建設業の労災事例

セメント工場のサイロ内で付着したセメントの掻き出し作業中にセメントとともに落下し、死亡

   

【発生状況】

この災害は、セメント工場サイロ内の粉体搬送装置のキャンバス張替え作業で発生したものである。

粉体搬送装置は、粉体に空気を吹き込んで流動性を与えごく僅かな傾斜の樋の中を重力で移動させるもので、四角な箱の上にキャンバス(帆布)または粉末焼結板のような多孔質板を張ってある。

この張替え作業で行われるセメントの掻き出し作業は、1カ月前から開始され、その作業手順は、まず、サイロのマンホール(内径600mm×600mm)を開けて酸素濃度を測定(最初の測定値は20.9%)した後、1つのマンホールから親綱とハロゲンランプ3個を垂らして作業者がサイロ内に入り、すり鉢状に堆積しているセメントの掻き落としを行うというものである。

当日は、会社の工事責任者と被災者ら作業者7名と下請2社の作業者8名の計15名が午前9時に工場に到着して直ちに作業に着手した。

作業は、3名が一組となってサイロ内に付着堆積したセメントを掻き出して下に落とし、下部の掻きだし口(内径950mm×950mm)のところで下請の作業者1名が掻き棒(トンボ)で溜まったセメントを突き落とす要領で行われた。作業は40~50分実施した後、サイロ外に出て10~15分の休憩をとるサイクルで進めていた。

4回目の作業を開始した午前11時30分頃、「助けて」という大きな声が聞こえた。作業者達がその方向を見ると掻き棒に必死にしがみついている下請の作業者が見えたので、3名で助け出し、その後、責任者が人員点呼を行ったところ、被災者がいなかった。

そこで、責任者は、掻き出し口の下部にあるレベルボックス(セメントを一時貯めて置く場所)につながる輸送管(内径800mm×625mm)の中に入って探したところ、管内でセメントに埋没している被災者を発見した。

その後、数人で被災者を救出し病院に移送したが、死亡と確認された。なお、最初に発見された下請の作業者は異状が無く、休業もしなかった。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 安全帯等を使用させていなかったこと

当日は、サイロ内で3名一組5列となって堆積しているセメントを棒で掻き出してサイロの排出口に落とす作業方法で行っていた。しかし作業開始当初に行っていた親綱に安全帯を取り付ける作業方法は実行していなかった。

そのため、被災者は、掻き落とした多量のセメントとともに掻き出し口から輸送管に落下し、セメントに埋没した。

なお、下請の作業員も被災者と同時にセメントに巻き込まれたが、掻き棒を水平に保持したため、セメントの掻き出し口に落下することは免れた。

2 埋没危険を認識していなかったこと

作業開始当初はサイロ内の壁など上部にあるマンホールの下7m位のところまでセメントが堆積し、しかもすり鉢状になっていた。そこで責任者は作業中に埋没する危険があると判断し、親綱に安全帯を取り付けて作業を行わせていた。作業を開始して1カ月になってサイロ内の堆積状態が平坦化したことから当日の作業では危険が無いと判断し、安全帯の使用を指示しなかった。

3 サイロ内の視界が不良であったこと

サイロには、内部の照明として500Wのハロゲンランプが3個設置されていたが、セメントの粉じんがサイロ内に立ち込めていて、作業者相互間もよく確認できない状態であつた。

そのため、被災者がセメントに巻き込まれたときの確認もできず、また、事故後の確認も遅れた。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 安全帯等を確実に使用させること

ホッパー又はずりびんの内部等で、土砂(セメントを含む)に埋没すること等による危険がある場所では原則として作業を行わせない。

やむを得ずこのような作業を行わせるときには、親綱・安全帯を確実に使用させる等の措置を講ずる。(安衛則第532条の2)

また、深さが1.5mを越える箇所で作業を行わせるときには、その場所に安全に昇降できる設備を設ける。(安衛則第526条)

2 作業開始前に現場の確認と明確な指示を行うこと

サイロ内の堆積したセメントの剥離作業を長期間かけて行うときには、日々内部の環境が変化する。作業開始前にセメントの堆積状況、酸素欠乏危険場所の場合には酸素濃度の測定等を行って作業環境を確認し、それに基づく作業手順および安全衛生対策を決定し関係作業者に徹底する。

3 作業計画と手順を定め関係者に徹底すること

サイロ内の堆積セメントの剥離作業等は、もともと「蟻地獄」の危険のある作業である。作業の開始前に設備の状況、堆積の状況等を確認して安全な作業計画を作成し関係者に徹底する。毎日の作業環境の変化に対応した作業開始前の指示を明確に行う。

また、サイロ内の照明については、十分な照度が確保されるように設置するとともに、作業によって粉じんが発散しないような対策についても検討する。

4 安全衛生教育等を実施すること

サイロ内で作業を行う者(下請の作業者を含む)に対しては、あらかじめ想定される危険有害性について安全衛生教育を実施するとともに、作業開始前にKY(危険予知)活動等によりその日の安全作業のポイントについて指示する。

【業種】

機械器具設置工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

不休者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100931より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

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製鉄所の空気分離装置の解体作業で保冷材の抜き取り準備中に流出した保冷材に埋没し死亡

   

【発生状況】

この災害は、製鉄所の空気分離装置の解体作業で発生したものである。

この製鉄所では、製鉄用プラント設備(分塊冷却塔設備)に付属した空気分離装置の解体撤去を行うことになり、被災者の所属する会社は3次の下請として作業に加わった。

当日、現場では、元請の現場監督者2名と下請の作業者16名が現場に集合し、空気分離装置本体の解体、空気分離装置内部の保冷材(パーライト)の抜き取り、冷却塔のはつり作業等を行うこととなった。被災者は同僚と2名で空気分離装置内部の保冷材(パーライト)の抜き取り作業を行うことになった。

そこで、まず午前中に保冷材を凝固させるために3回の散水を行い、午後からは冷却装置の側壁に保冷材の抜き取りを行うための開口部を作る作業に着手した。

作業の分担は、同僚が高所作業車に乗って地上約7m付近の側壁に開口部を設けるためガス溶断を行う。被災者は高所作業車と側壁との間に立ってガス溶断の火花が地上に用意してあった保冷材飛散防止用シートに着火しないよう監視する業務を行うことになった。

午後1時50分頃、同僚が、側壁に沿って縦1m、横1.5mにわたってわずかに切り残すよう(切り残した部分は、後で車両系建設機械のバケットで突き破り中の保冷材を一気に落下させる)に溶断したところ、突然、開口部が全開して中から保冷材が流出(約400~500m3)し、ほぼ真下にいた被災者は逃げ遅れて生き埋めになった。

それを見た同僚は、保冷材の落下が治まってから高所作業車から降りて被災者を探したが、見当たらないので応援を得て探したところ、保冷材の中に埋没している被災者を発見した。

その後、被災者は、直ちに病院に搬送されたが死亡した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 保冷材が凝固していなかったこと

保冷材の抜き取り作業は、保冷材に十分に散水し凝固させる⇒空気分離層の側壁を10cm角程度にガス溶断し、中の保冷材の固結状況を確認する⇒保冷材の自立性が認められたなら、そこからガス溶断で徐々に開口部を拡げる⇒車両系建設機械により内部の保冷材を抜き取る手順で進めることになっていたが、中の保冷材が固まっていなかったために一気に開口部から噴出した。

2 手順に沿わないで溶断したこと

被災者らは、災害のあった冷却装置のガス溶断の前に、別の冷却装置について同様の開口作業を行っていた。そのときには保冷材が固まっていて問題がなかったことから、作業時間を短縮するため開口部を徐々に広げることなく、一気に1m×1.5mの大きさにガス溶断したもので、元請会社が定めた作業手順に沿わない作業を行った。

また、昼の休憩中に、元請等に対して作業要領の変更を報告しなかった。

3 作業方法の確認が不十分であったこと

当日の作業開始前に、元請を中心として打ち合わせを行ったが、当日の作業内容についての検討と指示はなかつた。

また、現場の作業責任者は、災害が発生したときには現場に不在で、作業の実態の確認も行っていなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 保冷材の凝固度合を必ず確認すること

災害の直接の原因は、散水によって保冷材が自立する程度まで固まっていなかったことである。散水を行う場合には散水量と時間によって凝固度合いが異なるので、標準作業手順に沿って確認用の開口部を設け、そこから凝固度合いを必ず確認する。

2 作業方法等の確認を行うこと

あらかじめ定められた作業計画、作業手順も、作業者の慣れ、作業時間の短縮等のため変更されることがある。その日の作業の開始前に予定されている作業について関係者で手順の確認を行うとともに、現場責任者は随時現場を巡回し作業の実態の把握と必要な指示を行う。

特に、建設物、機械設備等の撤去作業においては、手順の省略等が行われやすいので、作業方法等を変更する場合には、元請の責任者等に連絡して了解を得ることを関係作業者に徹底する。

また、作業の監視者を配置する場合には、作業用機械との接触危険、物の不意の落下又は飛来によって危害を受けることのない位置を指定し、危険のある場所への立入禁止を明示する。

3 安全衛生教育を実施すること

各事業者は、配下の作業者に対して安全衛生の基本についてあらかじめ安全衛生教育を実施する。

また、元方事業者は、その日の作業開始前にKY(危険予知)活動等を行って、その日の作業に伴って想定される危険有害性とその対策について周知する。

【業種】

機械器具設置工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100933より一部抜粋

 

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