建設業の労災事例

立木の伐倒作業中、激突され

   

発生状況

この災害は、立木の伐倒作業中に発生したものである。

この工事は、砂防ダム建設工事のうちの準備工として、河川両岸の立木の伐採(抜倒、枝打ち、玉切り、搬出等)を行う作業であった。

災害発生当日の朝、午前7時50分頃から、現場作業の説明・打合せが始まり、伐採範囲、地形、立木の状況、作業方法、作業分担などが確認され、KYミーティングの後に作業が開始された。

午前11時頃、元請の現場責任者が、被災者に対して立木の抜倒箇所から南東方向に約13m離れた地点で別の抜倒木の枝払い作業を行うよう指示を与えた。あわせて、立木の抜倒方向を伝えていた。

そして、現場責任者は、現場入口から東北方向約70m離れた地点で、高さ約17m、南東方向に約30度の下り斜面に立っていた立木をチェーンソーで南西方向(川下方向)に倒そうとし、受け口を切り込み、次に抜倒する旨を被災者に伝え、最後に追い口を深く入れたところ、川下方向からの風が強くなり、抜倒方向が約90度ずれ、チェーンソーで枝払い作業をしていた被災者の右肩に直撃し、被災した。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 抜倒木の倒れる範囲内で作業をしていた被災者を、安全な場所まで待避させることなく立木の伐倒を行ったこと。

被災者の所属する会社では、安全教育時に使用する「抜倒作業手順」および「作業注意事項」において、「伐採作業を行うときは、作業員の間隔を立木の樹高の約1.5倍の距離をおくこと。」としており、このルールが守られていなかった。

2 チェーンソーによる伐採方法が不適切であったこと。

(1) 受け口および追い口の切り込みを立木に水平に入れるべきところを、地山の傾斜面にほぼ平行(角度は約15度)に入れたため、力学的にみて被災者の作業位置方向に倒れる力が働いたと思われること。

(2) 追い口を深く入れすぎたため、抜倒方向に直角に残るべき「つる」が被災者方向に約7cm残る程度であったことにより、被災者方向に倒れやすい方向になったこと。

3 被災者が抜倒箇所に背を向けて枝払い作業を続けており、抜倒方向を確認していなかったこと。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 立木の伐倒作業を行う場合には、あらかじめ「抜倒作業手順」および「作業注意事項」に定められた作業方法による作業計画を作成し、当日のKYミーティングなどで、特に次の点の安全確認を行わせること。

(1) 抜倒作業を行う場合には、抜倒範囲内で作業する者に対し、必ず、立木の樹高の1.5倍以上の間隔を確保し、抜倒作業を行う者と枝打ち等の作業を行う者との安全な退避距離や位置を相互に確認させてから作業を開始させること。

(2) チェーンソーによる伐木作業時の技能の判断基準として、伐倒方向が地山の傾斜面の横方向または斜め下方向に受け口および追い口の切り込みを入れ、作業手順どおり、抜倒方向に垂直に「つる」が伐根ばっこん直径の約10分の1以上残るようにすること。

2 作業時の危険性を再評価し、作業手順や注意事項の内容を見直し、現場責任者、関係労働者全員に対する安全教育を行い、周知徹底すること。

3 立木の伐採作業についての知識の習得や経験を積ませるため、現場責任者等に対し、専門機関の研修を受講させ、効果的な技術の習得や安全意識の高揚に努めること。

 

 

【業種】

砂防工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100789より一部抜粋

 

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