建設業の労災事例

山の斜面に設置されている電気棚の撤去後、下山中、吹雪になり被災

   

【労災発生状況】

この災害は、山の斜面に設置されている電気柵の撤去作業終了後、吹雪の中、下山していた際に発生したものである。

この電気柵は鹿を保護するために夏から秋にかけて設置されているものであり、災害発生当日はその撤去作業が予定されていた。当日は朝から雪が降っていたが、午前8時頃より作業者5人で入山し、作業を午前11時から午後2時まで実施し、その後下山を始めた。下山途中で吹雪となり、積雪量が50~60cmとなったため、ラッセルしながら下山した。このため、体力の消耗が激しい状態であったが、しばらくして心臓に持病があった作業者Aの体調が急に悪くなり、意識不明の状態に陥った。その後、午後4時過ぎにようやく携帯電話が通じる所まで下山し救助要請をしたが、すぐに電源が切れた。さらに、Aを抱えて下山するには時間がかかり体力が消耗するため、Aを付近の木の根元に置いて、残りの4人は下山を続けた。しかし、午後5時頃、あたりが暗くなったため、雪が吹き溜まっているところに穴を掘り、4人一塊となって夜明けを待った。翌朝は午前5時頃から下山を開始し、その後、捜索中の防災ヘリに発見され救助されたものの4人とも凍傷を負った。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 朝から雪が降っていたが、それほどひどくないと思って山中での作業実施を強行したこと。

2 雪が降っている中、雪山に登るには軽装であったこと。

3 著しい低温と暴風雪のなかで急峻な山道を登下山することにより、身体に過度の負担をかけたこと。

4 緊急時の連絡方法として、携帯電話しか準備しておらず、さらに作業場所周辺は圏外であったため、しばらく下山しなければ緊急時に連絡できない状態であったこと。

5 携帯電話の充電が十分ではなかったため、救助の要請をしてもすぐに電話が切れてしまったこと。

6 健康診断結果で心臓に所見がある者を、緊急時にすぐに救助に行くことができない低温の場所での業務に従事させたこと。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業を開始する時点で、作業を行う場所の近くに避難場所がない場合には、今後の降雪、降雨量を予測して、作業を行うかどうかの判断基準を定めること。基準を超えた時には、速やかに作業を中止すること。

2 雪山で作業をさせる時には、寒さに対応できる服装を準備させること。

3 山間部等で、携帯電話などですぐに連絡が取れない場所で作業を行う場合には、緊急時にすぐに連絡を取ることができる手段を事前に検討しておくこと。緊急時に使用できるように機器類の保守点検をしておくこと。

4 健康診断結果で、脳や心臓に所見がある者については、緊急時にすぐに救助に行くことができない高温または低温の場所での業務に従事させないこと。

5 事業者または発注者等が、作業現場における異常気象等の危険の前兆を察知した場合は、速やかに延期又は中止の指示を出すこと。

【業種】

土木工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

休業者数:4人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100992より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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