建設業の労災事例

ホイールクレーンでつり上げた荷を下ろすため、ジブを倒したところ、クレーンが転倒

   

【労災発生状況】

この災害は、発注会社の工場内でのコジェネレーション施設の新設工事のうち、施設の防音壁を建築する工事において、ホイールクレーンを用いて防音パネルを運搬中にクレーンが転倒したものである。

災害発生当日は、あらかじめ立てられた支柱に防音パネルを取り付ける作業が行われた。1スパン目と2スパン目の取り付け作業が終了し、3スパン目に取りかかる際、3スパン目の支柱間隔が2スパン目までより広かったために、別の場所に積んであった防音パネルをホイールクレーンで作業エリアへ搬入する必要が生じた。

玉掛け者Aは、防音パネル9枚の束(重量1,134kg)を玉掛けし、巻上げを合図した。ホイールクレーンの運転士Bは、地切りを行う際に定格荷重の80%を超過している警告音が鳴ったので、過負荷防止装置を解除した。その後、Bは、ジブを旋回し、徐々に巻き下げと、ジブを倒す操作を行いながら、Aが合図する場所へ近づけていったところ、突然、ホイールクレーンが転倒した。この災害による被災者はいなかった。

ホイールクレーンが転倒したとき、過負荷防止装置は解除されたままであり、そのため、つり荷の重量が定格荷重を超えても自動停止装置が働かない状態であった。

なお、災害が起きた工事現場では、作業者に対し、入構時の安全衛生教育は実施していなかった。

【原因】

この災害の発生原因として、次のようなことが考えられる。

1 クレーン運転士が過負荷防止装置を解除したまま、ジブを倒す操作を行ったこと

Bは、防音パネルを地切りした際、定格荷重の80%を超えた警告音がなったが、まだ安全につり上げられると判断し、過負荷防止装置を解除した。そのまま、クレーン操作を続け、ジブを倒したため、つり荷の重量が定格荷重を超えたが、自動停止機能が働かず、ホイールクレーンが転倒した。

2 入構時の安全衛生教育が実施されていなかったこと

【対策】

同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 移動式クレーンの操作中は、過負荷防止装置を解除させないこと

過負荷防止装置は、移動式クレーンの転倒を防止するために設置されている安全装置であり、作業中は過負荷防止装置を決して解除してはならない。また、過負荷防止装置が働いてクレーンが停止した際には、つり荷を小分けにする、ジブの作業半径を小さくする等の安全な作業方法で作業しなおすことを、普段からクレーン運転士に周知徹底することも重要である。

2 作業者に対する入構時の安全衛生教育を実施すること

新たに入構する作業者に対しては、従事する作業に関する安全衛生教育を行うこと。特に、クレーン運転士、玉掛け者等、クレーン作業に携わる者に対しては、

[1]クレーンの定格荷重を超える荷をつってはならいこと

[2]クレーン作業中は過負荷防止装置を解除してはならないこと等のクレーン災害防止のための安全教育を実施すること

が重要である。

【業種】

建築設備工事業

【被害者数】

なし

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101030より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

 

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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ホイールクレーンの過巻防止装置が誤作動して巻上が急停止し、つり荷が落下

   

【労災発生状況】

本災害は、鉄塔の組み立て作業において、ホイールクレーンにより鉄塔部材を最高速度にて巻き上げていたところ、突然、過巻防止装置の誤作動により巻上げが急停止し、その反動でジブが折れ曲がり、つり荷の鉄塔部材が落下したものである。

災害が発生した工事は、既設鉄塔の移設を行うもので、既設鉄塔4基の撤去、鉄塔5基の新設、高圧電線の移設が主な工事の内容である。

災害当日は、朝から9名の作業者により3基目の鉄塔(高さ41m)の組立作業に取りかかっていた。高さ28mの部分まで組立てが終了した後、その上に据えつける箱型の鉄塔部材(高さ5.9m、重量1.2t)を地上からホイールクレーンによりつり上げ、最高速度で巻き上げた。つり荷が23mの高さに巻き上がったとき、突然、過巻防止装置が作動して巻上が急停止した。その反動により、主ジブ及び補ジブが大きく上下に揺れ、主ジブの先端部分が折れ曲がり、つり荷の鉄塔部材が補ジブとともに地面に落下した。なお、地上にいた作業者は、鉄塔部材をつり上げる際に、退避していたため、けがはなかった。

災害が発生したホイールクレーンは、ジブ先端に付いて過巻防止装置の配線に接触不良があることが分かった。災害発生時、ホイールクレーンは重量のあるつり荷を最高速度で巻き上げていたため、ジブ等に大きな振動が起き、ジブ先端の配線に接触不良が生じて断線状態となったことにより、過巻防止装置が作動したものである。

災害が発生したホイールクレーンについて、過巻防止装置の誤動作による巻上の急停止は、本工事中に2回発生していたが、いずれの場合も、その後正常に使用できたため、メーカーへの問合せ、点検等による原因究明を行っていなかった。また、異常発生について、工事日報等に記載されず、現場責任者への報告もされていなかった。

なお、本工事の作業者に対する安全衛生教育は、クレーンによる玉掛け作業と高所作業についてのみ実施され、機械設備の保守点検や異常発生時の措置等に関することは教育されていなかった。

【原因】

この災害の発生原因は、ホイールクレーンに生じた過巻防止装置の配線の接触不良による誤作動について、直ちに原因究明や修理を行うことなく、そのまま放置し使用し続けたことであるが、これらが行われなかった要因として次のことが考えられる。

1 誤作動の発生について、現場責任者に報告されなかったこと

過去に発生した過巻防止装置の誤作動について、工事日報に記載されず、現場責任者への報告もされなかった。そのため、現場責任者はホイールクレーンの異常について認識していなかった。

2 安全衛生教育の内容が不十分であったこと

作業者に対する安全衛生教育は実施されていたが、機械設備の保守点検や異常発生時の措置等に関することは教育されていなかった。そのため、ホイールクレーンの異常が放置された。

【対策】

同種災害の防止のためには、機械設備に発生した異常についてはメーカーへの問合せ、点検等を行って原因究明を行い、修理改善の後、使用することが必要であり、このためには次のような対策を徹底しなければならない。なお、工期の都合上、使用を中止できないものについては、直ちに代替の機材を手配することも重要である。

1 機械設備に発生した異常については、直ちに現場責任者に報告すること

機械設備に発生したい異常については、些細なものであっても必ず現場責任者に報告する。さらに、工事日報等に記載し、関係者全員に周知させることも重要である。現場責任者は報告に基づいて点検、修理等の対策をとらなければならない。

2 作業の内容に応じた安全衛生教育を実施すること

作業者には、作業や工事の内容に応じた必要な事項を全て教育し、安全な作業方法の周知徹底する。特に非定常作業や異常発生時の対応についても教育しておくことが必要である。

【業種】

電気通信工事業

【被害者数】

なし

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101031より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

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