激突して運転手が受傷し、倒壊したジブが付近の集合住宅の屋根やベランダを破損し、住民2人が受傷した。
【原因】
クレーンの倒壊の際に、地中に埋め込まれた基礎杭4本のうち1本が倒壊側に沈下し、残りの3本が浮き上がったことである。この原因は、沈下した支持杭のH形杭が掘削底面まで届いていなかったことと、杭を固定するセメントミルク強度(セメント強度)の不足の可能性がある。
アースオーガーにより25m掘削した穴にバイブロ・ハンマー等を用いてH鋼を打ち込んだところ予定よりも3m余して入らなくなり、地上に突き出た3m分のH鋼を切り取ったものである。
これらの要因が重なって、クライミングクレーンの荷の吊り上げに伴って、地中に埋め込まれたH形鋼の一部が沈下し、他のH形鋼が浮き上がったものである。
【対策】
1 クレーンの設置に関して、設計や強度計算のみでなく、適切な指導及び指示ができる現場管理の体制を店社において確立すること。
2 クレーンの設置に関する施工について、専門工事業者の工事実績を精査し、工事監理を行うこと。
3 現場における専門知識の必要な工事について、店社の迅速かつ適正なサポートを行うと共に、施工不良等の異常事態が発生した場合の連絡体制を、店社として確立すること。
4 クレーンの設置に関して、設置基準の見直しをおこない、今後かかる災害の起こらない現場体制及び審査体制を確立させること。
5 クレーンの基礎杭の強度が設計に定められている値を確保できるよう、専門工事業者に指導を行い、構造物の施工の適正を図ること。
6 クレーンの基礎杭施工に関して、特定元方事業者として関係請負人との連絡及び調整を適切に行い、災害防止に努めること。
7 クレーンの基礎杭施工に関して、専門工事業者として元請負人との連絡を適切に行い、災害防止に努めること。
【業種】
鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業
【被害者数】
休業者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)
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