暗い工場内を歩行中、ピットに墜落
2022/11/21
【労災概要】
この災害は、工場の地下タンク改造工事において、当日の作業に就く前に、作業者がさく等のないピットに墜落して死亡したものである。
この工事は、古い地下タンクを解体・撤去し、新しいタンクを設置するものである。被災者の所属する事業場は、この工事の2次下請けとして新タンクの設置を請負った。工事は当日1日限りの予定であった。
災害発生の日、この工事の作業指揮者Aと被災者はライトバンに同乗し、他の作業者2名はトラックに同乗して、工事現場である工場に到着した。守衛からライトバンとトラックを別々の場所に駐車することを指示されたため、それぞれの場所に駐車して、トラックの駐車場で再集合することを約し、Aと被災者はライトバンの駐車場所に駐車して集合場所に向かった。ところが、途中で被災者は、忘れ物に気が付きライトバンに取りに行くために別行動をとった際、工場内の工事場所のピット(古いタンクを撤去した跡)に墜落したものである。工場内には照明がなく、歩行が困難な状態であった。ピットの周囲には注意表示や立入禁止のテープが設置されていたものの、さく等は設置されていなかった。
トラック駐車場で落ち合ったAら3人は、被災者が集合場所に到着する前に工事現場を見ておこうということで工場内に入ったが、暗くて危ないので引き返していた。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 ピットにさく等の墜落防止措置が行われていなかったこと。
注意表示やテープ等の設置があったが、工場内は暗く、夜間の場合これらの安全対策では不十分であることに気付くはずである。また、発注者及び元方事業者との間で、夜間における安全対策の内容について打ち合わせが行われていない。
2 元方事業者や発注者による墜落防止措置の確認がなかったこと。
覆工板の復旧やさく、手すり、防網等の墜落防止措置がとられていなかったことに関し、元方事業場における現場巡視、安全指導が行われていない。また、工場内であることから、不安全な状態が放置されれば工場関係者の被災も考えられることから、発注者自らも安全対策について関心を示さなければならないが、確認等の措置を取っていなかった。
3 被災者が、照明のない、当日が初めての工場内に単独で入ったこと。
4 責任者のAらが、約束した集合場所に誰もいなければ、あとから来る被災者が勝手に行動することが十分認識できたにもかかわらず、勝手に移動したこと。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 ピットの墜落防止措置を行うこと。
ピット等の危険な場所が存在する場合には、工事施工中にさく、手すり、防網等の墜落防止措置をとることとともに、工事終了後における覆工板の復旧、さく等の設置を行うこと。
2 元方事業者等による確認を行うこと。
元方事業者は、関係請負人の作業の状況を把握し、墜落防止措置等を講じていない場合には直ちに指導し、是正させなければならない。また、発注者においても、当該場所が工場関係者も通行する工場内であることから、工事作業中及び作業終了後において墜落防止措置の状況を確認しなければならない。
3 作業場所等の状況を把握すること。
当該事例の場合、作業指揮者らにおいても工場内に立入り、暗いため途中から引き返しているが、初めての場所での作業に当たっては、あらかじめ、作業場所の位置及びその状況、危険物等の箇所、避難口、構内遵守事項等について発注者等から情報を得ておかなければならない。
4 勝手に工場内等に立入らせないこと。
工事の開始前の集合場所を定めていても、早く到着した作業者が自らの判断で作業を開始したり移動等の行動をとり、被災する例がある。事前の打ち合わせの中で、全員による打ち合わせを行わない前の勝手な行動を禁止しておかなければならない。
【業種】
機会器具設置工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)
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