建設業の労災事例

光ファイバーケーブルの架線工事中に感電し死亡

   

【労災発生状況】

この災害は、インターネット用光ファイバーケーブルを電柱に架線する工事中に発生したものである。

災害発生当日、1次下請(Z社)の作業者Aは、現場代理人Bおよび他の作業者4名とともに、現場に到着した。現場には高所作業車で作業を行う元請(Y社)の作業者数名も到着していた。Bが作業予定の説明をし、さらに「漏電の有無を検電器で確認するように」と指示した後、各作業者は指示された電柱に上り作業を開始した。

午前中は、光ファイバーをつり下げる支持鋼線(メッセンジャーワイヤー)を掛け渡す作業を行った。午後は、1時から作業を再開し、Aは、午前中と同じ電柱に上り、メッセンジャーワイヤーに光ファイバーケーブルをつり下げるためのリング状の金具を取り付けながらファイバーケーブル牽引用ロープを通す作業を行っていたが、午後2時半頃、電柱上の変圧器の固定用番線に触れたときに感電した。Aは救出され病院に移送されたが、既に死亡していた。

災害発生時、Aが上っていた電柱の変圧器から配電される家庭のうち1軒で漏電が起きていたことが後に分かった。その漏電のため、変圧器→家庭(漏電)→地面→高所作業車→メッセンジャーワイヤー→A→変圧器固定用番線→変圧器の経路で電流が流れ、経路の途中にいたAが感電したものである。

午前中の作業開始前に、Bの「漏電の確認を行うように」との指示に従って各作業者が検電を実施したところ、Aが担当する電柱で変圧器を固定している番線に漏電が確認されたので、Bはすぐに作業者全員に検電し直すよう指示したが、そのときにはいずれの電柱でも検電器が作動しなかった。そこでBは、漏電の原因を確認することなく、そのまま作業を開始させた。また、午後の作業前には検電を実施していなかった。

作業が行われていた電柱は、電力会社が設置した配電柱であり、電力線が架線されていたが、Y社は電力会社への事前の連絡をしておらず、また、作業開始に当たり、絶縁管、絶縁シートを取り付ける等の防護の措置も行っていなかった。

Z社では、光ファイバーケーブルの架線作業、電柱上での作業姿勢の確保に係る作業手順書を作成していたが、検電器の使用方法、漏電の確認方法、電力線への防護等、感電防止に関する内容を作業手順書に盛り込んでいなかった。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 電力線に感電防止の措置を講じないまま作業を行ったこと

光ファイバーケーブルの架線作業を行っていた電柱には、電力線が架線されていたが、電力線、柱上の変圧器等に絶縁管、絶縁シートを取り付ける等の感電防止措置を講じないまま作業を行った。

2 作業前に漏電を検知したにも関わらず、十分な原因究明等を行わなかったこと

Bの指示により、午前中の作業前に検電を行い、漏電を検知したにも関わらず、その漏電の原因を確認しないまま作業を行ったため、実際には漏電が継続していてAが感電した。また、午後の作業開始前に検電を行わなかったことも原因の一つである。

3 作業手順書が不十分だったこと

光ファイバーケーブルの架線作業、電柱上での作業姿勢の確保に係る作業手順書は作成されていたが、感電防止に関する内容は作業手順書に盛り込まれていなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 電力線等の充電部分に感電防止措置を講じること

作業を行う電柱に、架線された電力線等の充電部分には、絶縁管、絶縁シートを取り付ける等の感電防止措置を講じ、作業を行う。また、事前に電力会社に連絡をしておくことも重要である。

2 漏電を検知した場合は、原因を究明すること

作業前の検電で漏電を検知したときは、その原因を確認し、必要な措置を講じた上で作業を行う。また、検電は、作業開始の都度行うことも重要である。

3 作業手順書に感電防止に関する内容を盛り込むこと

光ファイバーケーブルの架線は、電力会社の配電柱を利用して行うことが多いので、その作業手順書には、検電器の使用方法、漏電の確認方法、電力線への防護等、感電防止に関する内容も盛り込むようにする。さらに、関係作業者に対し繰り返し教育訓練を実施し、その内容を周知徹底するとともに、作業の責任者は、作業の状況を常に監視し、必要な安全作業についてその場で指導することも重要である。

【業種】

電気通信工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101073より一部抜粋

 

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