地下60mの送水管内の清掃作業中、モルタルの硬化熱で熱中症となる
【発生状況】
この災害は、上水道を布設する工事において送水管の清掃作業中に発生したものである。
この工事は、浄水場から供給地点までの総延長12kmの送水管(内径800mm)を布設するもので、内径約2mのシールドトンネルを泥水加圧シールド工法で掘削し、その中に送水管を入れて接合し、内径約2mのシールドとの空間にエアーモルタル(セメント、砂、混練水、気泡剤を混ぜ合わせたもの)を充填するものである。
災害発生前日までには、立坑から約1kmまでの送水管の据付けが完了し、そのうち約900mまではエアーモルタルの充填が完了していたが、豪雨により川が増水して他工区のドレン用配水管から川の水が流れ込み送水管内が汚れたので、いったん布設工事を中断して送水管内の清掃作業を行うことになった。
災害発生当日、9名の作業員は、台車に乗って一列になって大型スポンジと洗車用ブラシを使用して管内に溜まった水を立坑側へかき出す清掃作業を開始した。
作業を開始した当初は、管内はひんやりしていたが、1時間ほど経過した頃から送水管内は打設されたエアーモルタルの硬化熱によりの気温が上昇しはじめ、前に進むに従って異常な暑さとなった。
現場責任者は、立坑側の送水管の出口に向けて脱出するよう指示し、7名は自力で送水管から脱出できたが、2名が管内で動けなくなり、他の作業員が送水管の出口から80m~100m付近で動けなくなっていた2名を救出した。
その後、2名を救急車で病院に移送し治療を受けたが、1名は熱中症により同日夜に死亡し、他の1名は熱中症により休業災害となった。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 送水管内が高熱になっていたこと
被災者らは内径800mmという狭い送水管内で作業を行っていたが、この送水管の周囲は前日にエアーモルタルが打設されたことにより、その硬化熱により全体として30℃以上、場所によっては50℃を超える状態となっていた。
2 作業計画を作成せずに作業を命じたこと
被災者らが行った清掃作業は、狭い送水管の中を1kmも進むという状態で、しかもエアーモルタルの硬化熱で管内の温度が上昇していることがある程度想定されたのに作業計画を作成せずに作業を命じた。
3 熱中症についての検討および教育を実施していなかったこと
会社は、高温度の環境下での作業で熱中症になるおそれがあったのにその検討を行わず、現場責任者にその意識がなく、作業者に対する教育も実施していなかった。
4 発注を含めた総合的な安全衛生管理を実施していなかったこと
この工事では、複数の特定元方事業者が作業を行っていたにもかかわらず、発注者を含めて事前に相互の十分な打合わせを行っていなかった。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業計画を定めること
土木工事等を行う場合には、発注条件に沿って定常的な作業を行う場合はもちろんのこと、突発的な事故等の修復のための非定常作業において想定される危険および人体に対する影響についてあらかじめ検討し、その対策を盛り込んだ作業計画を作成するとともに、関係作業者に周知徹底する。
2 熱中症に関する教育を実施すること
屋外で直射日光を浴びて行う作業、高温環境下で筋肉労働等を行う作業等に従事する責任者および作業者に対しては、あらかじめ熱中症の危険およびその対策(作業時間の短縮、休憩の付与、塩分・水分の補給等)について教育を実施する。
3 発注者を含む総合的な安全衛生管理を実施すること
一つの場所において複数の元方事業者が工事を施工する場合には、全体を統括管理する特定元方事業者を指名し、安衛法第30条に定める統括安全衛生管理を確実に実施させる。
また、発注者は、混在作業による危険防止のため統括安全衛生管理義務者の指名等を行うとともに、突発的に対応すべき事態が生じた場合には、その修復作業等に関して施工業者と綿密な協議、指導を実施する。
【業種】
上下水道工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
休業者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100743より一部抜粋
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その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
簡易水道導水管敷設工事において、練炭養生中の取水ボックス内に入った作業者が一酸化炭素中毒
【発生状況】
この災害は、簡易水道導水管敷設工事において、練炭養生中の取水ボックス内に入り、一酸化炭素中毒により死亡したものである。
工事の内容は、コンクリート製取水ボックスおよび周囲にネットフェンス・門扉を築造し、直径150mmの鋳鉄製の導水管を敷設するものである。取水ボックスは、幅が1.5m、長手方向が3.5m、深さが2mのコンクリート造りのものであり、上部は開放されており、完成後にはFRP製の蓋が取り付けられるものである。
災害が発生した日、取水ボックス底部のコンクリート打設を行った後、雪が降る天候であったので、打設したコンクリートを養生するため、取水ボックス上面をビニルシートで覆い、取水ボックス内に練炭コンロをつり下げ(図)、この日の作業終え事務所に戻った。
被災者は、帰宅してから、午後8時頃に家族に「現場の様子を見てくる」と言い残して自宅を出たが、深夜になっても帰宅しないので、携帯電話により呼び出したが連絡が取れなかった。そして翌朝、取水ボックス内で一酸化炭素中毒により仰向けに倒れて死亡している被災者が発見された。
【原因】
この災害は、簡易水道導水管敷設工事において、練炭養生中の取水ボックス内に入り、一酸化炭素中毒により死亡したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1 打設したコンクリートの養生のため、使用していた練炭の燃焼に伴い発生した一酸化炭素がビニルシートで覆われた取水ボックス内に高濃度で滞留していたものと推定されること。
2 コンクリートの練炭養生の際に発生する一酸化炭素の有害性および立入禁止についての表示がされていなかったため、有害性に対する注意喚起がされなかったこと。
3 帰宅後、被災者は、一人で現場に赴き、取水ボックス内に入り、滞留していた一酸化炭素を吸入して一酸化炭素中毒に罹ったものと考えられること。
4 一酸化炭素の発生により健康障害が生じるおそれのある練炭養生を行うに際して、養生方法、養生中の表示、養生内部に立ち入る際の換気方法、保護具の使用などの作業手順が作成されていなかったこと。
5 被災者は、練炭による一酸化炭素中毒の有害性に関する教育を受けていなかったため、保護具を着用することなく安易に練炭養生中の取水ボックス内に立ち入ったものと推定されること。
【対策】
この災害は、練炭養生中の取水ボックス内に入り、一酸化炭素中毒により死亡したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 練炭養生の作業を行うときには、一酸化炭素中毒予防に関する知識を有する者の中から作業責任者を選任し、その者に作業方法の決定、換気の実施など適切な作業指揮を行わせること。
2 養生場所に入る前に十分な換気を行い、換気の効果を一酸化炭素ガス濃度計で確認すること。
3 換気が十分に行われていることが確認されている場合を除き、作業環境中の一酸化炭素濃度及び酸素濃度等を考慮し、有効な呼吸用保護具を使用すること。
4 練炭養生に係る換気の実施、呼吸用保護具の使用、一酸化炭素濃度および酸素濃度の測定、作業の手順、緊急時の対応などの内容を記載した作業手順書作成すること。
5 練炭養生の有害性およびその対処方法などについての教育の実施、作業場所の一酸化炭素濃度が急激に上昇するなどの緊急時に備え、避難や連絡体制などの訓練を行うこと。
6 元請は、下請に対して、作業手順書作成の指導、労働衛生教育の実施に対する資料の提供など技術的支援を行うこと。
【業種】
上下水道工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100747より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。