建設業の労災事例

送電線直下の雑木伐採中の作業者が熱中症にかかる

   

【発生状況】

この災害は、送電線の直下の雑木伐採作業中、熱中症にかかったものである。

送電線と樹木等との距離は放電等を防止するため、離隔距離が定められている。

被災者が所属する会社は、災害が発生する1週間前から1ヶ月の期間で送電線の直下の雑木伐採作業を請け負っていた。

伐採作業は、チェーンソーと刈払機を用いて、送電線直下に生えている樹木の伐採および下刈りを行うものである。

災害が発生した日、8時30分頃、現場責任者および作業員8名が現場に到着し、朝礼が行われ、現場責任者から伐採および刈払い作業中の作業範囲内への立入禁止などについての安全確認が行われ、各自氷水を入れたペットボトルを携行してそれぞれの作業を開始した。

現場責任者と被災者は、チェーンソーを用いて伐採の作業をそれぞれ開始した。

午前10時に10分間の休憩をとり、12時に昼食の休憩をとり、午後1時から作業が再開された。

午後2時に20分間の休憩をとり、さらに午後3時30分に休憩をとろうしたところ、被災者が見当たらないので探したところ作業場所に倒れている被災者を現場責任者が見つけ、「大丈夫か」と声をかけたところ「大丈夫だ」と応答したが、直ちに、救急車により病院に搬送した。病院に到着後間もなく熱中症による死亡が確認された。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 炎天下でのチェーンソー作業という重筋作業を行っていたこと。

当日の天候は晴れ、15時の気温は27.4℃、作業開始から災害発生時刻までの日照は100%であった。

2 作業場所が、日陰のない直射日光の強い場所であり、直射日光を遮るような対策が十分に講じられていなかったこと。

3 作業中の発汗が激しく、塩分の補給が不足していたこと。また、用意していた氷水(750ml水筒)の量が十分でなかったこと。

4 作業管理が不適切であったため、休憩のほか小休止をとることなく連続作業が継続されていたことにより疲労が蓄積していたものと考えられること。

5 炎天下における作業を行うとき、事業者および作業者全員が熱射病の危険に関する認識が欠如していたこと。

6 作業者の健康状態を十分把握していなかったこと。

被災者は60才を超える高齢で、約4ヶ月前に雇用された者であるが、雇い入れ時の健康診断も実施していない。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 炎天下で作業を行わせるときは、作業場所の近隣に日陰などの涼しい休憩場所を確保し、気温、作業内容、作業者の年齢・健康状態などを考慮して、作業休止時間や休憩時間の確保に努めること。

特に、高齢者の1人作業は注意が必要である。

2 チェーンソーを使わない他の作業と計画的に組み合わせ、チェーンソーの操作時間は1日2時間以内とし、連続操作時間は10分以内とするなどの作業標準を策定し、作業管理を徹底すること。

3 炎天下で作業を行うときは、作業場所にスポーツドリンクを備え付けるなど水分や塩分を容易に補給できるようにすること。

4 作業場所に温度計や湿度計を設置し、作業中の温湿度の変化に留意すること。なお、環境温度を総合的に評価する指標を示す測定器の備え付けも効果的であること。

5 休憩場所に体温計を備え付け、休憩時間などに体温を測定させることが望ましいこと。

6 熱中症の症状、熱中症の予防方法、緊急時の救急措置、熱中症の事例などについて労働衛生教育を実施すること。

【業種】

その他

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100901より一部抜粋

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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食料品工場の2階でアルミサッシの取付中に溶断火玉が隙間から落下して火災が発生し被災

   

【発生状況】

この災害は、食料品加工工場の新築工事で発生したものである。

当日の工事現場では、工場新築工事の3次下請としてアルミサッシの取付けを請負った会社のほか、土工事や左官工事を行う会社の作業者も混在して働いていた。

当日、アルミサッシの取付けを請負った会社では、作業者3名が午前9時頃入場し、前日に引き続いてアルミサッシの取付け作業を開始した。

午前10時頃に2階外壁のところでアルミサッシを窓枠に溶接する一つの作業が終わった。ついで、外壁の開口枠(アングル)と窓枠との間のつなぎに使用した直径9mmの鉄筋をアーク溶断したところ、火玉が2階床と外壁との間の隙間(約1.5cm)から1階に落下した。

そのときに、作業者は、火事になるのではと思い下のほうを数秒間覗いていたが、燃えている様子もなかったので、大丈夫だろうと考え、他の箇所の溶接による取付け作業を開始した。

その数分後、火玉が落ちた隙間から黒い煙が上がり、続いて火炎が2階まで噴出してきて火災となった。

この火災により、2階で作業をしていた他社の作業者2名のうち1名が逃げ遅れて焼死した。また、左官工事を行っていた他社の作業者6名のうち2名が煙に巻き込まれた。

なお、アーク溶断時の火玉が落下した箇所は、冷蔵庫、冷凍庫等の冷凍設備の設置が予定されていたため、壁、天井は断熱のため発泡ウレタンが約5cmの厚さで吹き付けされていた。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 火玉の結果を確認しなかったこと

作業者は、鉄筋をアーク溶断したときに、火玉が隙間から1階に落下したので火災になるのではないかと心配し、数秒間様子を窺がったのち異常がないものと判断してその場を離れているが、その判断が早すぎた。

2 工程管理を行っていなかったこと

アーク溶接あるいは溶断の作業で火玉が1階に落下する危険があったのに、元請は工程管理を十分に行わずに発泡ウレタンの吹き付け作業を先行させていた。

なお、作業員3名が現場に到着した午前9時には朝礼が終了していたので、3名とも参加できず、また当日の指示事項について確認しなかった。

3 防炎シート等で養生しなかったこと

火玉を落下させた作業者は、外壁のところの隙間が大きいところについては、前日に1次下請の社員から渡された防炎シート1枚を利用して養生していたが、溶接作業を1カ所1分程度で終わらせたいと考え、比較的隙間が狭いところについては窓枠の梱包に使用されていた木片を置いただけで作業を続けていた。

4 統括安全衛生管理を行っていなかったこと

元方事業者は、朝礼は実施していたが下請を含めた工程管理、安全衛生措置に関する指導援助等の統括安全衛生管理を実施していなかった。

また、定期あるいは随時に作業現場を巡回して作業実態の把握と必要な指導等を行うこともしていなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 発泡ウレタンの危険性を周知すること

発泡樹脂(合成樹脂を炭化水素ガス等の微細な泡で発泡、硬化させた素材)は、クッション性、耐衝撃性、断熱性等に優れているため、生活用品、建築資材など広範囲に活用されている。

しかし、不燃性または難燃性でないものは消防法の指定可燃物となっており、着火源があると火災に発展するものが少なくない。建築工事現場等において断熱材として使用している場合には、元請が中心となってあらかじめ関係事業者・作業者にその危険性を周知徹底する。

2 火災のおそれがある場合は防炎措置を行うこと

多量の易燃性の物などが存在していて爆発、火災のおそれがある場所では、アークによる溶接、溶断等の作業を行わないことが原則(安衛則第279条)であるが、やむを得ず当該作業を実施する場合には防炎シート等により着火することの防止措置を行う。

3 統括安全衛生管理を実施すること

建設業等の元方事業者は、下請を含めた協議組織の設置と運営、作業間の連絡調整、作業場所の巡視、工程計画の作成等に関する統括安全衛生管理を十分に行う。(安衛法第30条)

とくに、火災のおそれのある作業・場所については、重点的に巡視を行う。

4 安全衛生教育を実施すること

夫々の会社の経営者は、元方事業者との連絡、セミナーへの参加等を通じて自らの安全衛生に関する知識、技術を習得するともに、配下の作業者に対してあらかじめ基本的な安全衛生教育等を実施する。(安衛法第59条)

元方事業者は、毎日の朝礼等を活用してその日の安全作業のポイント等を現場内の全ての作業者に徹底する。

【業種】

その他の建築工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

休業者数:1人

不休者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100919より一部抜粋

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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