建設業の労災事例

病院の渡り廊下の塗装中に足場から墜落

   

【発生状況】

この災害は、病院渡り廊下の柱の塗装作業中に発生したものである。

この病院では新たに3階建て南館を新築して旧館と新館を渡り廊下で繋いだが、被災者の所属する会社は建物の建設を請け負った会社の2次下請としてこの渡り廊下を支える柱部分の塗装を請け負った。

災害発生当日、被災者は事業者と一緒に現場に赴き、1次下請の職長および作業者とともに柱の塗装を行うことになり、朝8時に現場全体での朝礼、体操を行った後、事業者と2人で渡り廊下旧館側の柱の塗装作業を枠組み足場の4段目で開始し、昼食を挟んでこの作業を午後2時30分頃まで行い、3段目までの塗装を終えた。

続いて、事業者は、足場の2段目に移って新館側の柱の塗装を開始しようとしたときに、コンプレッサーの音とは異なる「ガン」という音がしたので、下の道路のところを見ると白い塗料が飛び散っていたので足場を伝い降りして1階に行ってみると、新館建物と道路との間に被災者が意識をなくして倒れており、道路には18リットル缶が潰れて付近に白い塗料が飛び散っていた。

その後、救急車を呼び被災者を病院に移送したが、左側頭部脳挫傷のため死亡した。

なお、地上(砂利が敷いてあり、また、足場板があった)に倒れていたときに、被災者は保護帽を着用していたが、少し上の方にずれた状態であった。また、安全帯は着用していた。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 足場の筋交いの間から墜落したこと

被災者の直前の動作等を目撃した者はいないが、枠組み足場3段目の作業床のところに白い塗料が付着していたところから、被災者は3段目の筋交いの間から何らかの理由で下をのぞいたときに、筋交いの間から約7m下に墜落したものと推定される。

なお、この部分の筋交い(Ⅹ状)下部の幅は170cm、交差部分の高さは96cmで、三角状に空間があった。

また、枠組み足場の周囲にはビニールシートが張ってあったが、被災者が墜落したと考えられる場所にはシートが張られていなかった。

2 作業指示が明確に行われていなかったこと

災害は、事業者が足場の2段目に移動して間もなく発生したが、補助的な仕事に従事していた被災者に、次の作業等の指示を行っていなかったため、被災者は塗料の運搬等のため事業者の位置を確認しようとして、筋交いの間から下をのぞきこんだのではないかと推定される。

3 安全教育を実施していなかったこと

被災者は、5か月前に採用されたばかりで、この作業現場には初めて入ったが、高所の足場上での作業があるにもかかわらず、安全帯の具体的な使用方法等の墜落防止措置について、安全教育等は受けていなかった。また、当日の作業についての具体的な指示も受けてはいなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 足場は墜落防止措置を行ったものを使用すること

枠組み足場には筋交いが使用されるが、これは墜落防止の目的で取り付けられるものではないので、足場上での作業で筋交いの空間部分から墜落・転落するおそれのある作業、動作がある場合には、手すりの設置など墜落防止措置を確実に行った上で使用させる。(安衛則第519,563条関連)

2 安全帯の使用方法等の安全教育を実施すること

高所での作業に従事する者については、あらかじめ高所作業における危険性と手すりなど墜落防止措置の有無の確認、安全帯の具体的な使用方法等について十分な安全教育を実施する。(安衛則第35条関連)

3 作業手順等について明確に指示を行うこと

その日の作業開始前に、使用する機器材、貸与を受ける足場と墜落防止措置等の状態、養生シートの取り付け状態、作業の手順等について関係者で十分に打合せを行うとともに、作業者に徹底する。

4 安全管理を実施すること

事業者は、作業者に対してあらかじめ十分な安全教育を実施するとともに、教育事項が遵守されているか否かを随時確認する。

特に、塗装作業等については、事業者自らが作業に従事することも少なくないが、配下の作業者の作業内容・手順については明確に指示するとともに、随時その作業・動作を監視することが大切である。

 

【業種】

建設設備工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100798より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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鉄骨柱の昇降タラップを登っていたとき、タラップの仮付け部分が外れ、墜落

   

【発生状況】

この災害は、鉄骨柱の昇降タラップを登っていたとき発生したものである。

この工事は、SRC構造の地下1階、地上10階建てのマンションの建築工事であり、被災者の所属する事業場は、鉄骨建方作業を請負った2次下請だった。

災害発生前日までに鉄骨柱0節(地下1階部分)および1節の建方が終了しており、災害発生当日は、2節の鉄骨柱5本、梁24本の鉄骨建方作業を行う予定であった。

午前8時10分頃から、鉄骨2節の鉄骨建方作業を開始し、被災者と他の作業者の2人は、クレーンで吊り上げられている鉄骨柱の下部と前日に組み立てられている1節の鉄骨柱の上部をボルトで仮締し接続する作業を行っていた。午前中このような作業を繰り返し、2節の鉄骨柱4本の組立を終了した。

11時40分頃から鉄骨柱の2節5本目の鉄骨建方作業を開始した。被災者は2節5本目の鉄骨柱に巻き付けられていたフープ筋の箇所を通過するため、安全ブロックを外し、タラップに安全帯をかけ、手をかけたところ、タラップの仮付け溶接部が外れ、タラップとともに約20m下の1階床テラスに墜落した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 被災者が安全ブロックのフックを安全帯の口環から外し、安全帯のフックと手を同一のタラップにかけたところ、タラップが仮付けのままであったため鉄骨柱から外れたこと。

被災者は、2節の部分の仮ボルト締めが終わり吊っていた鉄骨の玉掛け用ワイヤロープを外すために、鉄骨柱2節5本目を登っていたものであるが、墜落箇所から、さらに、約1.5m登らないと、それを外す所まで届かないので移動していた。

2 現場において、タラップの点検者および有効な点検方法を明確に定めていなかったため、適切に溶接箇所の安全性の確認を行うこともなく、仮付けのままのタラップを事前に発見できなかったこと。

3 フープ筋の取付け状況が他の箇所と違っており、通過できなかったため、昇降時に安全ブロックのフックを安全帯の口環から外さざるを得なかったこと。

4 仮付け溶接のままのタラップ位置とフープ筋の取付け位置が重なって見えにくくなっていたため、溶接工がタラップの仮付け溶接の箇所を見落とし、本溶接としなかったこと。

5 鉄骨製造後の検査で、タラップの溶接不良箇所が発見できず、検査管理体制が不十分であったこと。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 鉄骨柱の昇降中は、常時、安全ブロックを使用するよう徹底すること。

2 現場において、タラップの溶接状況を点検する者を配置し、点検基準に従って適切に点検を実施すること。

3 現場において、フープ筋の取付け方法を統一化し、途中で安全ブロックのフックを外すことなく昇降できるよう、フープ筋の取付け状況を事前に確認すること。

4 鉄骨柱の昇降中に、安全ブロックを確実に使用できる作業方法を定め、その作業方法を全員に周知励行させること。

5 タラップの取付け位置とフープの取付け位置とが重ならないよう配置方法を検討し、溶接不良を防止するための作業標準書を作成して、溶接作業者に点検確認を徹底すること。

6 タラップの溶接部の検査方法を見直し、検査が確実に実施されるような検査管理体制を整備すること。

7 日常のKY活動等で鉄骨建方作業における安全ポイントを教育訓練しておくこと。

【業種】

鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100799より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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