建設業の労災事例

ドラグ・ショベルで土止め用矢板を打ち込む作業中、矢板を押えていた作業者に激突

   

【労災発生状況】

この災害は、排水管を道路に敷設するため、ドラグ・ショベルで幅1m、深さ3.5mの溝を掘削し、土止め用の矢板を打ち込む作業中に発生したものである。
災害発生当日、排水管の敷設工事を請け負ったZ社では、現場責任者Aおよび4人の作業者B~Eが、朝7時半から会社事務所で打合せをした後、車で現場に向かった。
現場では、Aがクレーン機能付きドラグ・ショベルを運転して掘削作業を行った。
掘削作業が進むにつれて、道路に面した民家の塀が倒壊するおそれが出てきたため、Aの判断で他の場所に設置予定の矢板を土止め用に打ち込むことにした。Aがドラグ・ショベルを運転し、つり上げた矢板を正確な位置に下ろすため、Bが溝の中に入り矢板を手で押さえた。さらに、Bが矢板を押さえた状態で、Aはドラグ・ショベルのバケットで矢板の上端を叩き、矢板を地中に打ち込んだ。
この方法で3枚目の矢板を打ち込もうとしたとき、矢板が地中の石に当たり、矢板は地中に入らなかった。そこで、Aはさらに強く矢板の上端を叩いたところ、矢板が曲がり、矢板を押さえていたBを直撃した。Bは、すぐに病院に搬送されたが、間もなく死亡した。
当日は、矢板の設置作業が予定されていなかったため、現場には矢板打込み用の機械を用意していなかった。また、予定外の作業であったため、事前に矢板の転倒や折れ曲がりによる作業者への危険性について検討していなかった。

【原因】

この災害の原因としては次のことが考えられる。

1 ドラグ・ショベルを主たる用途以外の用途で使用したこと

当日は、矢板の設置作業が予定されていなかったため、現場には矢板打込み用の機械を用意していなかった。そのため、掘削用機械であるドラグ・ショベルを矢板の打ち込みという主たる用途以外の用途で使用した。

2 作業を開始する前に作業中の危険性について検討をしていなかったこと

予定外の作業であったため、事前に矢板の転倒や折れ曲がりによる作業者への危険性について検討をしないまま、作業に取り掛かった。

【対策】

同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。

1 矢板の打ち込みに掘削用の車両系建設機械を使用しないこと
車両系建設機械を使用するときは、当該機械の用途と性能を確認し、適切な方法で使用する。

2 作業を開始する前に危険性を評価し、安全な作業計画を立てること
作業を開始する前にリスクアセスメントを行い、作業中に予想される危険性を評価し、安全に関する措置を決定する。その結果を踏まえ、作業手順や作業者の配置等を定めた作業計画を立てるとともに、作業の方法等について関係作業者に周知させる。特に、車両系建設機械を使用するときは、安全な使用方法について十分に検討する。
また、途中で作業計画を変更する場合は、安全なものとし、工事の責任者の承認を得る。

【業種】

上下水道工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101115より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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工場屋根に換気扇取付け工事中、スレートを踏み抜き墜落

   

【労災発生状況】

この災害は、工場の屋根に換気扇を取り付ける工事中に発生したものである。工場の屋根は、中央部の高さ13mで軒先の高さ9mまでの傾斜があり、厚さ6mmの波型スレートで葺かれていた。

換気扇取付け位置は屋根の中央付近であったため、作業者が屋根上を移動するために、前日に、幅30cm、長さ4mと1.5mの歩み板20枚を屋根上に敷き通路を確保していた。

災害発生当日は、工事を請け負ったZ社の作業者A~Cの3人が朝8時頃から屋根に登り作業していたが、3時間ほどで換気扇の取付け作業が終了したため、通路に使用していた歩み板を南側の軒先に集め、Bが屋根上で玉掛けを行い、Cが地上に降りてトラッククレーンの操作をして、全ての歩み板をトラックに回収した。このときAは換気扇の試運転状況を確認していた。

歩み板の撤去と換気扇の試運転が終了し、Aが地上に降りようと昇降用のはしごをかけていた工場東側へスレート屋根上を移動したところ、屋根のスレートを踏み抜き、12m下の床に墜落した。Aはすぐに病院に運ばれたが死亡した。

作業開始前に行われたミーティングでは、Z社の現場責任者Dから「スレート上は鉄骨の梁に固定されているフックの上を歩く」、「作業はあわてずに行う」等の注意があったが、歩み板の撤去方法についての指示はなかった。

また、現場では、屋根上の歩み板撤去後にスレートの踏抜きによる危険を回避できる安全な通路を確保していなかったほか、スレートを踏み抜いた際に作業者が床面に激突することを防止するために防網を工場内の屋根の下に張る、作業者に安全帯を使用させる等の墜落防止措置を講じていなかった。

さらに、Z社では、工事が短時間で終わることや以前にもスレート葺きの屋根上で同様の工事を行っていたことから、工事計画書を作成していなかった。

【原因】

この災害の原因としては次のことが考えられる。

1 作業者が屋根上で作業しているにもかかわらず歩み板を撤去し、スレートの踏み抜きによる墜落災害を防止するための措置を講じていなかったこと

作業者が屋根上で作業しているにもかかわらず歩み板を撤去し、しかも工場内の屋根下に防網を張る、作業者に安全帯を使用させる等の、作業者がスレートを踏み抜いた場合に備えた墜落防止措置を講じていなかった。

2 安全な作業を行うための工事計画書を作成せず、作業者に具体的な作業手順を指示しなかったこと

Z社では、工事の開始前にスレートの踏み抜き等による墜落災害を防止するための安全な作業方法を定めた工事計画書を作成しなかった。また、その日の作業開始前のミーティングにおいても、歩み板の撤去の方法等を指示しなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。

1 歩み板の撤去後に作業者がスレート上を移動しなくても済むようにすること
スレート上での工事終了後、歩み板を回収する位置と作業者が屋根から下りる位置を同一とし、作業者が歩み板を撤去した後の屋根を移動することがないようにする。また、踏み抜きのおそれがある場合は、歩み板のみならず、防網を屋根の下に張る、作業者に安全帯を使用させる等の措置を講じることが必要である。

2 安全な作業を行うための工事計画書を作成し、作業者に具体的な作業手順を指示すること
工事の開始前に安全な作業方法を定めた工事計画書を作成し、その日の作業開始前のミーティングにおいても歩み板の撤去の方法等、具体的な作業手順を作業者に指示する。

【業種】

その他の建設工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp より一部抜粋(労働災害事例No.101116)

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の 札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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