シールド工事現場において、貨車に逸走防止用の歯止めを設置中、牽引車と貨車との間にはさまれ死亡
2023/01/11
【労災概要】
この災害は、管渠築造工事におけるシールド発進立坑付近で、切羽から掘削された土砂が積み込まれた貨車から牽引車を切り離し、横移動させる作業中に発生したものである。
災害発生当日、作業者Aは牽引車を運転し、切羽から掘削土砂が積み込まれた貨車を連結して立坑の下部作業場に到着後、貨車を1両ずつ移動し、貨車に積まれた土砂を地上に排出するためのスクリューコンベヤーのホッパーに排土し、すべての貨車の土砂を排土し終えた後、再び切羽に向かう作業を行っていた。
Aは、この日、2本目となる貨車を牽引して立坑の下部作業場に到着した後、土砂をホッパーに排土するため、横移動させるため、まず、牽引車を移動させようとトラバーサ(車両を横に移動させる装置)上に置いた。次に貨車と牽引車との連結を解除し、トラバーサを操作して牽引車を横移動させる操作をしたとき、貨車がトラバーサ方向に動いていることに気づいた。Aはこのままでは貨車が脱線し、立坑内に転落することから貨車を止めようと、貨車を押さえながらレール上に歯止めをセットしようとしたところ、貨車と牽引車との間にはさまれ、死亡した。
Aは、牽引車と貨車の連結を外した際、連結器が噛み込んでいて連結棒を引き抜くことができなかったため、連結箇所からリモコンスイッチを用いて牽引車をわずかに動かしながら連結を解除していた。その際、貨車に逸走防止用の歯止めをセットしていなかったため、牽引車が動いた衝撃で貨車が徐々にトラバーサに載った牽引車に向かって動き出したものであった。
また、事業場が作成した貨車の入替え作業手順書には、牽引車から貨車を切り離して放置する際には、あらかじめ歯止めをセットすることが明記されていたが、現場の軌道は勾配がないことから、普段から歯止めをセットする作業者はいなかった。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 貨車に歯止めをセットしないまま、しかも牽引車を動かしながら連結を切り離したこと
2 作業者が動き出した貨車を止めようとレール上に立ち入ったこと
3 事業場が定めた作業手順書の内容が作業者に徹底されていなかったこと
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 貨車と牽引車との連結の解除は、車両を停止し、車両の逸走防止措置を講じた後に行わせること
2 動いている車両の近くに作業者を立ち入らせないこと
3 上記事項を含め、安全に貨車の入れ替え作業を行うための作業手順書の内容を作業者に周知徹底すること
【業種】
トンネル建設工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)
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