建設業の労災事例

車両積載形トラッククレーンで鋼板の荷卸作業中、クレーンが転倒し運転者が負傷

   

【発生状況】

この災害は、自動車道路の建設工事現場において、車両積載形トラッククレーンの荷台に積まれた鋼板を荷卸作業中にトラッククレーンが転倒し、作業者1人が被災したものである。

災害発生当日、3次下請会社の作業者A~Cの3人は、2次下請から、鋼板を資材置場から別の場所まで移動するよう指示を受け、0.5tの鋼板2枚、1.0tの鋼板1枚を車両積載形移動式トラッククレーン(つり上げ荷重2.3t)で荷台に積み込んだ。

そして、トラッククレーンを荷卸場所へ移動し、Aが運転席側のアウトリガーを、Bが助手席側のアウトリガーをそれぞれ引き出した。その後、職長のCが1.0tの鋼板に玉掛けし、Bが助手席側でクレーンを操作し、鋼板をつり上げて助手席側へ旋回した。

そのとき、トラッククレーンが助手席側に傾き始めたので、クレーンを操作していたBは荷台の後方へ逃げようとして段差から転落し基礎杭に衝突した。そこへ荷台に積まれたままの鋼板が崩れ落ちてきて、Bは基礎杭と鋼板との間にはさまれ、重傷を負った。

転倒したトラッククレーンには過負荷防止装置は装備されておらず、クレーンの安定性は荷重計から読み取る方式であった。

また、トラッククレーンを操作していたBは、クレーン特別教育を受講していたものの移動式クレーンにかかる運転資格はなかった。また、職長Cは小型移動式クレーン運転技能講習を修了していたが、AおよびBに指示するため、周囲の状況を確認しやすい荷台の上で作業していた。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 荷重計で荷重を確認しなかったこと

転倒したトラッククレーンには過負荷防止装置は装備されておらず、クレーンの安定性は荷重計から読み取る方式のものであったが、荷重計の針が振れて読み取りにくく、安全な荷重であることの確認が困難であった。

2 つり上げ荷重が過荷重であったこと

トラッククレーンのつり上げ荷重は、転倒する直前には、その作業半径から0.65t程度であったが、つり荷は1.0tであり、過荷重の状態であった。なお、積み込みは荷台後方より行ったので、過荷重状態でも限界転倒モーメントを超えることはなかった。

3 運転資格のない者にトラッククレーンの運転をさせたこと

職長Cは、トラッククレーンを運転資格のないBに運転させた。Bは、トラッククレーンの特性についての知識と技能に欠けていたため、災害の発生につながった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 過荷重とならないよう荷重計を確認しながら作業を行うこと

荷重計を確認しながら作業を行うとともに、荷重計は読み取りやすいよう、日頃から点検・修理を行っておく。

2 荷の重さと作業半径に適したクレーンを使用すること

移動式クレーンを使用して重量物を運搬する場合には、荷の重さ、運搬経路、作業半径、つり上げの高さなどをあらかじめ検討し、過荷重にならないようなつり上げ能力を有するクレーンを配置する。また、過負荷防止装置を装備したクレーンを配置することも重要である。

3 移動式クレーンの運転は資格を有する者に行わせすること

職長は作業指示の際、無資格者に移動式クレーンを運転させないようにする。 また、元方事業者等が移動式クレーンの運転者の資格の有無の確認をすることも重要である。

【業種】

橋梁建設工事業

【被害者数】

休業者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

 

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本日も無事故で一日を終えられますように。

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