猛暑の炎天下の作業場所で足場解体部材搬出等作業中、熱中症によって死亡
【発生状況】
この災害は、炎天下での屋外作業のために発生した熱中症によるものである。
災害発生当日、被災者Aは、午前9時頃から12時頃まで所属する会社の炎天下の資材置場において、足場の部材等の整理整頓を行い、休憩室で1時間昼休みした。
午後からは、別の場所にある新築工事現場にトラックで移動し、同僚作業者B、Cおよび被災者Aの3名で、午後2時半頃から足場の解体作業および解体した足場資材をトラックに積み込む搬出作業を行なった。
現場は、当日は朝から暑く、最高気温が37.4度に達する猛暑であった。このときの被災者Aの服装は、ポロシャツ、ジーパンを着用し、薄手の作業用ベストをつけていた。また、被災者Aが作業していた作業場所は、屋根等の直射日光を遮る設備はなかった。
30分ほど作業したとき、同僚Bは、被災者Aが非常に気分が悪そうに見えたので、1時間程度日陰の場所で休ませた。
午後4時頃から被災者Aは、作業を再開したが、足元がふらついて災害をおこす危険があったので、元請X社の現場責任者が作業を停止させ、日陰の場所で再び休ませた。5時頃から被災者は、吐き気を催し、症状がひどくなったので、救急車で入院させ、診断の結果、熱中症であると診断され、その後多臓器不全のため死亡した。
【原因】
その災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 災害発生当日の最高気温が摂氏37.4度(16時01分計測)という暑い日に屋根のない炎天下で資材置場での足場の部材等の整理整頓、トラックへの足場解体部材の積み込み作業等を行わせていたこと。
2 大量の発汗による塩分の喪失に対して、これを補給しなかったため、熱痙攣がおこり、被災者の体温調節や循環機能に障害が生じたこと。
3 現場の安全管理担当者が塩分および水分を補給ができるよう準備をするなどの夏期の熱中症状対策を怠ったこと。
4 被災者に吐き気等の異常が見られたとき熱中症であることが、本人および関係者に認識されておらず、単なる体調不良と見なしていて、緊急入院等の早期の救急措置が遅れたこと。
5 現場の安全担当者は、作業開始前の作業打ち合わせ、KY活動、注意事項の伝達を行なっておらず、被災者への健康状態、作業服装にも注意が払われていなかったこと。
6 現場の安全管理者に熱中症に対する認識が低かったこと。
【対策】
同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1 日中の気温上昇が予測される時は、直射日光を遮り、風通しのよい休憩所を確保すること。
2 気温の上昇が著しい場合には休憩時間の間隔を十分にとり、休ませること。
3 炎天下での作業はできるだけ長時間の作業を避け、また風通しのよい服装をさせること。
4 休憩場所には水分、塩分補給のためにスポーツドリンク、身体を適度に冷やすことのできる氷水、顔や体の汗を流す水洗場備え付けること。
5 統括安全衛生責任者は、高温となることが予測される日は、あらかじめ関係請負人との連絡網を通じて、工事関係者に周知させ、事前に熱中症の予防指示し、措置を講ずること。
6 労働者が熱中症の症状を呈したときは、軽症のときは下記の手当てを行わせ、症状が回復しないときは重症と見なし、直ちに病院に搬送し、診察、治療を受けさせること。
(1)涼しいところで安静に寝かせる。
(2)水やスポーツドリンクなどを取らせる。
(3)裸体に近い状態にし、冷風を当てる等により体温の低下を図る。
【業種】
その他の建築工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100740より一部抜粋
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本日も無事故で一日を終えられますように。
建築工事現場における熱中症
【発生状況】
本災害は、マンション工事のスラブ鉄筋配筋作業中、真夏の炎天下の作業であったことより熱中症(日射病)となり、治療の開始が遅れたこともあり、治療のかいもなく死亡に至ったものである。
災害が発生した工事は、鉄筋コンクリート造りのマンションの新築工事であった。被災者が作業していた五階のスラブの床面積は337m2(10.7m×31.5m)であり、スラブ面の高さより約2.5mの位置まで四面に枠組み足場が設置されており、全面にメッシュシートが張られていたため、作業場所には風がほとんど入らない状況であった。
通風をよくしようとして西側の足場のメッシュシートをまくっていたが、他の3面が民家および道路に接しており、飛来落下防止のため、同様の措置がとれない状況にあり、改善の効果はほとんどなかった。災害発生のあった地域は災害発生当日まで真夏日が23日間連続していた。
災害発生当日、被災者は午前8時10分より、前日に引き続き5階のスラブの配筋作業を行っていた。スラブの配筋作業は2名1組で行うもので、直径10mmと13mmの鉄筋を配筋する作業であり、作業はしゃがんだ姿勢で行われていた。被災者は61歳と高齢であったこともあり、鉄筋の運搬は行わず、作業場所の近くに仮置された鉄筋の配筋作業のみを行っていた。10時の休憩の少し前になったころ、被災者は職長に対し「調子が悪いので少し休んでいる」と話し、5階のスラブの片隅で休憩した。被災者は両手両足の筋肉が張っているようで自分で手足をさすっていた。顔は赤らんでいた。かなり具合が悪そうであったが、本人は「ちょっと休んでいれば大丈夫」と話していた。10時の休憩になったとき、職長は、被災者の状況を元請の代理人に報告するとともに、被災者が休憩していたところが炎天下であったため、日陰となっている既にコンクリートの打設が終了している階へ連れていった。このときには、被災者は1人では歩けない状況で、職長に体を支えられての移動であった。移動後にも壁にもたれて座っていた。
職長は、被災者の状況から当日の作業の続行は不可能と判断し、会社に電話を入れ自宅に連れて帰る旨話した。当該現場に材料を運搬する車両があるとのことであったので、その車両に乗せ正午ごろ帰宅させた。
自宅に帰宅した被災者は家人が誰もいなかったこともあり、そのまま休んでいたものと思われる。夕方、家人が帰宅した後も被災者は筋肉が張っていることもあり、湿布薬を貼り休んでいた。翌日、午前4時前に症状が改善されないため救急車の出動を依頼し、持病で通院している病院に搬送された。
診察した医師は、熱中症、脱水(高度)と診断し、治療を行ったが、急性腎不全と虚血性腸炎による消化管出血(下血、吐血)が発症し、11日後死亡したものである。
被災者は、災害発生の前日にも当該現場においての炎天下での作業中、同様の症状を訴えていた。
◆熱中症
高温環境に対する不適応あるいはストレスが、生体内の許容限界を超えたときに起こる急性障害が熱中症である。一般に熱中症は気温が27~28℃以上になると発現する危険があり、高湿はこれを増強し、一方通風が良いと起こりがたい。熱中症には、体温中枢の調節機能失調が原因となる重篤な熱射病のほか、循環障害、血圧降下、虚脱状態を特微とする熱虚脱、そして熱痙攣などがあるが、作業場で注意しなければならないのは熱痙攣である。これは大量の発汗後に突然発症するが、その原因は脱水による血液の濃縮である。主症状は酷使した筋肉の有痛性痙攣で、発熱や血圧の異常はみられない。
◆熱射病
熱疲はいの状態が続いて重症化した場合、あるいは強度の温熱負荷により脳温が上昇して、体温調節中枢の失調を招いた場合で、熱射病または日射病と呼ばれる。
頭痛、めまい、悪心から錯乱状態となり、意識不明から昏睡へと進む。筋はむしろ麻痺し、腱反射は低下している。発汗の停止により、皮膚は熱く乾いており、体温は上昇し、しばしば40℃以上になる。この型の熱中症は、重症であり、血液循環に障害をきたし、ショックから死に至ることがある。
以上のほか、高温作業を何日も続けていて全身倦怠、食欲不振、胃腸障害をきたし、次第に体重減少をみることがあるが、これを高温による健康障害の1つの型とすることもある。
また、高温多湿の環境下では、湿った皮膚の角質層の腫脹で汗腺口がふさがれ、汗腺が炎症を起こして赤く腫れ、範囲が広ければ発汗機能を妨げる。これも高温による障害の1つで紅色汗疹と呼ばれる。
出典:「現代労働衛生ハンドブック」
(財団法人 労働科学研究所出版部)
【原因】
(1) 強い日差しの中での作業により熱中症(日射病)が発症したこと。
(2) 連日の猛暑にもかかわらず、暑さへの対策がとられていなかったこと。
(3) 現出した症状が「熱中症(日射病)」であることに気付かず、その対応が遅れたこと。
【対策】
(1) 送風機を設置稼働させたり、通風を良くすることで体感温度の上昇の防止に努めること。
(2) 飲料水を作業場所の付近に設置し、容易に水分補給できるようにすること。
(3) 休憩の回数を増やし疲労の蓄積を防止すること。
(4) 日常の健康状態の把握に努め、作業開始前に健康状態のチェックを行うこと。
(5) 作業者に日射病の症状および救急措置についての教育を行うこと。
【業種】
鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.779より一部抜粋
労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
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