建設業の労災事例

高速道路の側面壁にボルト接合されたブラケット足場とともに地面へ落下

   

【発生状況】

この災害は、高速道路建設現場において半壁高欄と呼ばれるコンクリート製防音壁を道路側端部に施工中、そのコンクリート打設時に重量保持を目的として設置された鋼製ブラケット足場が倒壊・落下し、その上にいた作業者3名が地面へ墜落したものである。

コンクリート打設作業中、足場からドーンという音を何回か聴いたため、作業者はいったん足場から降りた。この時作業者は、異常に気づいたが、その異常は型枠の底面が落ち込んだ事と判断していた。しかし、実際には型枠ではなく、ブラケット足場自体が下方へ落ち込んでいた。

このままでは打設したコンクリートが地面へ流れ落ちてしまうと考えた作業者は、生コンの圧送をいったん止め、状況確認のため、再び足場上へ乗り移った。そして型枠底面の状況をのぞき込もうとしたとき、足場とともに作業者3名が地面に落下し、1名が死亡、2名が負傷した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

倒壊したブラケット足場は、橋梁の側面に埋め込んだインサートとボルト接合することにより、荷重を支持する構造となっていた。そして倒壊した足場の周辺に散乱するボルトを回収したところ、規格の異なるボルトの混在が確認された。規格の異なるインサートとボルトを組み合わせて使用した場合、適正な強度は期待できないことが考えられる。そこでインサートの規格とボルトの規格を比較した。その結果、インサートについては、ミリねじ規格であった。これに対し、ボルトはその大半がインチねじ規格のものであった。そしてこのインチねじのねじ山には、インサートのねじ山の破片が付着していた。

以上のことから、ブラケット足場が倒壊した原因は、インサートとは規格の異なるボルトを使用したことにより、ボルト接合作業時にインサートのねじ山を損傷させ、このため、足場は、設計時に仮定した負担荷重を大幅に下回る強度でしか保持されていなかったためと考えられる。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 インサートの製造会社の指定した規格のボルトを使用すること。

2 かん合長についても、インサートの製造会社が指定した長さとすること。

3 高所作業では、安全帯を使用すること。

4 異常が明らかに確認された場合などでは、足場等の倒壊が生じても回避できる体制を整えてから作業を行うこと。

5 同一の現場では、異なる規格のボルト類を混在して使用しないこと。

6 ボルトの使用場所、種類、首下長、ピッチ、材質等を明示し、適切な保管・管理を行うこと。

7 設計変更があった場合などでは、再度インサートの許容荷重を確認すること。

【業種】

橋梁建設工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100968より一部抜粋

 

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