建設業の労災事例

無水フタル酸製造設備定修工事において、中毒症状を発症

   

【発生状況】

この災害は、無水フタル酸の製造設備の定修工事において、フレーカーの清掃作業中に、無水フタル酸による中毒症状を起こしたものである。

定修工事を行うため、災害が発生した3日前に無水フタル酸の製造工程にある無水フタル酸をフレーク状にするフレーカーの運転を停止した。

このフレーカーは2基設置されており、その大きさは直径が2m、長さが3mの円筒状タンクが横置きに据え付けられている。

災害が発生した日、元請の作業員2名と下請の作業員4名により、2基のフレーカー内の清掃作業を分担して開始した。

午前中に、フレーカー内部にこびり付いた無水フタル酸をはつる作業を始めた。この作業に就いた作業員は、つなぎ状の作業衣、ゴーグル、頭巾、ヘルメット、安全靴、軍手、簡易防じんマスクを着用していた。

昼休みを終えて、午前中に引き続きフレーカー内部で、はつり作業を再開した。午後の作業を開始してからまもなく、作業員の一人が体調の不調を訴え、嘔吐し自力で立てない状態になったので、同僚が工場内の健康管理室に運び込んだ。健康管理室から、直ちに、病院へ搬送し診察を受けたところ、急性虚脱症と診断された。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 フレーカーにこびり付いた無水フタル酸をはつる際に発生した粉じんにばく露したこと。

2 粉じん発生に対して、軍手、簡易防じんマスクなどを着用するなど保護具の選定および着用の方法が適切でなかった。このため、はつり作業で発生した粉じんを吸入または、皮膚接触したものと考えられること。

3 換気設備を設けるなど、はつり作業で発生する粉じんを除去する対策が行われていなかったこと。

4 無水フタル酸の有害性に対する作業方法の事前の検討が不十分であったこと。

5 作業員が、無水フタル酸の有害性に関する知識をもっていなかったこと。

6 作業方法の事前検討、作業員に対する労働衛生教育を実施するなどの労働衛生管理体制が機能していなかったこと。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 通風が不十分なタンク内にこびり付いた無水フタル酸をはつるときは、従来から使用していたゴーグルなどの保護具に加えて、ゴム手袋などの不浸透性の手袋、前掛けの使用など無水フタル酸の粉じんが皮膚に接触しないような装備とすること。

2 防じんマスクを使用させるに当たっては、面体の接顔部から空気が漏れないことを確認させるなど着用方法、取扱方法などについて教育・訓練を行うこと。

3 はつり場所に放水したり、排気装置などによる換気を行ったりすることなどにより、はつり作業で発生する粉じんがタンク内に浮遊しないようにすること。

4 事前に作業方法および手順を検討し、無水フタル酸にばく露することによる健康障害を防止すること。

5 作業員に対し、無水フタル酸の有害性および人体に与える健康影響およびその防止対策などについて労働衛生教育を実施すること。

6 作業方法の事前検討の実施などが確実に行われる労働衛生管理体制を確立すること。

 

【業種】

機械器具設置工事業

【被害者数】

休業者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100753より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

 

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鋼製の貯水タンク内で下地塗料の塗布作業中、有機溶剤中毒

   

【発生状況】

この災害は、鋼製の貯水タンク内の防水工事において、下地塗料を塗布する作業中に発生したものである。

貯水タンクは、幅が2.5 m、奥行きが3.8 m,深さが2.4 mのものであり、天井部に縦および横が50cmの開口部が設けられていた。

災害が発生した日、元請の現場代理人と下請の作業者2名により打合せを行った。作業は、外部に2人が待機し、1人がタンク内で塗布作業を交代で行うこととし、作業中は、タンクの側面にあるバルブを開放し、タンク天井部の開口部からブロワーで送気し、有機ガス用吸収缶を装着した保護マスクを着用することとした。

まず、下請の作業者Aがタンク内に入り塗布作業を行い、塗料の補給のためタンクの外に出て、換気用のブロワーのスイッチを切った。そして、ブロワーによる送気が停止されたまま作業者Aがタンク内に入り、後を追うようにして作業者Bもタンク内に入った。その後、タンクから離れていた元請の現場代理人がタンク上に上がったところ2人の姿が見えないので、タンク内をのぞいたところタンクの底部に倒れている2人を見いだした。直ちに2人を救出したが、有機溶剤中毒により作業者Bは死亡し、作業者Aは入院治療により治癒した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 使用していた塗料に、有機溶剤であるトルエンが45%、酢酸エチルが15%、キシレンが8%含まれていたこと。

2 タンク内を換気するためのブロワーの運転を停止していたため、塗料に含まれていた有機溶剤から発生した蒸気が、密閉されたタンク内に滞留していたこと。

3 タンク外に、タンク内を監視する者がいない状態でタンク内での作業を行っていたため、救出が遅れ、症状が重篤化したこと。

4 死亡した作業者Bが使用していた保護マスクが粉じん用防じんマスクであったこと。また作業者Aが使用していた防毒マスクの吸収缶が使用限度を超えて破過していたものと考えられること。

5 防毒マスクの適切な選択および使用方法についての知識が乏しかったため、防じんマスクの使用が見過ごされてしまったこと。

6 元請の下請に対する有害物を取り扱う作業における防護対策についての技術的な指導が不足していたこと。

7 有機溶剤を含む塗装作業の有害性に関する認識が、作業者に欠如していたこと。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 タンク内での有機溶剤を含有する塗料を塗布する作業にあたっては、タンク内の気中濃度が健康障害を及ぼす濃度以下になるように換気する能力を有する換気設備を使用すること。

2 防毒マスクについては、その取扱説明書および破過曲線図などに基づいて、作業場所における有害物質の気中濃度、温度、湿度に対して余裕のある使用限度時間をあらかじめ設定し、その設定時間を限度に使用すること。

3 タンク内で有機溶剤を含有する塗料の塗布作業を行う際には、常にタンク外に監視人を配置し、タンク内作業を監視させ、異常事態の発生に備える必要があること。

4 作業を開始する前に、あらかじめ、保護具の使用、換気の方法、作業の方法および手順などについての作業手順書を作成すること。

5 元請は、下請に対して有機溶剤中毒防止のための労働衛生教育、換気の方法、保護具の適切な選択と使用方法などについて技術的な指導援助を行うこと。

 

【業種】

電気通信工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100756より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

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本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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