ホースの亀裂から生コンが噴出し、近くの作業者がこれを浴びる
【労災概要】
この災害は、高層ビルの新築工事で、建物の配管の耐火被覆に使用するスラリー状の生コンが圧送ホースの亀裂から霧状に噴出し、近くで配管敷設作業をしていた作業者が顔に浴びて被災したものである。
災害発生当日、施工会社のZ班の作業者3人は建物3階で配管の敷設作業を、Y班の作業者4人は、1、2階の吹き抜け部分で既に敷設が終わった配管に耐火被覆を吹き付ける作業と吹付け材の圧送作業を、それぞれ行っていた。
3階で作業していた3人は、作業を開始して約2時間が経過したとき、背後で大きな破裂音がしたため、一斉に後ろを振り返ったところ、2階の吹付け箇所に圧送するホースから生コンが霧状に噴出していて、3人はこれを顔に浴びた。3人は、すぐに病院に搬送され、手当てを受けた。
Y班が2階で行っていた耐火被覆の吹付け作業は、別々のホースで圧送されるスラリー状の生コンとロックウールとを先端のノズルで混ぜ合わせて行うもので、生コンを圧送するホースは直径約20mm、最高使用圧力4MPaの耐圧ホースで、1MPaの圧力がかかっていた。圧送ホースは、当日の作業開始とともに圧送車がある1階から、いったん3階まで引き上げられた後、2階の吹付け箇所に下ろされた。生コンの噴出は、ホースに亀裂が生じたことが原因であったが、前日の使用では、ホースに異常がなかったことから、当日、ホースを3階に引き上げる際に壁等と接触したり、または3階に引き上げた後にZ班の作業者に踏まれたりしたこと等によりホースが傷み、生コンを圧送したときに加わった圧力により、亀裂が生じたものであった。
この施工会社では、ホースの点検を、使用後にのみ行い、使用前には行っていなかった。また、Z班が作業している3階フロアに引き伸ばされたホースに覆いを設ける等の養生をしておらず、また、圧送開始をY班からZ班に連絡していなかった。
【対策】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 ホースに亀裂が生じたこと
ホースの取扱いや移動、作業者に踏まれたこと等によって、ホースが痛み、生コンを圧送したときに加わった圧力により亀裂が生じて、生コンが噴出した。
2 使用前にホースの点検を行わなかったこと
3 ホースを使用する作業班が、ホースの途中で作業する班に、圧送開始等を連絡していなかったこと
【原因】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 ホースは、できるだけ痛まないように取り扱うこと
ホースの取扱い、移動等は丁寧に行うとともに、設置したホースが損傷を受けるおそれがあるときは、覆いを設置する等の養生を行う。
2 ホースは使用前に点検を行い、痛み等があれば交換すること
3 圧送用ホース等、作業用の用具を、他の作業班の作業箇所近くに設置する場合は、その使用目的、危険性、使用開始時刻等についての情報を当該作業班に伝えること
【業種】
鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業
【被害者数】
不休者数:3人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)
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