建設業の労災事例

ダムの取水ゲートの点検中、ダイバーが溺死

   

【労災概要】

この災害は、ダム内に堆積した土砂等の浚渫工事で、開かなくなった取水ゲートをダイバーが潜水して点検しているときに発生したものである。

災害発生当日は、浚渫工事の準備として、取水ゲートを開放し、ダム内の水を放出する作業が予定されていた。朝、現場に集合した3次下請のZ社の作業者A、Bの2人は、前日までに元請から指示されたとおり、取水ゲートを徐々に開放したが、15cm程開放したところでそれ以上ゲートが開かなくなったので、ゲートをいったん閉めて、Aがフーカー式潜水器を着用して潜水したところ、ゲートの周りにゴミが詰まっていた。Aは潜水しながらゴミを取り除き、午前中の作業を終えた。午後になり、ゲートを開放しダム内の水を放出する作業を再開したが、今度はゲートが30cm程開放したところでそれ以上開かなくなった。

そこで、Aがゲートの状況を点検するためゲートを開放したままで潜水し、点検していたところ、地上でAへの送気とゲートの開閉操作をしていたBと水中のAとの連絡が取れなくなった。このときAへの送気量も減ったことから、Bは元請の担当者に連絡したが、その後、駆けつけた別のダイバーが、ゲート付近でマスクが外れ溺死しているAを発見した。

Aは単独で潜水していたため、Aが溺死した状況は不明であるが、Aの潜水服にゲートと擦れた跡があったことから、Aが点検作業中にゲートに詰まっていた木の枝等のゴミがゲートから外れ、急に水が流れ出したため、Aは、水流にのみ込まれてゲートに激突し、その際、マスクが外れるとともに水流で脱出できなくなったものと推測された。Aは、安全に潜降・浮上するためのさがり綱を使用していなかった。

なお、当日、当該現場で作業していたのはZ社のA、Bの2人のみであって、元請等からの現場責任者は、不在であった。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 取水ゲートを半開きのままで潜水したこと

ゲートが一部開いた状態で潜水したため、ゲート付近に堆積していた土砂等の一部がゲートから流れ出して急に水の流れが生じ、この流れにのみ込まれたAがコンクリート製のゲートに激突し脱出できなくなった。

2 安全に昇降するためのさがり綱を使用していなかったこと

さがり綱を使用していなかったため、水流に巻き込まれ、マスクが外れる等の異常が発生した際に浮上することができなかった。

3 単独で潜水作業を行ったこと

Aは単独で潜水作業を行っていたため、作業中に異常があっても、即座にAを救出することができなかった。

4 作業および作業者に対する管理が十分に行われていなかったこと

当該作業は、3次下請の作業者2人のみで行われ、現場には元請等の現場責任者が不在で、当該作業に対する安全な作業方法等についての指示、指導が実施されていなかった。

【対策】

同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 取水ゲートを開放した状態で潜水作業をしないこと

取水ゲートを一部でも開放した状態では、激しい水流が生じるため、潜水作業をしないようにする。やむを得ず取水ゲートを開放して潜水作業をしなければならない場合には、潜水作業者の体をベルトで固定する等、水流にのみ込まれないような措置を講じる必要がある。

2 潜水作業者にさがり綱を使用させること

潜水作業では、安全に潜降・浮上するためのさがり綱を現場に用意するとともに、潜水作業者にさがり綱を使用させる必要がある。

3 潜水作業では補助ダイバーを配置しておくこと

潜水作業では潜水中の作業者に異常事態が発生した場合に、すぐに対応できるように、補助ダイバーを配置するようにする。

4 作業および作業者に対する管理を徹底すること

工事の実施に当たっては、元請等の現場責任者を中心に、作業の内容および作業方法等について十分な打合せを行うとともに、現場責任者は現場に常駐し、工事を作業者まかせにしないようにする。

【業種】

その他の土木工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 - 函館の建設業, 旭川の建設業, 札幌の建設業 , , , , , , , , , , , , ,

小型移動式クレーンが転倒し、作業者がジブに押されて墜落

      2023/01/12

【労災概要】

この災害は、桟橋上に設置した小型移動式クレーンで足場用単管の束を4m下の台船に下ろそうとしたときに発生した。

災害発生当日、港湾工事を行うため、桟橋に停泊している台船上で単管足場の組立て作業を行っていた。桟橋から台船への足場部材の揚重作業は、桟橋上に設置した小型移動式クレーン(つり上げ荷重2.32t、4本のアウトリガーを有するクローラクレーンで、通称「カニクレーン」と呼ばれるもの)で行い、作業者A~Cの3人が作業を担当した。

午前中は、Bが移動式クレーンを運転し、AとCが玉掛けを担当して足場部材を3回に分けて台船に下ろした。昼食後に行われた4回目の揚重作業は、Aが1人で行うことになり、単管18本(重量290kg)の束を玉掛けした後、移動式クレーンを運転して、つり荷を台船の真上の位置に持って行くためジブを旋回および起伏したところ、つり荷が桟橋上に置かれた資材カゴに引っ掛かった。そこで、Aは移動式クレーンの運転を停止し、移動式クレーンの傍らの運転位置を離れて資材カゴからつり荷を外そうとしたときに、移動式クレーンが横転したため、Aはジブに押されて桟橋から台船上に墜落した。

移動式クレーンが横転したとき、アウトリガーの張り出し状態と作業半径から定格荷重は160kgであったが、つり荷は290kgと過荷重の状態であった。また、設置場所が狭かったため、左右のアウトリガーの張り出し状態が異なっていた。なお、この移動式クレーンのアウトリガーは4隅に設けられていて、張り出し方向と張り出し幅をそれぞれ3段階で調整できるようなっていた。

さらに、Aは玉掛け技能講習を修了していたが、小型移動式クレーンを運転するための資格(移動式クレーン運転士免許又は小型移動式クレーン運転技能講習修了)は持っていなかった。

【原因】

この災害の原因として、次のようなことが考えられる。

1 つり荷を移動中に過荷重になったこと

移動式クレーンが横転したときのつり荷の重量は290kgであったが、アウトリガーの張り出し状態と作業半径から定格荷重は160kgであり、過荷重となっていた。さらに、アウトリガーの張り出し状態が左右で異なっていたため、横転しやすくなっていた。

2 資格がない者に移動式クレーンを運転させたこと

小型移動式クレーンを運転するための資格の有無を確認しないまま、資格がない者に小型移動式クレーンを運転させた。

3 1人作業であったこと

つり荷を玉掛けし、周囲の状態を確認しながら移動式クレーンを運転する作業を1人の作業者に行わせていた。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 移動式クレーンの定格荷重を超える荷をつり上げないこと

移動式クレーンを用いて作業を行うときは、作業計画、移動式クレーンの設置場所とその周囲の状況から定格荷重をあらかじめ確認しておき、定格荷重を超える荷をつり上げないようにする。さらに、アウトリガーの張り出しを左右同じにし、移動式クレーンを安定した状態で使用することも重要である。

2 移動式クレーンは資格のある者に運転させること

移動式クレーンは、その能力(つり上げ荷重)に応じた資格を有する作業者に運転させなければならない。つり上げ荷重が1t以上5t未満の小型移動式クレーンについては、移動式クレーン運転士免許を受けた者または小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者に運転させる必要がある。

3 移動式クレーン作業は2人以上の作業者に行わせること

移動式クレーンによる荷の移動作業では、移動式クレーンを運転する作業者1人、荷の玉掛けとつり荷の確認を行う作業者1人のほか、必要に応じ監視人等を配置し、周囲の安全にも注意しながら作業を行わせる。

【業種】

その他の建設業

【被害者数】

休業者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

 

 - 函館の建設業, 旭川の建設業, 札幌の建設業 , , , , , , , , , , , ,