建設業の労災事例

住宅の屋根を塗装中に転落

   

発生状況

この災害は、個人住宅の屋根、内壁、外壁等の塗装工事中に発生したものである。

この工事は、X社工事部長A、作業者BとCの3名で行うことになった。初日、先ず墜落防止用ロープを設置するため、Aは母屋の北側にある立木にロープを結び、母屋の屋根頂部(「ぐし」)上を通して母屋南側まで掛け(立木ロープ)、次に母屋の南側にある作業小屋根内の2Fの柱にロープを結び、母屋の屋根上を北側にまで掛けた(小屋ロープ)。次いで、Aは高圧洗浄機のホースを持って屋根全体の洗浄を行った。

2日目には、初日に洗浄した屋根のさびているところにさび止めを塗布し、3日目には被災者が塗料吹き付け機械により母屋南側軒先の一部、2階屋根および「ぐし」の上塗り作業を行ったが、作業終了後、Aは小屋ロープが発注者の玄関先で邪魔になるので外すようにBに命じ、取り外させた。

4日目の災害発生当日、3人は午前8時30分頃に現場に到着したが、屋根が露で濡れていたため、AはBにドライヤーで乾かすよう指示した後、屋根の「ぐし」の菱形状の凹み模様を白色塗料で塗るため、身体に立木ロープを巻きつけ、塗料缶、刷毛、水滴を拭き取るためのウェス、ドライヤーの延長コードを持って、母屋南側から屋根へ上がっていった。

Bは玄関屋根、母屋屋根の順で乾燥作業を行い、午前9時50分頃作業終えたとき、母屋屋根の南西端から約7m下の水路の洗い場にAが顔をつけて倒れているのを発見し、救急車を呼んだが被災者はすでに死亡していた。

 

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 墜落防止用措置を行っていなかったこと

墜落危険のある屋根上での作業に際し、墜落防止のために、母屋屋根南側については立木ロープ、屋根北側については小屋ロープを取り付けていたが、災害発生前日に小屋ロープを取り外しており、当日の屋根全体の作業については墜落防止措置は十分でなかった。また、作業者に安全帯を着用させることなく、立木ロープあるいは小屋ロープを身体に巻きつけただけの墜落防止措置として不完全な状態で作業を行わせていた。(安衛則第519条)

2 墜落防止用のロープの固定方法が適切でなかったこと

母屋を横断する形(長手方向)で屋根上に渡されていた立木ロープは、一端が立木に固定されていたものの、他端はフリーの状態で作業が行われていたため、北側屋根上での作業については、墜落を防止する機能は有しないものであった。

3 安全帯の使用についての教育等の安全管理を行っていなかったこと

この会社では、採用時に屋根上の作業について、墜落防止用ロープの両端を固定するように指導はしていたが、そのロープに安全帯を取り付けること等の教育は行ってはおらず、また、実際の作業においては墜落防止用ロープの一端だけを固定して作業を行っていることを知っていながら黙認していた。

また、母屋周辺に足場を組み立てること、安全な親ロープに安全帯を確実に取り付けること等の墜落防止措置に関する安全教育等の管理をほとんど実施していなかった。

 

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 墜落防止措置を確実に実施すること

高さが2m以上の個所の作業であって墜落危険のある場合には、足場を組み立てて作業床を設けること、安全ネットを張ること、親ロープの確実な取り付けおよび安全帯を使用させることが必要であり、工事期間が比較的短い建物の補修・塗装工事等においてもこれらの措置を確実に実施のうえ作業を行わせる。(安衛則第518~520条)

2 安全教育を十分に行うこと

平屋建ての民家等は、ビル等に比較して地上からの高さが比較的低いため墜落による危険を十分に認識しないまま、安易に作業に従事させることが少なくないが、2m以下の高さから転落して死亡する例も多いので、高所での作業に従事させる労働者に対してはあらかじめ墜落防止措置等について十分な安全教育を実施する。(安衛則第35条)

3 安全管理を十分に実施すること

軒の高さが5m以上の木造建築物の構造部材の組立又はこれに伴う屋根下地若しくは外壁部材の取り付けの作業を行う場合には、一定の技能講習を修了した者を作業主任者として選任する必要があるが、それ以下の同種の作業あるいは類似の作業であっても作業の責任者として墜落防止措置について十分な知識と経験を有する者を指名し、その者の直接指揮の下に作業を行わせる。(安衛法第14条・令第6条)

また、経営トップは、作業の安全に関する教育、指示を行うとともに、定期あるいは随時に作業現場を巡視し、指示事項の遵守状況等の確認と必要な指示を行う。

【業種】

木造家屋建築工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100797より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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病院の渡り廊下の塗装中に足場から墜落

   

【発生状況】

この災害は、病院渡り廊下の柱の塗装作業中に発生したものである。

この病院では新たに3階建て南館を新築して旧館と新館を渡り廊下で繋いだが、被災者の所属する会社は建物の建設を請け負った会社の2次下請としてこの渡り廊下を支える柱部分の塗装を請け負った。

災害発生当日、被災者は事業者と一緒に現場に赴き、1次下請の職長および作業者とともに柱の塗装を行うことになり、朝8時に現場全体での朝礼、体操を行った後、事業者と2人で渡り廊下旧館側の柱の塗装作業を枠組み足場の4段目で開始し、昼食を挟んでこの作業を午後2時30分頃まで行い、3段目までの塗装を終えた。

続いて、事業者は、足場の2段目に移って新館側の柱の塗装を開始しようとしたときに、コンプレッサーの音とは異なる「ガン」という音がしたので、下の道路のところを見ると白い塗料が飛び散っていたので足場を伝い降りして1階に行ってみると、新館建物と道路との間に被災者が意識をなくして倒れており、道路には18リットル缶が潰れて付近に白い塗料が飛び散っていた。

その後、救急車を呼び被災者を病院に移送したが、左側頭部脳挫傷のため死亡した。

なお、地上(砂利が敷いてあり、また、足場板があった)に倒れていたときに、被災者は保護帽を着用していたが、少し上の方にずれた状態であった。また、安全帯は着用していた。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 足場の筋交いの間から墜落したこと

被災者の直前の動作等を目撃した者はいないが、枠組み足場3段目の作業床のところに白い塗料が付着していたところから、被災者は3段目の筋交いの間から何らかの理由で下をのぞいたときに、筋交いの間から約7m下に墜落したものと推定される。

なお、この部分の筋交い(Ⅹ状)下部の幅は170cm、交差部分の高さは96cmで、三角状に空間があった。

また、枠組み足場の周囲にはビニールシートが張ってあったが、被災者が墜落したと考えられる場所にはシートが張られていなかった。

2 作業指示が明確に行われていなかったこと

災害は、事業者が足場の2段目に移動して間もなく発生したが、補助的な仕事に従事していた被災者に、次の作業等の指示を行っていなかったため、被災者は塗料の運搬等のため事業者の位置を確認しようとして、筋交いの間から下をのぞきこんだのではないかと推定される。

3 安全教育を実施していなかったこと

被災者は、5か月前に採用されたばかりで、この作業現場には初めて入ったが、高所の足場上での作業があるにもかかわらず、安全帯の具体的な使用方法等の墜落防止措置について、安全教育等は受けていなかった。また、当日の作業についての具体的な指示も受けてはいなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 足場は墜落防止措置を行ったものを使用すること

枠組み足場には筋交いが使用されるが、これは墜落防止の目的で取り付けられるものではないので、足場上での作業で筋交いの空間部分から墜落・転落するおそれのある作業、動作がある場合には、手すりの設置など墜落防止措置を確実に行った上で使用させる。(安衛則第519,563条関連)

2 安全帯の使用方法等の安全教育を実施すること

高所での作業に従事する者については、あらかじめ高所作業における危険性と手すりなど墜落防止措置の有無の確認、安全帯の具体的な使用方法等について十分な安全教育を実施する。(安衛則第35条関連)

3 作業手順等について明確に指示を行うこと

その日の作業開始前に、使用する機器材、貸与を受ける足場と墜落防止措置等の状態、養生シートの取り付け状態、作業の手順等について関係者で十分に打合せを行うとともに、作業者に徹底する。

4 安全管理を実施すること

事業者は、作業者に対してあらかじめ十分な安全教育を実施するとともに、教育事項が遵守されているか否かを随時確認する。

特に、塗装作業等については、事業者自らが作業に従事することも少なくないが、配下の作業者の作業内容・手順については明確に指示するとともに、随時その作業・動作を監視することが大切である。

 

【業種】

建設設備工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100798より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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