建設業の労災事例

施設で浴室のブロック積み作業中、足場から転落

   

【発生状況】

この災害は、施設の建築工事中に発生したものである。

被災者の所属する会社は主に鉄筋・鉄骨造建築工事を行っているが、外装工事が終了後、設備工事、内装工事を行っていた。

災害発生当日、会社から6名の作業者が現場に赴き、被災者が職長的立場で3名の作業者を指揮して朝から1階浴室(13m×5m)と脱衣所・ホールとの仕切りのブロック積み作業に着手した。

積むブロックは一般的なブロック(長さ39cm、幅15cm、高さ19cm)で、当日の作業は縦方向に40cm、水平方向に60cm間隔で配筋された鉄筋(直径13mm)を通しながら床から3mの高さにある天井までブロックを積み、ブロック内にはコンクリートを、つなぎ部分にはモルタルを充填するものであった。

作業は、朝8時頃から開始され、まず出入口の北側と東側部分の積み上げを行い、続いて西側と南側部分の積み上げを行っていたが、午前10時の休憩が終わったときには1.5m程度になったことから、北側と東側部分の積み上げの時に使用した枠組み足場(高さ1.8m)1段を西側と南側部分に移設し、被災者と作業者1名が足場上でブロック積みを、他の作業者2名がコンクリートおよびモルタル作りの作業を行っていた。

午後4時5分頃、被災者は足場上で18段目のブロックを積んでいたが、天井のH鋼に溶接していたブロック補強用の鉄筋(長さ50cm)の位置がずれていて、ブロックの中を通せなかったので、これを手前に曲げるため引っ張ったところ、溶接部分が外れ、その勢いで被災者は後ろから1.8m下のコンクリート床に転落した。

その後、救急車で病院に移送したが、9日後に死亡した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 枠組み足場に手すりがなかったこと

被災者が使用していた枠組み足場は、高さが1.8m、幅が75cmのもので鋼製の作業床が足場の最頂部に掛けられていたが、周囲に手すりは設置されていなかった。

そのため、被災者が天井に取り付けられていた鉄筋を曲げようとした時の抜けた反動で、足場の上から転落したものである。

2 保護帽のあごひもを確実に締めていなかったこと

被災者は保護帽を着用してブロック積みの作業をしていたが、あごひもを確実に締めていなかったため、転落途中で保護帽が頭部から脱落してしまい、保護帽としての機能を全く果たすことができなかった。

3 転落危険の意識がなかったこと

被災者は元々左官職人として30年以上の経験を有していて職長的立場にあったが、同種の作業において墜落・転落の経験がなかったことから、枠組み足場上での作業において手すりを設置すること、あるいは安全帯を使用すること等について特段の意識を持っていなかった。

4 作業要領について検討していなかったこと

この作業現場には、会社から2名の現場監督が来ていたが、主に下請業者(6社、計15名)の作業について指揮する業務を行っており、自社の作業者が行う作業については経験の長い被災者に任せたままで作業要領、安全措置等についてあらかじめ検討し、指示することを行っていなかった。

また、作業の実施状況について確認し、必要な指示を行うこともなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 転落危険のある作業床には手すりの設置等を行うこと

高さが2m以上の作業床の端等で墜落の危険のある個所で作業を行わせる場合には、囲い、手すり等の設置が法令で義務づけられているが、それ以下の高さのところでも転落等の場合に致命的な傷害を受けることが少なくないので、1段の枠組み足場(高さ1.8m)であっても手すりの設置、手すりの設置が困難な場合には安全帯の確実な使用等を徹底する。(安衛則第519条関連)

なお、この災害の場合には、枠組み足場の端から約2mの離れたところからは浴槽(深さ170cm)となっているため、転落した場合には3mを超える距離となる危険もあったので、手すりの設置は必ず行うことが望ましい。

2 作業計画を作成のうえ作業を行わせること

比較的短時間で終了する作業については、作業計画を定めることなく経験に基づいて作業を行うことが少なくないが、従事する作業者の資格・経験、周囲の作業環境、使用する枠組み足場、保護具、電動工具等について検討し、安全な作業計画を作成するとともに、作業開始前に関係作業者に徹底する。

3 安全教育を実施すること

作業経験の長い作業者に対しても墜落危険とその防止対策、使用する機器材の安全性の点検要領、適切な保護具の選択と着用方法等について定期あるいは随時に労働災害事例等を活用し、安全教育を実施するとともに、作業開始前に行うKY活動などの際に具体的な検討、指示を行う。

4 安全管理管理を実施すること

経営トップあるいは現場の責任者等は、作業内容・手順および墜落防止措置等の各種の安全措置について確実な指示を行うとともに、定期あるいは随時に作業場所を巡視し、指示事項の履行状況の確認と必要な指示を行う。

 

【業種】

鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建設工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100803より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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体育館の建設中に7段枠組み足場上から墜落

   

【発生状況】

この災害は、高校の体育館の建設工事中に発生したものである。

この体育館は、鉄筋コンクリート造2階建のもので、屋根部分は円形状になっていて、工程としては屋根工事を行うために2階アリーナ全体に足場(屋根受け足場) が組み上げられていた。

被災者の所属する会社は、JV(共同企業体)の1次下請として足場の組立等の仕事を行っていた。

災害発生当日、職長以下6名が現場に到着し、午前8時からJVが行う現場全体の朝礼に参加し、その後、職長を中心にKY(危険予知)を実施し、午前8時20分頃から作業を開始した。

作業は、体育館(長さ約42m、幅約32m)内部の四囲に組み立てられた周囲足場の内側に、13列に組み立てられた足場最上部(枠組み足場7段:地上からの高さ12.2m)の隙間(2m)に養生用足場板を敷き詰め、その上に防網を取り付けて足場板に緊結するもので、被災者は職長ら3名で作業用親綱の設置、養生用足場板の運搬および緊結作業を行い、他の2名は主に防網の取り付け作業を分担した。

作業は順調に進んでいたが、午前10時頃からの休憩時間中(約15分)に職長と被災者が話をして、足場板の運搬を容易にするため、次の工程(2つの枠組み足場間の作業を1単位とした)で親綱を移設するときには、その設置位置を南側へ1スパン(1.85m)ずらすことにした。そのため、休憩後の作業においては北側と南側のスパンとの間には(2スパン分3.7m)親綱が張られていない状態となった。

午前11時45分頃、被災者らは、西側から8列目までの枠組み足場間の足場板の布設を終え、職長は1段下の足場上で作業を行っている2人の防網の取り付け作業状況を見るため右から6列目の枠組み足場のところで下をのぞいたときに、被災者が枠組み足場7段目の8列と9列との間のところから約12m下のコンクリート床に転落した。

なお、このときに、8列と9列との間に掛け渡した足場板1枚も落下していた。

その後、被災者は、救急車で病院に移送されたが、頭蓋骨折等のため間もなく死亡した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 墜落危険のある場所で墜落防止措置を行っていなかったこと

被災者が墜落直前に行っていた作業あるいは動作を目撃した者はいないが、被災者らが行っていた作業は7段(地上からの高さ12.2m)に組み上げた13列の枠組み足場の間に、足場板を並べて建設資材の落下防止と墜落防止措置を行うものであり、もともと枠組み足場の狭い通路上を、一定の場所に既に積まれていた養生用足場板を運搬し、枠組み足場間に掛け渡す危険な作業であった。

このような場所での作業であるのに、被災者が墜落したときには安全帯のロープを首に廻した状態であったことから、他の墜落防止措置を講じていないにもかかわらず、安全帯を使用していなかったものと推定される。

2 作業計画・手順が不明確であったこと

当日の朝礼で、JVの所長から確実に安全帯を使用するようにとの注意があり、また、その後に行ったKYにおいては親綱を張って安全帯を使用することが話し合われたが、安全帯の使用以外の墜落防止措置、例えば防網の設置等を含む具体的な作業方法・手順の検討は行われなかった。

特に、午前の休憩の折に、職長と被災者が作業性を考えて親綱の移設を決めているが、それに伴う危険性の増大等についての検討とそれに対する措置の検討は行われなかった。

3 作業主任者がその職務を履行しなかったこと

職長は、足場の組立等作業主任者でもあったが、自らも足場板の布設等の作業に従事していたため、配下の作業者の安全帯の使用状況の監視等の職務を履行していなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業計画を明確に定め徹底すること

高所に作業床等を設置する作業においては、その作業過程において墜落危険あるいは作業床材料の落下危険が大きいので、作業方法・作業手順を含む安全な作業計画を作成し、関係作業者に徹底する。また、作業途中で、親綱の位置の変更等を行う場合には、それに伴う危険とその対策について検討する。

なお、墜落防止措置については、親綱と安全帯の使用に依存することなく、防網の設置等を含む計画を検討する。

2 高所作業における墜落防止措置を確実に実施すること

高さが2m以上の作業床の端、開口部等で墜落危険がある場合には、囲い、手すり、覆い等を設置する。(安衛則第519条関連)

なお、囲い等の設置が著しく困難なときには、防網を張り、労働者に安全帯を使用させる。

3 作業主任者の職務を励行すること

高さが5m以上の構造の足場の組立等作業主任者は、次の職務を確実に励行する。(安衛則第566条関連)

(1) 材料の欠点の有無を点検し、不良品を取り除くこと

(2) 器具、工具、安全帯及び保護帽の機能を点検し、不良品を取り除くこと

(3) 作業の方法および労働者の配置を決定し、作業の進行状況を監視すること

(4) 安全帯および保護帽の使用状況を監視すること

4 安全教育等の安全管理を実施すること

高所作業に従事する労働者については、あらかじめ墜落危険及びその防止対策について十分な教育を実施するとともに、慣れにより安全対策を省略することのないよう随時に追加の教育を実施する。

また、経営トップ等の管理者は、定期あるいは随時に作業場所を巡視し、安全措置の実施状況、作業計画の順守状況の確認と必要な指示を行う。

なお、JV(共同企業体)など特定元方事業者(統括安全衛生責任者等)は、墜落危険のある作業については口頭指示だけではなく、作業計画、具体的な墜落防止措置等について関係下請け事業者と検討するとともに、その実施状況を確認する。(安衛法第30条関連)

【業種】

鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建設工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100806より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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