建設業の労災事例

橋脚建設工事において、ニューマチックケーソン内で掘削作業中の作業者が減圧症にかかる

   

【発生状況】

この災害は、ニューマチックケーソン内における掘削作業で発生したものである。

被災者は、橋脚建設工事の2次下請の作業員として、0.25Mpaに加圧されたニューマチックケーソン内でケーソンショベルを操作して掘削の作業に従事していた。

被災者は、高圧室内作業に係る特別教育を受け、健康診断を受け異常は認められなかった。その翌日から3日間、被災者は、作業時間240分、減圧時間120分の函内作業に従事した。3日目の作業が終了し、宿舎に戻ったところ、身体に違和感を覚え、痛みを感じたので職長に申し出たところ、産業医の指示により、現場内に設置された再圧室に入り再圧を行うこととなった。その結果、自覚症状が消え、近隣の病院で就労可能であるとの診断を得たので、その翌日に、作業時間210分、減圧時間150分の函内作業に従事したが特に体調の異常は認められなかった。さらに、その翌日も同様の函内作業に従事したが、函外に出て1時間経過した頃に体に痛みを感じた。すぐ、産業医の指示により再圧をして自覚症状が消えたので再圧を終了し、専門医に診察を受けるべく病院に入院し治療を受けた。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 被災者は高気圧室内作業に今回初めて従事したため、高気圧下の環境に習熟していなかったこと。

最初の入函時から0.25Mpaとかなりの高気圧下の作業をいきなり行うこととなったことに加えて、連日、就労時間が深夜に及んだための睡眠不足と疲労の蓄積により、減圧症が発症し易い状態であった。

2 高気圧室内作業適性についても十分に検討していないまま作業を行わせたこと。

なお、被災者が従事していた高圧室内作業の管理については、高圧室内作業主任者の直接指揮の下に作業が行われ、加圧時間、減圧時間などが業務日誌に記録されており、設備的な欠陥も認められなかった。

3 最初の減圧症状が発生した際に、再圧室により症状が治った後、専門医による診断を受けることなく、再度、高気圧室内作業に就労させたため、減圧症が再発してしまったこと。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 高気圧室内での作業は、有資格の高気圧室内作業主任者の直接指揮の下に、加圧時間、減圧時間の適正な管理、設備の点検・整備の実施、作業室内の酸素濃度および有害ガス濃度の測定および測定結果に基づく適切な対応などが必要であること。

2 高気圧室内作業に初めて従事させるときは、再圧室または気閘室を利用するなど高気圧下で支障がないかを確認し、未経験者に対しては高気圧下の環境に習熟させた後就労させること。

3 減圧症状が発生したときは、再圧治療を行うとともに、速やかに専門医師による直接の診察を受けることが必要であること。また、再度、就労させる場合には、専門医師による高気圧室内作業の就労の可否の診断を経てから作業に従事させること。

4 高気圧室内作業に従事させる作業者の就労状況、当日の健康状態をチェックし、健康状態に応じた減圧スケジュールの延長等についても検討すること。

【業種】

橋梁建設工事業

【被害者数】

休業者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100899より一部抜粋

 

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