建設業の労災事例

ホイールクレーンの過巻防止装置が誤作動して巻上が急停止し、つり荷が落下

   

【労災発生状況】

本災害は、鉄塔の組み立て作業において、ホイールクレーンにより鉄塔部材を最高速度にて巻き上げていたところ、突然、過巻防止装置の誤作動により巻上げが急停止し、その反動でジブが折れ曲がり、つり荷の鉄塔部材が落下したものである。

災害が発生した工事は、既設鉄塔の移設を行うもので、既設鉄塔4基の撤去、鉄塔5基の新設、高圧電線の移設が主な工事の内容である。

災害当日は、朝から9名の作業者により3基目の鉄塔(高さ41m)の組立作業に取りかかっていた。高さ28mの部分まで組立てが終了した後、その上に据えつける箱型の鉄塔部材(高さ5.9m、重量1.2t)を地上からホイールクレーンによりつり上げ、最高速度で巻き上げた。つり荷が23mの高さに巻き上がったとき、突然、過巻防止装置が作動して巻上が急停止した。その反動により、主ジブ及び補ジブが大きく上下に揺れ、主ジブの先端部分が折れ曲がり、つり荷の鉄塔部材が補ジブとともに地面に落下した。なお、地上にいた作業者は、鉄塔部材をつり上げる際に、退避していたため、けがはなかった。

災害が発生したホイールクレーンは、ジブ先端に付いて過巻防止装置の配線に接触不良があることが分かった。災害発生時、ホイールクレーンは重量のあるつり荷を最高速度で巻き上げていたため、ジブ等に大きな振動が起き、ジブ先端の配線に接触不良が生じて断線状態となったことにより、過巻防止装置が作動したものである。

災害が発生したホイールクレーンについて、過巻防止装置の誤動作による巻上の急停止は、本工事中に2回発生していたが、いずれの場合も、その後正常に使用できたため、メーカーへの問合せ、点検等による原因究明を行っていなかった。また、異常発生について、工事日報等に記載されず、現場責任者への報告もされていなかった。

なお、本工事の作業者に対する安全衛生教育は、クレーンによる玉掛け作業と高所作業についてのみ実施され、機械設備の保守点検や異常発生時の措置等に関することは教育されていなかった。

【原因】

この災害の発生原因は、ホイールクレーンに生じた過巻防止装置の配線の接触不良による誤作動について、直ちに原因究明や修理を行うことなく、そのまま放置し使用し続けたことであるが、これらが行われなかった要因として次のことが考えられる。

1 誤作動の発生について、現場責任者に報告されなかったこと

過去に発生した過巻防止装置の誤作動について、工事日報に記載されず、現場責任者への報告もされなかった。そのため、現場責任者はホイールクレーンの異常について認識していなかった。

2 安全衛生教育の内容が不十分であったこと

作業者に対する安全衛生教育は実施されていたが、機械設備の保守点検や異常発生時の措置等に関することは教育されていなかった。そのため、ホイールクレーンの異常が放置された。

【対策】

同種災害の防止のためには、機械設備に発生した異常についてはメーカーへの問合せ、点検等を行って原因究明を行い、修理改善の後、使用することが必要であり、このためには次のような対策を徹底しなければならない。なお、工期の都合上、使用を中止できないものについては、直ちに代替の機材を手配することも重要である。

1 機械設備に発生した異常については、直ちに現場責任者に報告すること

機械設備に発生したい異常については、些細なものであっても必ず現場責任者に報告する。さらに、工事日報等に記載し、関係者全員に周知させることも重要である。現場責任者は報告に基づいて点検、修理等の対策をとらなければならない。

2 作業の内容に応じた安全衛生教育を実施すること

作業者には、作業や工事の内容に応じた必要な事項を全て教育し、安全な作業方法の周知徹底する。特に非定常作業や異常発生時の対応についても教育しておくことが必要である。

【業種】

電気通信工事業

【被害者数】

なし

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101031より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

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曲がった敷鉄板をアース・オーガーで踏みつけて直そうとしたところ、アース・オーガー本体が転倒

   

【労災発生状況】

本災害はビル建築工事現場において、曲がった敷鉄板上をアース・オーガーが前進したとき、同時にブームが起き上がり、アース・オーガー本体が後方に転倒したものである。

アース・オーガーで工事現場構内を移動中、敷鉄板の角をクローラで踏み、敷鉄板がめくれあがってしまった。このため運転者は、角が曲がった敷鉄板をアース・オーガーのクローラで踏みつけて直そうと、運転席のドアを開放し、身を乗り出して前後の位置を確認しながら、前進しようとした。走行レバーを操作した際、並んでいた主巻きレバーに触れたため、主巻きワイヤーがケリーバを巻き上げ、フロントフレームが押し上げられてブームが起き上がり、アース・オーガー本体が後方に転倒した。このとき、運転者は運転席から地上へ投げ出され、負傷した。

アース・オーガーは、元々あった過巻防止装置が取り外されたまま使用されていた。また、ブームの起こし過ぎによる後方への転倒を防止するための安全装置としてブーム起伏停止装置が取り付けられ、ブームが起こしすぎの限界角度に達したとき警報を発し、自動的にブームが停止するようになっていたが、災害発生時には故障していた。この故障は、毎日行われる作業開始前の点検でも見つかっていなかった。

なお、災害が発生したビル建築工事では、工事計画書および作業手順書は整備されていたが、敷鉄板が曲がってしまったとき等の異常発生時の措置や作業方法については盛り込まれておらず、安全衛生教育も不十分であった。

【原因】

この災害の原因として、次のようなことが考えられる。

1 過巻防止装置が取り外され、かつ、ブーム起伏停止装置が故障していたこと

過巻防止装置が取り外され、かつ、ブーム起伏停止装置が故障していたため、ブームが起伏角度限界を超えてしまった。そのため、アース・オーガー本体が転倒した。

2 アース・オーガーの運転者が無理な運転姿勢をとり、主巻きレバーに誤って触れてしまったこと

運転者は、走行レバーを操作した際、無理な運転姿勢をとったため並んでいた主巻きレバーに誤って触れてしまい、このためブームが後方に傾き、本体が転倒した。

3 アース・オーガーを本来の目的外で使用したこと

敷鉄板の曲がりを直す作業をどのように行うのか、事前の想定がなく、作業手順書でも触れられていなかったため、安易にアース・オーガーを目的外で使用した。

【対策】

同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業開始前に、ブーム起伏停止装置などの安全装置等の機能について点検を行い異常があれば修理等を行うこと

作業開始前の点検は、ブーム起伏停止装置などの安全装置を作動させて、確実に作動することを確認する。点検で異常が見つかった場合は、直ちに修理を行うか代替機材を使用する。

2 作業計画書や安全作業手順書を作成し、それに基づき安全衛生教育を徹底すること

敷鉄板の曲がりを直すような作業をアース・オーガーなどでは安易に行わず、安全な方法で行うこと。また、そのような作業をあらかじめ想定し、必要な対策を盛り込んだ作業手順書を整備し、関係者全員に教育し周知徹底させることが重要である。

3 運転者の安全運転に関する能力の向上に努めること

不安全な操作による建設機械災害を防止するために、危険予知活動への積極的な取り組みや実効ある教育訓練の実施に努める。特に、アース・オーガー等建設機械の運転者に対しては、運転操作に対する慣れなどから、危険に対する感覚が希薄になることがあるので、定期的に安全教育を実施し、誤操作の防止など安全運転について教育を繰り返すことも重要である。

【業種】

鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業

【被害者数】

休業者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101032より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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