建設業の労災事例

家庭用プロパンガスの供給切換中に酸素欠乏症

   

【発生状況】

この災害は、家庭用プロパンガス供給設備工事中に発生したものである。

災害発生当日、住宅地で使用されているプロパンガスをボンベ方式から集合方式への切換工事を請け負ったX社では、専務と作業員3名で作業を開始した。

作業の内容は、道路下に埋設されているプロパンガス(1.39Mpa)の本管(内径150mm)から一般家庭への供給管(内径32㎜)を接続するもので、まず住宅の北側から道路まで(延長11m、幅0.86m、深さ0.3m)のうち、本管に接続している枝管部分を深さ1.7m、幅0.78m、長3.2mを専務Aが小型ドラグ・ショベルを使用して溝を掘削した。

次いで、作業員Bがドラグ・ショベルで掘削した溝に入り、枝管をパイプカッターで切断してプロパンガスが漏れないように防食テープを切れ目に巻きつけ、さらに防食テープを巻いた本管側25㎝をパイプカッターで切断し、ストッパーを切断した枝管に取り付けようとしたがうまく取り付けることができず、手間取っている間にBが溝内で倒れた。

これを見た作業員Cが溝内に入ってBを救出した後、溝内に入って、ストッパーを調整していたがまもなく倒れたので、Aと作業員DがCを救出するため掘削溝に入ったが、両名とも気を失って倒れた。

近隣の主婦が消防署に通報し、救出されて病院に移送されたが、4名とも酸素欠乏症のため2日から6ヵ月の休業となった。

【原因】

この災害は、家庭用プロパンガス供給設備工事中に発生したものであるが、その災害原因としては、次のようなことが考えられる。

1 管理責任者をはじめ、作業者全員に酸素欠乏危険についての知識がなかったこと

たとえ明かり掘削した溝で上部が開放していても、狭い場合にはプロパンガスは空気より重いために溝の底部に滞留して、容易に酸欠危険場所になるおそれのあることを知らなかった。

2 本管のガス供給を停止せずに作業を行ったこと

この作業は、プロパンガスの本管から家庭への供給管を取り付けるものであったが、ガス本管側の供給を遮断しないまま作業を行い、作業に手間取ったため、プロパンガス供給管埋設用に掘削した溝内にプロパンガス漏洩して充満した。

3 溝内が狭いため取付け作業が円滑にできなかったこと

本管と枝管との接続箇所の掘削範囲が小さかったため、ガス漏れ防止のために取り付けるストッパーを正しく、手早く装着することができなかった。

4 作業手順が定められていなかったこと

プロパンガスが供給されている本管と、これと接続している枝管にストッパーを接続する作業の手順が定められていなかったため、短時間でストッパーが取り付けられると考え安易に作業を実施した。

【対策】

この災害は、家庭用プロパンガス供給設備工事中に発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 ガス管の接続作業の手順を定めて作業を行うこと

プロパンガス等が供給されたままの本管(または枝管)の一部を切断、開放することは極めて危険であるので、次のような事項を含めた作業手順を定め、関係作業者等に徹底する。

(1) ガスを遮断した場合でも本管に残存しているガスが漏洩することによる危害を防止するため、空気呼吸器等を使用すること

(2) ストッパー等を取り付ける場合には、一旦、本管のガス供給を遮断すること

(3) 溝内に有害なガスが滞留しないよう換気すること

2 安全な作業が行えるように掘削すること

掘削溝内でガス配管工事を行う場合には、溝内作業が安全に、かつ、効率的に実施できるよう十分な広さの溝を掘削する。

3 酸素欠乏危険等について教育を実施すること

掘削溝内においてガス配管工事等に従事する者に対しては、供給されているガスまたは地層による危険有害性、漏洩することによる危害の種類とその防止対策、危害防止のための空気呼吸器の使用方法等について、あらかじめ安全衛生教育を実施する。(安衛法第59条、安衛則第35・36条関連)

 

 

【業種】

その他の土木工事業

【被害者数】

休業者数:4人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100733より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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汚水タンクの内部の清掃・点検のために残水を処理する作業中に窒息死

   

【発生状況】

この災害は、発電所の汚水タンク内部の清掃・点検のために残水を処理する作業中に発生したものである。
災害発生当日の午後、タンク内の酸素および硫化水素濃度の測定を行い、酸素濃度が21%、硫化水素が検出されないことを確認し、タンク内の点検および清掃の作業を始めた。
先ず、タンク内の残水の排出を行い、次いで、底部に残った汚水を除去するために汚水吸収タオルを投入した。この汚水吸収タオルを回収するため、下請作業員が順次縄ばしごによりタンク内に入り、吊り降ろされたバケツに汚水吸収タオルを回収する作業を行ったが、3人目に入った作業員Gが3回ほど作業を繰り返した後、タンク底部で作業中に足元がふらつき体調が悪そうだったので、この様子をタンクの外で見ていた下請けの職長は作業員Gを引き上げることにした。
そこで、元請の現場責任者と作業員Hが汚水タンク内に入り、作業員Gの身体にロープを巻き付けて現場責任者と作業員Hが作業員Gを肩に乗せ、押し上げながら縄ばしごを登っていたところ、作業員Hが縄ばしご上1mのところからタンクの底へ墜落した。作業員Gを引き上げた後、現場責任者がタンク内に入り、タンク底部に仰向けに倒れている作業員Hの様子を見たところ、半眼で意識を失っており、直ちに病院へ収容したが、窒息による死亡と診断された。

【原因】

この災害は、発電所の汚水タンク内部の清掃・点検のために残水を処理する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。

1 死亡は窒息によるものと判定されたが、その原因は次のように推定されること。

(1) 救出作業のとき、防じんマスクのずれなどにより鼻、口が塞がれて窒息状態を引き起こしたこと。

(2) 墜落して後頭部を打撲し無意識になったとき、舌の落ち込み等により気道閉塞を起したこと。

(3) パニック状態により心肺機能が低下したこと。

2 縄ばしごを使用しての救助作業を行ったため、救出者を抱きかかえながらの不自然な作業姿勢を強いられることとなり、着用していたマスクのずれまたは墜落するなどの間接的要因を引き起こしたこと。

3 タンク内での異常時における救出作業についてのマニュアル類が具体的に定められていなかったため、2次災害を防止する手段を検討することなく救出作業が行われたこと。

4 安全衛生管理に関する機能が十分に機能していなかったため、現場での作業がそれぞれの監督者の判断に委ねられて行われており、作業の安全衛生に関する事前の検討が不十分であったこと。

【対策】

この災害は、発電所の汚水タンク内部の清掃・点検のために残水を処理する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 タンク内での作業を行う必要性を少なくするための設備的な改善を検討すること。

2 タンク内への昇降設備は、鋼製の固定できるものとすること。また、ライフラインを設けるなど昇降中の墜落防止対策を講じること。

3 タンク内での作業行うときは、監視人を配置し、異常を早期に把握するために必要な措置を講ずること。

4 救助作業について、空気呼吸器等、はしご、繊維ロープなど備え付ける必要のある用具・器具類、救助方法などについてマニュアル化すること。

5 現場監督者には、作業方法の決定、作業員の指揮、酸素などの濃度測定、用具・器具または設備の点検、保護具の使用状況の監視、異常時の適切な措置を確実に行わせること。

6 教育・訓練の実施

(1) 防じんマスクのフィットネステストなど使用する保護具の着用時における留意事項などについて実技を取り入れて教育を実施すること。

(2) 異常事態が発生した場合を想定した避難および救助に関する実地訓練を定期的に実施すること。

【業種】

機械器具設置工事

【被害者数】

死亡者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100736より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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