集じん装置の設置工事中、溶接火花が落下して汚泥タンクが爆発
【労災概要】
この災害は、工場に集じん装置を設置する工事中に、溶接火花により既設の汚泥タンクが爆発したものである。
Z社は、この集じん装置の設置工事のうち、工場の屋根に排気ダクトを設置する工事を1次下請業者として請け負った。
災害発生当日、Z社の作業者AおよびBは、前日までに地上で組み立ててあった排気ダクトを屋根上に運び、据え付ける作業を行っていた。排気ダクトを屋根に固定するため、アーク溶接を行っていたところ、突然、作業個所の軒下にあった密閉式のタンクが爆発した。作業していたAおよびBは、爆風により一度吹き飛ばされた後、屋根に叩き付けられ負傷した。
爆発したタンクは、工場排水の処理過程で発生した汚泥を一時貯蔵しておくためのもので、内部では、メタンガスが発生していた。タンクは密閉式であるが、ガス抜きのための排気口が設けられており、AおよびBが行っていたアーク溶接で発生した火花がこの排気口付近に落下し、排気口から立ち昇っていたメタンガスに引火して、タンクが爆発したものであった。
ダクト設置個所近くのタンク内でメタンガスが発生していることは、発注者である工場から元請業者に伝えられていなかったため、Z社の作業者AおよびBはタンクが爆発するおそれがあるという認識がないまま作業を行っていた。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 タンクの中で発生したメタンガスにアーク溶接の火花で引火爆発したこと
爆発したタンクには、工場排水の処理で発生した汚泥が貯蔵されており、そこでメタンガスが発生していた。タンクの上方の工場の屋根では集じん装置の排気ダクトの設置工事が行われており、アーク溶接により発生した火花が落下して、タンクの排気口から出ていたメタンガスに引火し、タンクが爆発した。
2 発注者等から危険情報が提供されていなかったこと
工事の発注者である工場では、タンクの中でメタンガスが発生し爆発する危険性があることについての情報を元請業者に対して提供していなかったため、Z社の作業者AおよびBもその危険性について知らされないまま火花が発生するアーク溶接を行った。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 メタンガスにアーク溶接の火花が引火しないような措置を講じること
メタンガスが存在する設備の近くでアーク溶接の作業を行うときは、メタンガスの発生を停止する、火花の飛散を防止する等、火花とメタンガスが接触しないような措置を講じる必要がある。
また、作業の前にメタンガスの濃度を測定し、爆発するおそれがないことを確認することも重要である。
2 工事に関連する危険有害性情報を請負業者に伝えること
爆発危険性や有害性のガスが存在する施設やその近辺で工事を行う場合、発注者は、その情報を元請業者に確実に伝え、元請業者は、その情報を下請業者に伝え、安全な作業計画書を作成させるとともに、実際に作業を行う作業者に周知徹底させる。
また、作業前の打ち合わせで、安全な作業方法について再確認することも重要である。
【業種】
建設設備工事業
【被害者数】
休業者数:2人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)
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