建設業の労災事例

鋼材切断ラインのピット内で搬送用台車とピット枠との間にはさまれ死亡

      2023/01/17

【労災概要】

この災害は、製鉄所の鋼材切断ライン下部に設けられた端材回収用台車が走行するピット内において、電気配線の交換敷設状況を確認するためにピット内に立ち入った作業者が、走行してきた台車とピットの枠にはさまれたものである。

この鋼材切断ラインは、鋼材が3組のレール上を移動し、トーチで所定の長さに切断するもので、その際に切り落とされた端材はライン下部(地下)に設けられたピット内を往復する台車で回収される。1組のレール上には台車が3両(自重:1両約3t)あり、それぞれがエンドレス状の1本のワイヤーに繋がれ、このワイヤーを電動機で巻き取ることでピット内を往復走行する。台車の軌道は平坦な直線である。

災害発生当日、製鉄所から電気配線の交換敷設工事を請け負ったZ社では、職長Aおよび作業者B~Dの4人で作業を開始した。工事終了後、Aは、B~Dの3人に作業現場周辺の後片づけを指示するとともに、A自身はピット内に敷設し直した電気配線が台車の走行の障害とならないか確認するためピット内に立ち入った。B~DはAがピット内に立ち入っていることを知らず、工事のため所定の待機位置から移動していた台車を所定の位置に戻してもらうよう製鉄所の設備保全担当者Eに連絡して台車の走行操作をしたところ、直後に悲鳴が聞こえ、走行してきた台車とピットの枠との間にAがはさまれていた。Aは病院に搬送されたが、既に死亡していた。

Aが立ち入ったピットの幅は、底部が90cm、上部が120cmで、台車の幅は下部が85cm、上部が100cmであった。通常ピット内を作業者が通行することはなく、保全等のためにピット内に下りる階段が付設されていたが、階段の下り口には開閉式の柵等は設けられていなかった。なお、本設備には、台車の起動前にそれを周辺作業者に伝える警告灯や警報装置は設置されていなかった。

【原因】

この災害の原因として次のようなことが考えられる。

1 ピット内に下りる階段の下り口に開閉式の柵等が設けられていなかったこと

ピット内は台車との隙間がほとんどなく、台車が走行中に作業者がピット内に立ち入るとはさまれる危険があるにもかかわらず、ピット内に下りる階段の下り口に開閉式の柵等、作業者の立ち入りを防止する設備がなかった。

2 台車の起動を周辺作業者に知らせる警告灯や警報装置が設置されていなかったこと

3 ピット内に立ち入ることを他の作業者に連絡していなかったこと

Aはピット内に立ち入ることを他の作業者に連絡せず、かつ、台車の操作盤にも表示していなかった。

【対策】

同種災害の防止のために次のような方策が考えられる。

1 作業者がピット内に立ち入ることを防止するための開閉式の柵等を設置すること

作業者がはさまれる危険があるピット内への立ち入りを防止するため、ピット内に下りる階段の下り口に開閉式の柵等のガードを設置する。さらに、このガードは、開放すると台車の運転を停止し、起動阻止が実行されるインターロックを構成するものとする。

2 台車の起動を周辺作業者に知らせる警告灯やサイレン等の警報装置を設置すること

台車の起動を知らせる警報は、台車の発進に気づいたピット内の作業者が退避できる十分な時間的余裕をもって発せられる必要がある。

3 ピット内に立ち入る場合には、台車の運転操作者に連絡すること

保全作業等でピット内に立ち入る必要があるときは、台車の運転操作者にその旨、連絡するとともに、周辺の作業者にも連絡する。また、「ピット内立入り中」の表示を台車の操作盤とピット内に下りる階段の下り口に表示することも重要である。

【業種】

電気通信工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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化学プラントの配管をガス溶断中、配管内のトルエンに引火し火傷

   

【労災概要】

この災害は、既設の化学プラントを解体する工事において、プラントの配管をガス溶断する作業中に発生したものでる。

災害発生当日、Y社の化学プラントの解体工事を請け負ったZ社の作業者A~Cの3人は、朝から高所作業車およびローリングタワーを使用してプラントの配管をガス溶断で解体する作業を行っていた。

午前11時頃、AとBは高所作業車の上に、Cはローリングタワーの上に、それぞれ上ってトルエンが貯蔵されていたタンクにつながっている2本の配管をガス溶断により切断し始めたところ、突然「ドーン」という音とともに、配管の下部にあるピットから炎が立ち上り、上方で作業を行っていた3人は火傷を負った。

この工事を開始する前には、高圧水による配管等の洗浄を行っていたものの、配管内のトルエンの残留を測定により確認してはいなかった。また、工事に先立ち配管の端部に閉止板を設置する等の措置を講じていなかったため、配管内に残留していたトルエンの蒸気がピット内に流れ出て滞留し、これにガス溶断の火花が落下して着火したものである。

Z社では、引火性が高いトルエンが残留しているおそれがある配管を安全にガス溶断するための作業方法の検討を事前に行っておらず、作業者に対する安全衛生教育も実施していなかった。

また、Y社は解体工事の発注に際し、Z社にタンクに貯蔵していたトルエンの危険性・有害性等の情報を提供していなかった。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 配管内にトルエンが残留していたこと

解体工事の前に高圧水により配管やタンクの洗浄を行ってはいたが、十分ではなかったため、残留していたトルエンの蒸気がピット内に流れ出て、これに落下したガス溶断の火花が着火した。

また、Z社では、洗浄した後に、トルエンの残留を測定によって確認すること、配管の端部に閉止板を設置することなどの措置を講じていなかった。

2 化学プラントの解体工事の注文者のY社がタンクに貯蔵していたトルエンの危険性・有害性等の情報を請負人のZ社に提供していなかったこと

3 安全な作業方法の検討や作業者に対する安全衛生教育を行っていなかったこと

危険物であるトルエンが残留しているおそれのある配管などをガス溶断するにあたって安全な作業方法の検討や作業者に対する安全衛生教育を実施していなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業開始前に残留物の確認を行うこと  トルエン等の危険物が残留しているおそれのある配管をガス溶断する場合には、あらかじめ高圧水などにより内部を十分洗浄するとともに、測定を行って残留物がないことを確認するとともに、配管の端部に閉止板を設置する。

2 化学プラントの解体等の作業の注文者は、当該設備の中の化学物質の危険性・有害性や取扱上の注意事項等の情報を請負人に提供すること

3 安全な作業方法を検討し、作業者に安全衛生教育を実施すること

危険な設備の解体作業については、事前に想定される危険有害性の検討を行って安全な作業方法を決定し、作業者に対し安全衛生教育を行うことが必要である。

【業種】

機会器具設置工事業

【被害者数】

休業者:2人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

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