建設業の労災事例

傾斜地に乗り上げたトラクター・ショベルが横転し、運転者が下敷きとなる

   

【発生状況】

この災害は、ゴルフ場敷地内において、ホイール式トラクター・ショベルが傾斜地を転落し、運転者が下敷きになったものである。
このゴルフ場では観葉植物育成ハウスを新設したが、水道の設備がなかったので、近くのクラブハウスからホースによって取水することが計画されていた。
災害発生当日、被災者らは、翌日に取水作業を実施することを決めた。被災者は大半の作業者の所定労働時間(午前6時から午後3時)以降に、その準備として11番ホール近くに放置されていたホース(約50m)2本を新設されたハウスまで運搬しておこうと考え、一人で作業を開始した。
ホースの運搬は砂の積み込みに使用するトラクター・ショベルを使用することにした。トラクター・ショベルを運転してホースの放置場所にむかったが、ホースの近くに行く斜面には草が生い茂っていた。まず、トラクター・ショベルで斜面の草を刈って通路を造ろうと斜面を運転しながら草刈を始めたとき、斜面にあった石に前輪を乗り上げたトラクター・ショベルが横転し、約14度ある斜面を転落した。
被災者はトラクター・ショベルの下敷きとなって死亡した。

【原因】

1 トラクター・ショベルに関し、その使用状況等の管理が不十分であったこと。

車両の定期検査(年次、月例、日常)が未実施であったり、車両のキーも長期持ち出し以外は管理者に報告せずに常に自由に持ち出せる状況であったり、事業場内の安全委員会等による作業者の不安全行動を未然に防ぐ措置が不十分であった。

2 トラクター・ショベルの左右安定度(12度)を上回る傾斜面で作業をしたこと。

傾斜面の傾斜角は、進行方向に対して左方向に14.1度、後方向に12.0度の下り勾配で、このトラクター・ショベルの安定度を上回り、さらに右前輪タイヤが石に乗り上げたことにより傾斜角が増大した。

3 作業者が十分に現場の状況を検討しないで、独自の判断で一人作業を行ったこと。

4 作業の指揮命令が不明瞭で、安全管理も不十分であったこと。

5 作業者の安全教育が不十分であったこと。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 トラクター・ショベルの使用状況等の管理を徹底すること。

特に、機械の管理については、定期検査(年次、月例、日常)の確実な実施や、車両の使用状況等を管理者が常時把握する。

2 作業計画を定め作業計画に従って作業を行うこと。

事前に作業現場の状況を調査し、一人作業はできるだけ排除する作業計画を定める。

3 機械の運転者に対し安全作業の励行について再教育すること。

運転作業の慣れによる災害防止のための危険予知訓練の実施や機械そのものの技術革新による構造、運転方法の変化等必要に応じ安全教育を実施する。

4 安全委員会を設置する等事業場内の安全衛生管理体制の整備を図るとともに、安全管理を徹底すること。

作業者の不安全行動を未然に防ぐ措置などについての規定を定め、関係労働者に周知徹底する。

【業種】

土地整理土木工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100853より抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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排水処理施設建設工事において、鉄筋組立用足場の解体作業中の作業者が熱中症にかかる

   

【発生状況】

この災害は、排水処理施設の建設工事において、底盤基礎の鉄筋組立用足場の解体作業中に発生したものである。

被災者が所属する会社は、排水処理施設建設工事を請け負った元請の2次下請として、足場の組立・解体工事を請け負っていた。

災害が発生した日、午前8時30分頃に職長以下4名の作業者が現場に到着し、元請の責任者と打ち合わせを行い、被災者は元請が行う新規入場者教育を受けた。他の作業者は、足場の解体作業を開始し、新規入場者教育を終えた被災者がこの作業に合流した。

午前10時から30分間、休憩をとり、12時に昼食をとったが、被災者は食欲がなく飲み物だけですましていた。

午後1時に、午前中に引き続き作業が再開され、午後3時から30分間、休憩をとったが、職長は被災者から「しんどい」旨告げられたので、「休憩を取りながら、ぼちぼちやるように」と答えた。

午後5時30分に作業を終えたが、被災者の姿が見えないので現場内を探したところ、現場内で座り込んでいる被災者を見つけた。職長らは、しばらく現場内で被災者の様子を見ていたが、様子が変化してきたので、救急車により病院に搬送したが、熱中症による心不全で死亡した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 気温が35度を超え、ほとんど無風の炎天下での、足場を解体するという重筋作業を行っていたこと。

2 作業場所が、日陰のない直射日光の強い場所であり、直射日光を遮るような対策が十分に講じられていなかったこと。

3 作業中の発汗が激しく、水分、塩分の補給が不足していたこと。

4 食欲がなく、昼食をとらなかったことにより体力が消耗していたこと。

5 連日の猛暑による睡眠不足と疲労の蓄積など身体的な不調があったものと考えられること。また、直前の健康診断結果が心電図、肝機能、血圧などに有所見があり要精密検査の対象となっていたことも間接的な要因と考えられること。

6 炎天下における作業を行うとき、事業者および作業者全員が熱中症の危険に関する認識が欠如していたこと。

7 元請からの熱中症対策についての指導がなかったこと。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 炎天下で作業を行わせるときは、作業場所の近隣に日陰などの涼しい休憩場所を確保し、気温、作業内容、作業者の健康状態などを考慮して、作業休止時間や休憩時間の確保に務めること。

2 炎天下で作業を行うときは、作業場所にスポーツドリンクを備え付けるなど水分や塩分を容易に補給できるようにすること。

3 作業場所に温度計や湿度計を設置し、作業中の温湿度の変化に留意すること。なお、環境温度を総合的に評価する指標を示す測定器の備え付けも効果的であること。

4 休憩場所に体温計を備え付け、休憩時間などに体温を測定させることが望ましいこと。

5 熱中症の症状、熱中症の予防方法、緊急時の救急措置、熱中症の事例などについて労働衛生教育を実施すること。

6 元請は、下請に対して熱中症対策のため、温度、湿度を測定してその結果に基づく適切な作業管理、休憩場所の確保、水分、塩分の補給などについての指導を実施すること。

【業種】

上下水道工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100887より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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