建築工事で荷をつり上げ中に地盤が沈下してホイールクレーンが転倒
【発生状況】
本災害は、社会福祉施設の建築工事において、ホイールクレーン(つり上げ荷重50t)で荷をつり上げて旋回中、アウトリガー直下の地盤が沈下して、クレーンが転倒し、移動式クレーン運転士が負傷したものである。
災害発生当日は、現場入口付近に堆積してある埋戻し用土砂を入れたワイヤモッコをホイールクレーンでつり上げ、運搬する作業を行っていた。1回目の作業で、土砂約760kg(約0.4m3 )を入れたワイヤモッコをホイールクレーンでつり上げ、ブームを下げながら右旋回しようとしたところ、転倒モーメント90%の警報が鳴り、さらに転倒モーメント100%の警報が鳴って過負荷防止装置が働き一部機能が停止したが、旋回は可能だったため右旋回したところ、ホイールクレーンが運転席前方に傾き転倒した。このとき、建物側に張り出した前後のアウトリガー下の地面が10~15cm沈下していた。ホイールクレーンが置かれた場所は、建物基礎工事で一度、掘削された後に埋め戻されており、地盤の強度、整地状態等は十分でなかったため、アウトリガーの下には、コンパネ、鉄板、木材等を敷き地盤の養生をしていた。
なお、移動式クレーン運転士は、元請とホイールクレーンを所有する会社との間で運転手付きのリース契約が交わされ、現場に派遣されていた。
【原因】
この原因の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 ホイールクレーンを設置した地盤は、建物基礎工事で一度、掘削された後、埋め戻されたものであり、その強度、整地状態等が十分でなかったこと
ホイールクレーンのアウトリガーの下には鉄板、コンパネ、敷角(19×19×80cmの木材)等を敷いていたが、これらの地盤養生にも関わらず埋戻し土の強度が十分でなく、地面が沈下した。
2 ホイールクレーンの旋回中に過負荷防止装置の警報が鳴ったにも関わらず、旋回を中止しなかったこと
移動式クレーン運転士は、過負荷防止装置の警報が鳴った後も、引き続き操作が可能であった右旋回を行った。
【対策】
同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 ホイールクレーンの設置場所は、埋戻し地盤を避けること
埋戻し地盤は、転圧、締め固め、整地が不十分な場合があり、アウトリガーを張り出したときに地面が沈下するおそれがある。この場合、たとえ、鉄板等で養生したとしても、鉄板等の全体にわたり地面が沈下する可能性がある。このため、今回のようなケースでは、建物から距離を離し、埋め戻しをしていない場所にホイールクレーンを設置することが必要である。
また、埋戻し工事を適正に行うことも不可欠であり、施工計画書に従い埋戻しの一層の厚さを適正に管理し、転圧、締め固めを入念に行い、地表面ではくぼみができないように平らに埋め戻すことも重要である。
2 ホイールクレーンの過負荷防止装置の警報音が鳴ったら、速やかにその作業を中止すること
警報が鳴ったら一旦、作業を中止することは、ホイールクレーン操作の基本的な安全遵守事項であり、新規入場者教育時、毎朝の朝礼時等において移動式クレーン運転士に繰り返し教育する必要がある。
【業種】
鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業
【被害者数】
なし
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.101021より一部抜粋
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