建設業の労災事例

工場に蛍光灯を増設する工事中、感電し死亡

   

【労災発生状況】

この災害は、麺類を製造するY社の工場において、蛍光灯増設工事を請け負ったZ社の作業者が感電したものである。

Y社では、原料の小麦粉の貯蔵サイロに点検台を設置したところ、その下が暗くなってしまったため、点検台の下に蛍光灯(140V用)を設置する工事をZ社に発注した。

災害発生当日の朝、Z社の作業者Aは社長BとともにY社に到着し、Y社の保全係から工事内容の説明を受けた際、蛍光灯の増設のほか、別の場所の手指用温風乾燥器のコンセントの移設も依頼された。さらに、当日は工場が操業しており停電作業を行えないこともその場で説明を受けた。その後、Aは蛍光灯の増設工事に、Bは温風乾燥器コンセントの移設工事に、それぞれ取りかかった。A、Bともに工事は、予定されていた午前中だけでは終らず、午後も引き続き行われた。

午後3時半頃、Aは作業床の下に取り付けた蛍光灯に接続されている電線コード3本と電源コードを接続するため、電源コードに絶縁スリーブを取り付け圧着ペンチで挟んだときに、圧着ペンチの歯が絶縁スリーブを突き抜け、電源コードの充電部分にまで達して感電した。Aは倒れているところをY社の従業員に発見されたが、既に死亡していた。

被災時のAの服装は、作業服、布製の作業帽および運動靴であった。Z社は、当日の作業で絶縁用ゴム手袋、絶縁靴等の絶縁用保護具を用意しておらず、Y社も用意していなかった。また、Aが使用していた圧着ペンチは、通常の作業で用いられているもので、活線作業用に絶縁された工具ではなかった。

当日は、Z社の社長BもY社に来ていたが、別の場所でB自ら作業を行っており、Aに対しては作業場所と作業内容の指示を行ったのみで、感電の防止等、作業の安全に関する指示はしていなかった。

Z社では、作業者に対し感電防止についての教育を実施したことはなかった。そのため、作業者も感電の危険についての認識は薄く、低圧電気に係る工事では普段から活線のままで作業を行っていた。

【原因】

この災害の原因としては、次のことが考えられる。

1 工事内容の事前の確認が不十分だったこと

災害発生当日の発注者による工事内容の説明で、事前に発注された工事以外の工事が加わったほか、活線作業であることが示され、発注内容と状況が異なっていた。そのため、活線作業に必要な絶縁用保護具が用意されないまま活線作業が行われた。

2 絶縁用保護具を使用せず、絶縁されていない工具を使用していたこと

Aは、絶縁用ゴム手袋、絶縁靴等の絶縁用保護具を使用しておらず、また、通常の作業で使用する絶縁されていない圧着ペンチを用いて活線作業を行った。

3 感電防止についての指示や安全衛生教育が行われなかったこと

Y社に同行したZ社の社長Bは、Aに対して作業場所と作業内容の指示を行っただけで、感電の防止等、作業の安全に関する指示はしていなかった。 さらにZ社では、作業者に対し感電防止についての安全衛生教育を実施したことはなく、作業者の感電の危険についての認識は薄かった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業方法について発注者と十分な打合せを行い、対策を検討した上で作業を行うこと

低圧電気に係る工事でも工場全体を停電させて行うことが望ましいが、発注者の工場等が稼動しており工場全体を停電させることができない場合には、工事個所の部分停電で作業を行うのか、活線のまま保護具等を使用して作業を行うのかをあらかじめ発注者と受注業者とで打ち合わせる。

なお、分電盤のスイッチ等で部分停電を行う場合には、他の者による投入が行われないよう施錠するか、投入禁止の表示等を確実に行うことが必要である。

2 絶縁用保護具等を使用させること

低圧電気に係る工事をやむを得ず活線状態で行う場合には、作業者に絶縁用保護具を使用させるとともに活線作業用の工具類を使用させる必要がある。作業に必要な絶縁用保護具、絶縁シート等の絶縁用防護具および保護帽、絶縁された工具類等は、あらかじめ用意しておくとともに、定期および作業開始前に絶縁性能等を確認するようにする。

特に、工具類は、絶縁されていない一般用のものを現場に持ち込まないようにすることが重要である。

3 感電防止に係る安全衛生教育を実施すること

電気工事に携わる作業者に対しては、特に感電の危険とその防止についての安全衛生教育を実施する。教育は繰り返し行い、感電防止措置について関係作業者に周知徹底することが重要である。

【業種】

電気通陳工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101075より一部抜粋

 

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