角材を加工中、携帯用丸のこ盤が反発して作業者に当たり死亡
【労災概要】
この災害は、河川の護岸工事現場で発生したものである。
災害発生当日、作業者Aは、携帯用丸のこ盤を使用して角材(長さ50cm、縦と横ともに5cm)を加工して測量用の杭を作るよう職長Bから指示された。
Aは、資材置き場から材料の角材を十数本持ってきて、携帯用丸のこ盤を使用して加工作業を始めた。Aが丸のこ盤と角材を手に持って、作業していたところ、携帯用丸のこ盤が反発し、はずみで丸のこ盤の歯がAに当たった。Aは、病院に搬送されたが、死亡した。
Aが使用していた携帯用丸のこ盤は、元々取り付けられていた安全カバーの金具が変形していたため、安全カバーが正常に作動せず、歯が剥き出しのままであった。また、この携帯用丸のこ盤は、管理責任者が定められておらず、点検や整備も行われていなかった。
Bは、Aに作業を指示した際、安全な作業方法について具体的に示していなかった。さらに、この事業場では、作業者に対して、携帯用丸のこ盤の取扱い等についての安全教育を実施していなかった。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 携帯用丸のこ盤の安全カバーが正常に作動せず、歯が剥き出しの状態で使用したこと
2 携帯用丸のこ盤と角材を手に持って、不安定な状態で作業したこと
3 Aに対する作業方法の指示が不明確であったこと
4 Aに対して、携帯用丸のこ盤の取扱い等についての安全教育を実施していなかったこと
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 携帯用丸のこ盤は、安全カバーが正常に作動するように点検し、整備しておくこと
携帯用丸のこ盤は、管理責任者を定めて、点検し、安全カバー等に不良があれば直ちに修理して、常に良好な状態に整備しておく。
2 携帯用丸のこ盤を使用する際は、安定な状態で使用すること
携帯用丸のこ盤を使用する際は、角材等の切断する材料を固定した上で、携帯用丸のこ盤をしっかりと保持して、使用する。
3 作業指示は、安全な、作業方法を具体的に示すこと
臨時の作業を指示する際は、安全な作業方法を具体的に示すようにする。さらに、作業者の経験や能力に応じた指導を行うことも重要である。
4 携帯用丸のこ盤を取り扱う作業者に安全教育を実施すること
携帯用丸のこ盤を使用する作業者に、その危険性、安全カバー等の安全装置の機能、安全な作業方法等についての教育を実施する。
【業種】
道路建設工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
水力発電所の取水口の自動除じん機の保守作業中、はさまれて死亡
【労災概要】
この災害は、水力発電所の取水口に設置された自動除じん機のチェーンに付着した古い潤滑油(グリス)を除去する作業を行っているときに発生したものである。
この自動除じん機は、電動機を駆動源として、機械の下方と上方との間を回転するチェーンに金属製のバケットを取り付けた装置で、下方の軸部分を水面下に没し、バケットが取水口に設けられたスクリーンに沿って上昇することで、浮遊するゴミや枯れ葉を連続的にすくい取るものである。
災害発生当日、水力発電所の作業者A~Cの3人は、自動除じん機の保守作業を行っていた。この保守作業は、まず、自動除じん機の始動点検を行った後、チェーンに付着している古い潤滑油を除去し、その後、新しい潤滑油を塗布するという手順であった。
古い潤滑油の除去は、自動除じん機を運転しながら、作業者が動いているチェーンにステンレス製のヘラを押し当てて付着している潤滑油をそぎ取る方法で行われた。Aが自動除じん機の操作をし、Bは除じん機の内側で、Cは除じん機の外側で、それぞれチェーンにヘラを押し当ててチェーンに付着した潤滑油を除去していたところ、除じん機の内側にいたBが上方のチェーン駆動軸と上昇してきたバケットとの間にはさまれた。すぐにAがチェーンを逆転してBを救出し、病院に搬送したが死亡した。
この作業では、除じん機の内側にいる作業者は、バケットが上昇して接近するたびに、身をかがめてバケットをやり過ごすことになっていたが、Bはバケットが接近してくることに気づくのが遅れてはさまれたものである。
発電所では、毎月1回、保守作業として自動除じん機のチェーンに潤滑油を塗布し直す作業を行っていたが、安全な作業方法を定めた作業手順書を作成していなかった。また、作業者に安全衛生教育を実施していなかった。
【原因】
この災害の原因として次のようなことが考えられる。
1 自動除じん機を動かしながら、はさまれる危険がある箇所に立ち入って作業者に保守作業を行わせていたこと
自動除じん機の保守として、チェーンの潤滑油を除去し、塗布する作業があったが、機械を停止せず、また、作業者がはさまれる危険がある箇所に立ち入って作業を行わせた。このため、作業者は、上昇してくるバケットとチェーンの駆動軸にはさまれないようにするため、バケットが接近するたびに身をかがめてバケットをやり過ごすという危険な作業を行っていた。
2 作業者が自動除じん機のはさまれ危険箇所に立ち入ったときに、自動除じん機が停止する構造となっていなかったこと
3 自動除じん機の保守作業に係る作業手順書の作成や作業者への安全衛生教育を実施していなかったこと
この発電所では、自動除じん機の保守作業について、安全な作業方法を定めた作業手順書を作成していなかった。また、作業者に安全衛生教育を実施していなかった。
【対策】
同種災害の防止のために次のような方策が考えられる。
1 自動除じん機の危険な箇所に立ち入り、機械を動かしながら行う作業をなくすこと
自動除じん機の保守作業について、作業者が自動除じん機の危険な箇所に立ち入らずに行うことができる作業方法または自動除じん機を停止して行うことができる方法を検討し、採用する。
また、自動除じん機を停止して保守作業を行う場合には、操作盤の電源を切って施錠するとともに、「保守作業中 動かすな」等の表示を行い、他の作業者が誤って起動することがないように措置することも重要である。
このような作業方法が困難なため、止むを得ず、作業者が自動除じん機の内側に立ち入り、機械を動かしながら保守作業を行わなければならない場合は、作業者がはさまれる危険が生じないよう、次のような措置を講じる。
[1] バケットが駆動軸に接近したことを検知して機械の運転が一旦停止する運転モードを設ける。この場合、このモードでは機械は低速で動作するようにし、機械の再起動は、作業者がいったん、危険箇所から立ち退かないと行えないようにする。
[2] 危険を感じた作業者が機械を停止することができるように作業箇所に非常停止スイッチを設置する。
2 作業手順書を作成し、作業者に安全衛生教育を実施すること
自動除じん機の保守作業を安全に行うことができる方法を検討して作業手順書を作成し、これを基に作業者に安全衛生教育を実施する。
【業種】
機械器具設置工業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)
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