建設業の労災事例

店舗の解体工事中に、活線を切断して感電し死亡

   

【労災発生状況】

この災害は、店舗を解体する工事において、活線を切断した作業者が感電したものである。

災害発生当日、解体する店舗の外側の看板および店舗内のテーブル、椅子、ステンレス製の流し台等の撤去を請け負ったZ社の作業者A、Bと社長Cの3人は、元請Y社の担当者から、現場の店舗において、工事内容の説明を受け、工事で使用する電動工具は分電盤の100Vのブレーカーを入にして電源を確保すること、作業終了後はブレーカーを切にすることの指示を受け、さらに前日までに200V電源に接続されていた機器の撤去と配線の絶縁処理は完了しているとの説明を受けた。Y社の担当者は作業開始とともに、現場を立ち去った。

午前中はA~Cの3人で、店舗外側の看板、店舗内のカウンター等を取り外し、4tトラックに積み込む作業を行った。

午後、Aは、ステンレス製の流し台の上にある蛍光灯(100V用)を取り外すようにCから指示され、作業を始めたが、蛍光灯の配線が壁の中から延びており、そのままでは蛍光灯の取り外しができないことが分かった。AはCに方法を聞いたところ、Cは配線を切断するよう指示した。そこで、Aが店舗内に持ち込んでいた鉄製のワイヤーカッターを素手で持って配線を切断したとき、100V配線 → ワイヤーカッター → A → ステンレス流し台 → 地面 の回路が形成され、Aは感電して倒れた。その後、Aは病院に移送されたが、死亡した。

災害が発生したときのAの服装は、作業服、布製の作業帽、安全靴であり、ゴム手袋等の絶縁用保護具は使用していなかった。また、Aが用いたワイヤーカッターは絶縁された活線作業用のものではなかった。

午前中の作業では、看板等の撤去で電動工具が使用され、午後の作業時も100Vのブレーカーは入のままになっていた。そのため、蛍光灯の配線は活線状態となっていた。

Z社では、社長Cと作業者A、Bの3人体制で日頃、作業を行っていたが、感電防止等に関する安全衛生教育は実施していなかった。また、請け負った工事に係る作業計画書も作成されることがなく、Cの現場での指示で作業が進められていた。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 作業計画を作成せずに、現場にいた社長の指示で作業が行われ、必要な感電防止対策がとられなかったこと

事前の作業計画が作成されずに、当日、現場にいた社長の指示に従って作業が進められたため、安全面の対策が十分に検討されず、必要な感電防止対策がとられなかった。

2 ブレーカーを切らず、活線を直接切断したこと

午前中に電動工具を使用した後、ブレーカーを切らなかったため、午後の作業で活線状態の配線を素手で持ったワイヤカッターで切断した。

3 安全衛生教育を実施していなかったこと

Z社では、従業員数が少なく、日頃、社長Cの現場での指示で作業を進めていたことから、作業者に対し感電の危険についての安全衛生教育は実施していなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 予め作業計画を作成し、必要な感電防止対策を講じた上で作業を行わせること

建物の解体工事に関連した、電気機器、電気回路の撤去については100Vの低圧電気であっても感電の危険があるので、解体の手順とあわせて電気回路の切断方法、一時停電の場合の電源しゃ断等について作業計画を作成し、関係作業者に周知徹底の上、計画に従って作業を行わせるようにする。

さらに、絶縁された工具や絶縁用保護具を使用させる等の感電防止対策を講じた上で作業を行わせる。

2 停電を確認したうえで作業を行わせること

電気回路の切断を行う場合には、あらかじめブレーカー、スイッチ等により電源をしゃ断するとともに、作業の開始前には停電状態になっていることを検電器等により確認する。

3 安全衛生教育を実施すること

作業者に対し、絶縁用保護具の使用、安全な工具の使用等の感電防止措置に関する安全衛生教育を実施する。さらに、教育は繰り返し実施し、関係作業者に周知徹底することが重要である。

【業種】

電気通信工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101076より一部抜粋

 

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本日も無事故で一日を終えられますように。

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