建設業の労災事例

簡易水道導水管敷設工事において、練炭養生中の取水ボックス内に入った作業者が一酸化炭素中毒

   

【発生状況】

この災害は、簡易水道導水管敷設工事において、練炭養生中の取水ボックス内に入り、一酸化炭素中毒により死亡したものである。

工事の内容は、コンクリート製取水ボックスおよび周囲にネットフェンス・門扉を築造し、直径150mmの鋳鉄製の導水管を敷設するものである。取水ボックスは、幅が1.5m、長手方向が3.5m、深さが2mのコンクリート造りのものであり、上部は開放されており、完成後にはFRP製の蓋が取り付けられるものである。

災害が発生した日、取水ボックス底部のコンクリート打設を行った後、雪が降る天候であったので、打設したコンクリートを養生するため、取水ボックス上面をビニルシートで覆い、取水ボックス内に練炭コンロをつり下げ(図)、この日の作業終え事務所に戻った。

被災者は、帰宅してから、午後8時頃に家族に「現場の様子を見てくる」と言い残して自宅を出たが、深夜になっても帰宅しないので、携帯電話により呼び出したが連絡が取れなかった。そして翌朝、取水ボックス内で一酸化炭素中毒により仰向けに倒れて死亡している被災者が発見された。

【原因】

この災害は、簡易水道導水管敷設工事において、練炭養生中の取水ボックス内に入り、一酸化炭素中毒により死亡したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。

1 打設したコンクリートの養生のため、使用していた練炭の燃焼に伴い発生した一酸化炭素がビニルシートで覆われた取水ボックス内に高濃度で滞留していたものと推定されること。

2 コンクリートの練炭養生の際に発生する一酸化炭素の有害性および立入禁止についての表示がされていなかったため、有害性に対する注意喚起がされなかったこと。

3 帰宅後、被災者は、一人で現場に赴き、取水ボックス内に入り、滞留していた一酸化炭素を吸入して一酸化炭素中毒に罹ったものと考えられること。

4 一酸化炭素の発生により健康障害が生じるおそれのある練炭養生を行うに際して、養生方法、養生中の表示、養生内部に立ち入る際の換気方法、保護具の使用などの作業手順が作成されていなかったこと。

5 被災者は、練炭による一酸化炭素中毒の有害性に関する教育を受けていなかったため、保護具を着用することなく安易に練炭養生中の取水ボックス内に立ち入ったものと推定されること。

【対策】

この災害は、練炭養生中の取水ボックス内に入り、一酸化炭素中毒により死亡したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 練炭養生の作業を行うときには、一酸化炭素中毒予防に関する知識を有する者の中から作業責任者を選任し、その者に作業方法の決定、換気の実施など適切な作業指揮を行わせること。

2 養生場所に入る前に十分な換気を行い、換気の効果を一酸化炭素ガス濃度計で確認すること。

3 換気が十分に行われていることが確認されている場合を除き、作業環境中の一酸化炭素濃度及び酸素濃度等を考慮し、有効な呼吸用保護具を使用すること。

4 練炭養生に係る換気の実施、呼吸用保護具の使用、一酸化炭素濃度および酸素濃度の測定、作業の手順、緊急時の対応などの内容を記載した作業手順書作成すること。

5 練炭養生の有害性およびその対処方法などについての教育の実施、作業場所の一酸化炭素濃度が急激に上昇するなどの緊急時に備え、避難や連絡体制などの訓練を行うこと。

6 元請は、下請に対して、作業手順書作成の指導、労働衛生教育の実施に対する資料の提供など技術的支援を行うこと。

 

【業種】

上下水道工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100747より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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無水フタル酸製造設備定修工事において、中毒症状を発症

   

【発生状況】

この災害は、無水フタル酸の製造設備の定修工事において、フレーカーの清掃作業中に、無水フタル酸による中毒症状を起こしたものである。

定修工事を行うため、災害が発生した3日前に無水フタル酸の製造工程にある無水フタル酸をフレーク状にするフレーカーの運転を停止した。

このフレーカーは2基設置されており、その大きさは直径が2m、長さが3mの円筒状タンクが横置きに据え付けられている。

災害が発生した日、元請の作業員2名と下請の作業員4名により、2基のフレーカー内の清掃作業を分担して開始した。

午前中に、フレーカー内部にこびり付いた無水フタル酸をはつる作業を始めた。この作業に就いた作業員は、つなぎ状の作業衣、ゴーグル、頭巾、ヘルメット、安全靴、軍手、簡易防じんマスクを着用していた。

昼休みを終えて、午前中に引き続きフレーカー内部で、はつり作業を再開した。午後の作業を開始してからまもなく、作業員の一人が体調の不調を訴え、嘔吐し自力で立てない状態になったので、同僚が工場内の健康管理室に運び込んだ。健康管理室から、直ちに、病院へ搬送し診察を受けたところ、急性虚脱症と診断された。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 フレーカーにこびり付いた無水フタル酸をはつる際に発生した粉じんにばく露したこと。

2 粉じん発生に対して、軍手、簡易防じんマスクなどを着用するなど保護具の選定および着用の方法が適切でなかった。このため、はつり作業で発生した粉じんを吸入または、皮膚接触したものと考えられること。

3 換気設備を設けるなど、はつり作業で発生する粉じんを除去する対策が行われていなかったこと。

4 無水フタル酸の有害性に対する作業方法の事前の検討が不十分であったこと。

5 作業員が、無水フタル酸の有害性に関する知識をもっていなかったこと。

6 作業方法の事前検討、作業員に対する労働衛生教育を実施するなどの労働衛生管理体制が機能していなかったこと。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 通風が不十分なタンク内にこびり付いた無水フタル酸をはつるときは、従来から使用していたゴーグルなどの保護具に加えて、ゴム手袋などの不浸透性の手袋、前掛けの使用など無水フタル酸の粉じんが皮膚に接触しないような装備とすること。

2 防じんマスクを使用させるに当たっては、面体の接顔部から空気が漏れないことを確認させるなど着用方法、取扱方法などについて教育・訓練を行うこと。

3 はつり場所に放水したり、排気装置などによる換気を行ったりすることなどにより、はつり作業で発生する粉じんがタンク内に浮遊しないようにすること。

4 事前に作業方法および手順を検討し、無水フタル酸にばく露することによる健康障害を防止すること。

5 作業員に対し、無水フタル酸の有害性および人体に与える健康影響およびその防止対策などについて労働衛生教育を実施すること。

6 作業方法の事前検討の実施などが確実に行われる労働衛生管理体制を確立すること。

 

【業種】

機械器具設置工事業

【被害者数】

休業者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100753より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

 

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