建設業の労災事例

ごみ焼却処理設備の排水ポンプ室内で配管の切断作業中、アセチレン溶断の火炎によりメタンガスが着火して爆発

   

【発生状況】

この災害は、ごみ焼却処理設備の改装工事において、排水ポンプ室内に設置されていたポンプ、配管などの撤去作業中、汚水ピットから流出したメタンガスが、アセチレン溶断の火炎により着火・爆発したものである。

この工事はごみ焼却処理設備の改装のため、各種設備の撤去解体するもので、元請X社と5次にわたる下請事業場によって作業が行われていた。

災害発生当日、朝礼後のミーティングで、4次下請Y社のAと5次下請Z社のBの2人の作業員は汚水ピット(2×4×3m)の上にある排水ポンプ室(2×5×3m)内に設置されている排水ポンプおよび配管の撤去作業を命じられた。A、Bの2人は、アセチレン容器および酸素容器をポンプ室の外に置き、アセチレン吹管をもって、ポンプ室に入り配管の切断を行ったが、配管内部から汚水が流れ出たので、ポンプ室床面に設置されていた地下の汚水ピットと連絡しているマンホール蓋を開けて地下の汚水ピットに流し込むことにした。マンホールの蓋を少し持ち上げて、溶断した配管を差込み、蓋の片側が65mm持ち上がった状態にして、Aが汚水を流し込む作業を行った。

10分程して、Bはマンホール近くの配管の架台アングルを切断しようとしてアセチレン溶接装置の吹管を近づけたとき、室内で爆発が起こって、ポンプ室内部にいた2人の作業員が火傷を負った。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 汚水ピットにメタンガスが滞留しており、マンホール蓋を開けたとき、メタンガスが排水ポンプ室内に流出してきたため、マンホール近辺に爆発混合気が形成されたこと。

2 ポンプ室内の換気が十分に行われておらず、また危険有害ガスの濃度を測定しない状況で、アセチレン溶断火炎を使用したこと。

3 ごみ処理施設など廃棄物処理設備においては、メタンガスが発生することが多く、その爆発危険性に関する安全意識に欠けていたこと。

4 作業を開始する前に作業手順が定めておらず、また危険が存在する箇所および災害の種類についての事前予測が行われていなかったこと。

5 元請と数次にわたる下請の混在作業で、統括安全管理が徹底していなかったこと。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 ごみ焼却施設など廃棄物処理設備の汚水ピット、汚水槽などにおいては、高濃度のメタンガスが発生するため、その付近で溶接・溶断作業を行うときは、十分な換気を行い、かつ、定期的に濃度測定を行い、メタンガスの濃度を爆発下限界の四分の一以下とすること。

2 高濃度のメタン、硫化水素など危険有害物質が流入する箇所が分かっている場合は、流入部の閉鎖など確実な流入防止の措置を講ずること。

3 メタン、硫化水素など有害ガスが発生するおそれのある場所で作業を行う場合は、事前に作業責任者を定め、作業の方法、手順を定めておくこと。

4 下請事業場を含む元請事業場の統括安全管理体制を確立し、安全管理を徹底すること。

リスクアセスメント、安全作業基準作成、安全衛生教育、現場の巡視などを実施し、安全思想の高揚を図る。

【業種】

機械器具設置工事業

【被害者数】

休業者数:2人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100835より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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化学工場の定期補修工事に使用する足場の組立て作業中に作業者が熱中症にかかる

   

【発生状況】

この災害は、化学工場の定期補修工事に使用する足場の組立て作業中に、熱中症にかかったものである。

災害が発生した日、朝礼が終わった後、被災者ら3名の作業者は、前日に組み立てた足場の手直しを行い、10時に休憩をとった。休憩後、足場材を、積載型トラッククレーンを用いて、200mほど離れた足場を組み立てる場所まで運搬し、昼食をとった。

昼の休憩後、足場の組立て作業を開始した。被災者は地上から足場材を組立て中の足場上にいる2名の作業者に手渡し、手渡された作業者らが共同で足場材を固定して足場を組み上げていった。

午後3時に休憩をとり、作業者らは適宜水分を補給していた。

足場の組立て作業を再開し、1時間ほど経過した頃、足場固定用クランプが不足してきたので、被災者は作業場所から100mほど離れた場所にクランプを取りに行った。その後、10分ほど経過した頃、構内道路を、ふらふら蛇行しながら歩き、構内道路上にかがみこんだ被災者を工場の従業員に目撃され、直ちに救急車で病院に搬送したが、7時間後に熱中症による多臓器不全で死亡した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 災害が発生した時期、35度を超える真夏日が続き、災害発生当日も最高気温37度、災害発生時の午後4時頃においても、気温が34.9度、湿度が70%というかなり高温多湿の気象状況であったこと。

2 作業場所が、日陰のない直射日光の強い場所であったこと。

3 保護帽のみの着用で、直射日光を遮るような対策が十分に講じられていなかったこと。

4 炎天下において、筋力を必要とする質量10kgから20kgの部材の運搬などの作業を連続して行っていたこと。

5 現場事務所内に飲料水が置かれていたものの、作業中に発汗が激しく水分および塩分の補給が必要であったが作業場所近くに飲料水および塩分を補給する設備が設けられていなかったこと。

6 事業者はもとより作業者全員が熱中症の危険や予防に関する知識が不足していたこと。

7 災害が発生した時期、連日連夜、30度を超える真夏日と25度を超える熱帯夜が続き、被災者は睡眠不足と疲労の蓄積など身体的な不調があったものと考えられること。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 屋外作業においては、可能な限り直射日光を遮ることのできる措置を講じること。

2 作業場所には、作業中に容易に水分および塩分を補給することのできる物品を備え付けること。

3 作業場所に近接する場所に、冷房室や日陰などの涼しい休憩場所を設けること。

4 作業場所に環境温度を評価する指標(WBGT)を把握するための環境温度計を設置し、作業中の温湿度の変化に対応した管理を行うこと。

5 気温条件、作業内容等を考慮して、休止時間や休憩時間の確保に努めること。

6 熱を吸収、保熱しやすい服装は避け、綿など吸湿性、通気性のよい生地で、明るい色調の服装にすること。

7 高温環境下における作業に従事する者に対し、熱中症に関する労働衛生教育を行うこと。また、熱中症にかかりやすい要因としての、二日酔い、睡眠不足、疲労の蓄積など夏バテしない体力作りに関する健康教育を実施すること。

8 作業中に、身体の異常を自覚し、または他の作業員の異常を目撃したときは、すぐに職長へ通報するように全作業員に周知すること。

【業種】

機械器具設置工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100841より一部抜粋

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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