地下鉄の蓄電池室の改修工事中で一酸化炭素中毒
発生状況
この災害は、地下鉄構内にある蓄電池室の改修工事中に発生したものである。
災害発生当日、2次下請に属する被災者ら3名は、午前9時から別の駅の工事に従事し、午前11時頃に作業が終了したので車で災害が発生した駅に移動した。
午後1時10分から元方事業者の現場代理人と1次下請の労働者2名の6名で作業の打合せが行われた。その後、1次下請の労働者2名は材料調達のため工事現場を離れ、作業は現場代理人の指揮のもと被災者ら3名で午後1時20分頃から開始した。
作業は、まず無停電電源装置からの配線を収納するピットを築造するためにコンクリート床への墨付けが行われ、続いてブルーシートで既設の機械設備の防護、集じん機の据付、電源の準備等が行われた。
午後2時10分頃から内燃機関で駆動するコンクリートカッターでの切断作業を開始した。被災者Aはカッターの運転を、被災者Bはコンクリート床面に流れ出た切削剤(水)の拭き取りを行って、午後2時40分頃にはほぼ終了したが、その少し前から被災者Bは気分が悪くなったので、被災者Aにそのことを告げたが、もう少しということで作業は続行された。
切断作業が終了した頃に、1次下請の労働者が現場に戻り、蓄電池室内の様子を見て直ぐに室外に出るように指示したが、最後に室外に出た被災者Aも気分が悪いといってドアのところに座り込んだ。
その後、10分ほど向かいにある機械室で水で頭を冷やしながら2人を休ませたうえ、病院で診察を受けたところ、一酸化炭素中毒と診断され2日の休業となった。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 狭い室内で内燃機関駆動のコンクリートカッターを使用したこと
災害が発生した蓄電池室は、300cm×410cmの広さであったが、既設の機械設備にブルーシートを掛けていたので実質は160cm×410cm程度の広さで、隣の倉庫とはドアがあり、また、換気口(33cm×71cm)が2箇所あったがドアは閉じられた状態であった。
このような狭い室内で内燃機関駆動のコンクリートカッターを使用したのに強制換気を行わなかったことが、一酸化炭素中毒になった原因である。
2 作業姿勢が適切でなかったこと
被災者Bは、コンクリート切削時に通常の工事では流したままの水を漏電等を避けるため直ぐに拭き取っていたが、顔面の位置が内燃機関の排気の位置に近かった。 また、被災者Aもコンクリート床に顔を近づけながらコンクリートカッターの運転を続けていた。
3 適切な保護具を使用していなかったこと
被災者らは、作業中は綿マスクを使用していたが、これは一酸化炭素中毒を防止するためには適切な保護具ではなかった。また、防毒マスク等も準備されていなかった。
4 安全衛生教育が実施されていなかったこと
被災者らは、内燃機械を使用する作業における中毒およびその防止についての教育を受けてはいなかった。
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業方法について十分な打合せを行うこと
狭い室内で作業を行う場合には、作業計画を作成する段階で使用する機械の種類、必要な適切な保護具、強制換気のための装置、作業手順、必要であれば作業環境の測定等について検討し、安全で衛生的な作業が実施できる作業方法を決定する。
2 安全衛生教育を実施すること
狭い室内において、内燃機関で駆動する機械設備を使用する場合には、排気される一酸化炭素による危険有害性とその防止対策等についてあらかじめ労働者に安全衛生教育を実施する。
とくに、一酸化炭素(可燃性ガス、特定化学物質第3類)は、爆発範囲が12.5%~74%と広く、空気との混合があって点火源があれば爆発の危険があると同時に、血液中のヘモグロビンと結合して体内の酸素供給能力を妨げる作用があって1200ppmを超えると死に至る有害なものであることを十分に徹底する。
3 作業指揮などの安全衛生管理を実施すること
危険有害なガス蒸気の発生のおそれがある場所での作業については、あらかじめ労働者に必要な安全衛生教育を実施するとともに、一定の知識経験を有する者を作業の指揮者として指名し、換気の実施、適切な保護具(防毒マスク等)の使用等について指揮監督をさせる。
また、2次の下請事業者等は、労働者の安全衛生を確保することは自らの責務であることを十分に認識し、安全衛生に係る諸対策を実施するとともに、作業場所を巡視し必要な指示を行う。
【業種】
電気通信工事業
【被害者数】
休業者数:2人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100758より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
立木の伐倒作業中、激突され
【発生状況】
この災害は、立木の伐倒作業中に発生したものである。
この工事は、砂防ダム建設工事のうちの準備工として、河川両岸の立木の伐採(抜倒、枝打ち、玉切り、搬出等)を行う作業であった。
災害発生当日の朝、午前7時50分頃から、現場作業の説明・打合せが始まり、伐採範囲、地形、立木の状況、作業方法、作業分担などが確認され、KYミーティングの後に作業が開始された。
午前11時頃、元請の現場責任者が、被災者に対して立木の抜倒箇所から南東方向に約13m離れた地点で別の抜倒木の枝払い作業を行うよう指示を与えた。あわせて、立木の抜倒方向を伝えていた。
そして、現場責任者は、現場入口から東北方向約70m離れた地点で、高さ約17m、南東方向に約30度の下り斜面に立っていた立木をチェーンソーで南西方向(川下方向)に倒そうとし、受け口を切り込み、次に抜倒する旨を被災者に伝え、最後に追い口を深く入れたところ、川下方向からの風が強くなり、抜倒方向が約90度ずれ、チェーンソーで枝払い作業をしていた被災者の右肩に直撃し、被災した。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 抜倒木の倒れる範囲内で作業をしていた被災者を、安全な場所まで待避させることなく立木の伐倒を行ったこと。
被災者の所属する会社では、安全教育時に使用する「抜倒作業手順」および「作業注意事項」において、「伐採作業を行うときは、作業員の間隔を立木の樹高の約1.5倍の距離をおくこと。」としており、このルールが守られていなかった。
2 チェーンソーによる伐採方法が不適切であったこと。
(1) 受け口および追い口の切り込みを立木に水平に入れるべきところを、地山の傾斜面にほぼ平行(角度は約15度)に入れたため、力学的にみて被災者の作業位置方向に倒れる力が働いたと思われること。
(2) 追い口を深く入れすぎたため、抜倒方向に直角に残るべき「つる」が被災者方向に約7cm残る程度であったことにより、被災者方向に倒れやすい方向になったこと。
3 被災者が抜倒箇所に背を向けて枝払い作業を続けており、抜倒方向を確認していなかったこと。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 立木の伐倒作業を行う場合には、あらかじめ「抜倒作業手順」および「作業注意事項」に定められた作業方法による作業計画を作成し、当日のKYミーティングなどで、特に次の点の安全確認を行わせること。
(1) 抜倒作業を行う場合には、抜倒範囲内で作業する者に対し、必ず、立木の樹高の1.5倍以上の間隔を確保し、抜倒作業を行う者と枝打ち等の作業を行う者との安全な退避距離や位置を相互に確認させてから作業を開始させること。
(2) チェーンソーによる伐木作業時の技能の判断基準として、伐倒方向が地山の傾斜面の横方向または斜め下方向に受け口および追い口の切り込みを入れ、作業手順どおり、抜倒方向に垂直に「つる」が伐根ばっこん直径の約10分の1以上残るようにすること。
2 作業時の危険性を再評価し、作業手順や注意事項の内容を見直し、現場責任者、関係労働者全員に対する安全教育を行い、周知徹底すること。
3 立木の伐採作業についての知識の習得や経験を積ませるため、現場責任者等に対し、専門機関の研修を受講させ、効果的な技術の習得や安全意識の高揚に努めること。
【業種】
砂防工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100789より一部抜粋
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本日も無事故で一日を終えられますように。
発生状況
この災害は、立木の伐倒作業中に発生したものである。
この工事は、砂防ダム建設工事のうちの準備工として、河川両岸の立木の伐採(抜倒、枝打ち、玉切り、搬出等)を行う作業であった。
災害発生当日の朝、午前7時50分頃から、現場作業の説明・打合せが始まり、伐採範囲、地形、立木の状況、作業方法、作業分担などが確認され、KYミーティングの後に作業が開始された。
午前11時頃、元請の現場責任者が、被災者に対して立木の抜倒箇所から南東方向に約13m離れた地点で別の抜倒木の枝払い作業を行うよう指示を与えた。あわせて、立木の抜倒方向を伝えていた。
そして、現場責任者は、現場入口から東北方向約70m離れた地点で、高さ約17m、南東方向に約30度の下り斜面に立っていた立木をチェーンソーで南西方向(川下方向)に倒そうとし、受け口を切り込み、次に抜倒する旨を被災者に伝え、最後に追い口を深く入れたところ、川下方向からの風が強くなり、抜倒方向が約90度ずれ、チェーンソーで枝払い作業をしていた被災者の右肩に直撃し、被災した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 抜倒木の倒れる範囲内で作業をしていた被災者を、安全な場所まで待避させることなく立木の伐倒を行ったこと。
被災者の所属する会社では、安全教育時に使用する「抜倒作業手順」および「作業注意事項」において、「伐採作業を行うときは、作業員の間隔を立木の樹高の約1.5倍の距離をおくこと。」としており、このルールが守られていなかった。
2 チェーンソーによる伐採方法が不適切であったこと。
(1) 受け口および追い口の切り込みを立木に水平に入れるべきところを、地山の傾斜面にほぼ平行(角度は約15度)に入れたため、力学的にみて被災者の作業位置方向に倒れる力が働いたと思われること。
(2) 追い口を深く入れすぎたため、抜倒方向に直角に残るべき「つる」が被災者方向に約7cm残る程度であったことにより、被災者方向に倒れやすい方向になったこと。
3 被災者が抜倒箇所に背を向けて枝払い作業を続けており、抜倒方向を確認していなかったこと。
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 立木の伐倒作業を行う場合には、あらかじめ「抜倒作業手順」および「作業注意事項」に定められた作業方法による作業計画を作成し、当日のKYミーティングなどで、特に次の点の安全確認を行わせること。
(1) 抜倒作業を行う場合には、抜倒範囲内で作業する者に対し、必ず、立木の樹高の1.5倍以上の間隔を確保し、抜倒作業を行う者と枝打ち等の作業を行う者との安全な退避距離や位置を相互に確認させてから作業を開始させること。
(2) チェーンソーによる伐木作業時の技能の判断基準として、伐倒方向が地山の傾斜面の横方向または斜め下方向に受け口および追い口の切り込みを入れ、作業手順どおり、抜倒方向に垂直に「つる」が伐根ばっこん直径の約10分の1以上残るようにすること。
2 作業時の危険性を再評価し、作業手順や注意事項の内容を見直し、現場責任者、関係労働者全員に対する安全教育を行い、周知徹底すること。
3 立木の伐採作業についての知識の習得や経験を積ませるため、現場責任者等に対し、専門機関の研修を受講させ、効果的な技術の習得や安全意識の高揚に努めること。
【業種】
木造家屋建築工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100790より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
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