建設業の労災事例

傾斜地の崩壊防止対策工事中に熱中症となる

   

【発生状況】

この災害は、急傾斜地の崩壊防止対策工事で発生したものである。

被災者の所属する会社は、急傾斜地の崩壊防止対策工事の1次下請として6か月ほど前から作業を行っていた。

災害発生当日、職長のほか被災者を含む4名の土工が3名と2名に分かれて午前8時頃から山の法面(のりめん)と擁壁(ようへき)との間の埋め戻し作業を開始した。

作業は、スコップで山から土を崩し、それをジョレンで均してランマーで固める作業を繰り返し行うもので、この日はかなり暑かったので午前9時30分頃から30分ほど休憩を取って作業を続けていた。

午前11時30分頃、被災者が元請の現場代理人に対し「仕事の切りがいいのでお昼にしましょう」と提案し、昼の休憩に入った。

このとき、同僚の1人が、被災者の調子が悪そうに見えたので、「どう」と声を掛けたところ、「大丈夫だよ。昼に休めば直るだろう」と言って被災者は自分の乗ってきたトラックの中でクーラーをかけて休んでいたが、車から降りたり、また、乗ったりの動作を繰り返していた。

昼の休憩が終わり、現場代理人が戻ってきたときに、被災者はまだ車の中にいて昼食も採っていなかったので、「身体の具合が悪かったら帰っていいよ」と言ったところ、「悪いなー」と応え、自分の運転してきたトラックで自宅に帰ったが、ベッドの上で死亡しているのを午後4時30分頃に帰宅した妻が発見した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことがあげられる。

1 熱中症に罹ったこと

当日の午前11時の気温は29℃、湿度73%であったが、被災者が作業を行っていた箇所は山の裾で山と高さ124cmの擁壁との間の風が通りにくい状態であったため、体感温度は38℃~39℃以上であったと考えられる。

そのため、被災者は、重度の熱中症に罹ったものと推定される。なお、死後に検死した時に、クーラーの効いた自宅にいたにもかかわらず直腸温度が35℃と高かったことが判明している。

また、被災者らは、会社から持参したクーラーボックス(10リットル)の中の麦茶を1時間に1回位のペースで飲んでいたが、被災者のペースは明らかではない。

2 健康管理を十分に行っていなかったこと

被災者は、2ヶ月ほど前に健康診断を行っていたが、その結果では血圧が140-86とやや高めであり、尿の糖分も高いほか、血管が細いため採血ができず血液にかかる検査ができないので、要再検査となっていたがその後の検査は実施していなかった。

3 作業者の管理を行っていなかったこと

被災者が当日の作業開始直後から体調が悪そうなことを同僚が気づいていたが、作業場所の責任者である職長が特に体調の確認を行うことがなかったなど現場における作業管理、健康管理が十分ではなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 熱中症についての教育を実施すること

屋外で直射日光を浴びながら作業を行っているときに、体温調節が乱されて熱痙攣や発汗停止、中枢神経系の障害などの病的症状を呈する熱中症について、事業者等が情報を収集するとともに、その予防対策の教育等を実施する。

予防対策としては、連続作業時間の調節、水分や塩分の補給などを行う。

2 作業開始前に体調等の確認を行うこと

作業者の体調は日々変化しているものであり、特に夏期の高温、多湿の時期においては暴飲等のほか睡眠不足、食欲不振などによって体調不良になることが少なくないので、その日の作業開始前、昼の休憩後等に作業者の体調の確認を行い、体調不良の者については無理をさせないで作業の中止、医師の診断等の処置を行う。

3 健康診断の実施等の安全衛生管理を行うこと

毎年の定期に行う健康診断については、確実に受診させるとともに、その結果に基づく事後措置を確実に実施する。特に、要精密検査の対象となった者については、早期に精密検査を受診させ、必要な治療等を行わせる。

夏期の作業で、熱中症のおそれが高い場所での作業においては、あらかじめ労働時間の短縮を行うとともに、水分・塩分の補給要領の確認、涼しい休憩場所の確保を行うほか、十分な休養、睡眠の確保等についての指導を行う。

 

【業種】

砂防工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100794より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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木造平屋住宅の建築工事において、尾垂木(おだるき)の取付け作業中に屋根の梁もしくは桁から墜落

   

【発生状況】

この災害は、木造平屋の屋根の下地の尾垂木(おだるき)(軒先に向かって反りがある垂木(たるき))の取り付け作業中に発生したものである。

災害が発生した当日、作業は前日に引き続き屋根の下地組作業を作業者4人で分担して行うこととした。

作業者2名は建物の北東隅で屋根の尾垂木(おだるき)の取り付け作業、他の1名は玄関部分の屋根で垂木(たるき)の取り付け作業を行い、被災者は単独で、建物の南東隅の和室上部の屋根で上側の尾垂木(おだるき)の取り付けを行っていた。

午前10時頃に40分程度の休憩をとった後、作業を再開して間もなく被災者は高さ5.5mの梁または桁から和室の土間のコンクリートの上に墜落したものである。

被災者が墜落するところを目撃した者はいないが、墜落した場所に加工途中でノミがささった尾垂木(おだるき)が落ちていたことから、被災者は取り付け予定の尾垂木(おだるき)(長さ3.12m 12×16cm角)を持って梁または桁の上にあがり、ノミを用いて取り付けるため加工していたものとみられる。

作業にあたっては、足場や作業床がないため被災者は、梁や桁を作業の足場として使用していたもので身体のバランスを崩して墜落したものと見られる。

被災者は、保護帽を着用していたが墜落時に脱げたものとみられ、被災者の近くの土間で発見された。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 墜落防止のための措置が行われていなかったこと

尾垂木(おだるき)の取り付け工事にあたって安全な足場・作業床を設置しないまま、作業を進めていた。また、安全帯をかけるための親綱もなく、安全帯も工事現場には用意されていなかった。

2 安全に工事を進めるための工事計画を作成されていなかったこと

足場の設置計画もなく、工事の安全な工程管理が行われていなかった。また、当日の作業開始にあたって、具体的な危険個所の指摘や指示もないまま作業が進められていた。

3 安全教育を実施していなかったこと

事業者は、「木造建築物の組立等作業主任者」の資格を有していることから墜落災害や高所作業の危険性についての認識はあったものとみられるが、作業者に対する安全教育としては打ち合わせの時に「気をつけろ」程度の指示に止まり、具体的で十分な安全教育を行っていなかった。

4 当日は、事業者は自ら作業を指揮することなく作業の危険性の認識が不足していたこと。

始業時に、TBMやKYなどによる安全作業の打ち合わせや危険の確認などが実施されず、また、作業者も高所作業の危険性の認識が薄かった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 墜落防止のための足場・作業床、手すりの設置を行うこと

木造家屋の建築工事では、建て方工事に先行してブラケット足場や二側足場などの設置により、作業床の設置と手すりなどを確保し、墜落防止対策を進めることが必要である。

また、足場の設置が困難な場所あるいは建家の中心部等については、安全帯の使用もしくは墜落防止用の防網を設置することが必要である。

2 安全な工事計画に基づく工事の安全施工を図ること

木造住宅では、足場等の仮設物にかかる計画が定められていないものが多い。工事の進行に伴い、計画的に安全設備の設置・管理を進めることが必要である。

3 作業にあたっては、直接作業主任者が作業指揮にあたること

安全な作業行動の確保や設備の状態を把握し、直接、作業指揮・指示することが安全上不可欠である。

4 安全作業標準の策定と安全教育の実施を行うこと

高所作業の安全化を図るため、作業標準を定め、足場の設置や安全帯や保護帽など安全装備の使用の徹底を図る。

作業開始前の打ち合わせと確認により、日々の安全な作業の徹底を図ることが必要である。

【業種】

木造家屋建築工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100797より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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