工場の屋根に設置されたダクトの破損部分の確認・計測作業中、屋根の天窓のガラス板を踏み抜き墜落
【発生状況】
この災害は、機械加工工場(大型旋盤工場)の屋根に設置されたダクトの腐食部分取り替え工事の準備のため、腐食部位の確認と詳細な寸法の計測等で工場屋根を移動中に、採光用の天窓ガラス板を踏み抜いたものである。
災害発生当日、被災者の作業は、午前中には他社のダクトの調整を行い午後3時から発生現場の工場の屋根(高さ10m)に同僚と2名で上がり、腐食したダクトの取り替え部分の確認と取り付け位置の測定を行うものであった。
計測作業は、被災者が寸法を計測し、同僚が手帳に記録するもので、まず工場屋根の東側の2カ所を計測した。その後、西側の3カ所を計測するために屋根の上を歩行中、天窓のガラス板を踏み抜き工場内の大型旋盤の上に墜落したものである。
機械加工工場は、隣接工場(6階建)の北側に付設して建築されており、鉄骨造で屋根は片流れ5°の勾配で、屋根用波形鋼板(折板鋼板 30cmピッチ)が使用され、地上までの高さは10mであった。
工場の屋根には、天窓(幅630mm 長さ9.25m)が6mの等間隔で9カ所設けられていたが、このうち東側の6カ所は鋼板で塞がれていたものである。
踏み抜いた天窓のガラス板は、粉じんなどの付着により汚れが激しく、塞いだ天窓の鋼板や工場屋根の波形鋼板などと同色となっており、見分けのつきにくい状態であった。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 事前の作業の打ち合わせをせず高所作業に従事したこと
事業者は、作業の開始にあたって作業者に作業場所の状況を説明せず、具体的な危険箇所の確認を怠っていた。
作業者2名も発注者側に連絡・調整をしないまま、工場の屋根に上がり作業場所の状況の説明を受けずに作業を開始した。
2 踏み抜いた天窓のガラス板が屋根の他の部分と見分けられなかったこと
天窓には、通常の板ガラスが使用されていたが、汚れが激しく鋼板により塞がれていた天窓部と同じような色に変化しており、被災者は見分けがつかなかったと見られる。
3 踏み抜き・墜落防止のための措置を行わなかったこと
天窓を踏み抜くことを防止するための防網の設置、ふた板の設置などの措置がとられていなかった。(天窓に強化ガラスなどが使用されていない。)
4 安全教育が実施されなかったこと
事業者は、日常の作業に関わる一般的な注意を作業者にしていたが、個別の作業や工事の危険について認識が低く、また、不安全行動や不安全状態に対する対策・知識を有さず、 安全教育を実施していなかった。
【対策】
同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業開始前の打ち合わせの徹底をはかること
発注者と請負った事業者との連絡・調整を確実に行い、当日の作業の方法や危険箇所の指示や確認を作業現場に徹底することが必要である。
2 踏み抜き防止対策の徹底をはかること
踏み抜き・墜落のおそれがある天窓、開口部についてはその危険を排除するため、防網もしくはふたを設置し、標識を設置する必要がある。また、作業中に工場屋根の端部に立ち入ることも予想されるので、親綱を設置し安全帯を使用させるなど、天窓のみでなく屋根からの転落防止対策をあわせて行う必要がある。
3 安全教育の徹底をはかること
高所作業に関して安全な作業手順の策定をし、安全な作業の方法、作業の危険性、不安全行動や状態、安全な設備、保護具の使用などについて、作業者に具体的な安全教育を行う必要がある。
4 屋根のダクトの点検・整備は、定期的に実施されるので安全な点検通路を確保するとともに、天窓そのものの安全化を図ること
屋根に安全な点検通路を設置し表示する。
工場の天窓としての機能は汚損により損なわれているので、天窓の廃止(鋼板による閉塞)もしくは恒久的な金網の設置、強化ガラスの設置などを検討する必要がある。
【業種】
建設設備工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100792より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
母屋の継手の釘打ち作業中、墜落
【発生状況】
この災害は、母屋の継手の釘打ち作業中に発生したものである。
この工事は、木造平屋建ての集会場新築工事であり、被災者の所属するA工業は、元請から基礎工事を請負い、併せて軸組みの建て方作業も慣例として請負うこととなった。
災害発生当日、午前8時30分頃から、元請の代表者ら3人、一次下請の基礎工事請負業者の1人(被災者)および1次下請の建方工事請負業者の2人、合計6人で作業を開始し、屋起し作業(柱が土台に垂直に差し込まれているかの修正調整する作業)を全員で行い、午前10時頃終了したので休憩に入った。
午前10時30分頃から作業を開始したが、被災者は、母屋の継手打ち作業(母屋の継手部分と小屋束を3寸釘で打ち付ける作業)を行うこととなった。
午前10時40分頃、被災者は、高さ4.5mの梁の上に角材を仮置きした箇所(幅2.8m,奥行0.7mの作業床)で、継手打ち作業を行っていたとき、何かのはずみで体勢をくずし、前のめりの状態で基礎コンクリート床上に墜落した。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 被災者は、母屋の継手打ち作業時に、母屋上の墜落防止設備のない作業床部分から、何らかのはずみで体勢を崩し墜落してしまったこと。
当日、墜落するおそれのある高さ4.5mの箇所(角材を仮置きした作業床)の上で、母屋の継手打ち作業を行わせるにあたり、下請の事業者は、この現場に不在のため自ら、墜落防止用の防網の設置状況および保護帽や安全帯の使用状況等、被災者が行う墜落防止の措置状況を確認していなかった。
2 被災者は、当日、母屋上の継手打ち作業では当然のことながら墜落の危険性があったにもかかわらず、自ら使用する保護帽、安全帯、防網を現場に持ち込んでいながら、これらを使用したり、設置したりしなかったこと。
3 元請においても、常日頃から建方作業、屋起し作業、母屋の継手打ち作業などでは、墜落災害のおそれがあるにもかかわらず、全作業者に対し、墜落防止の手段を講ずるよう適切な安全教育や指導、指示を行っていなかったこと。
4 被災者が、保護帽、安全帯、防網などを持ち込んでいたことも知らなかったとのことであり、安全作業への認識が欠けていたこと。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 高さ2m以上の高所での作業においては、労働者に保護帽を着用させ、安全帯を適切に使用させるか、梁、母屋等の下の部分に、防網を設置させるなどの墜落防止装置を徹底させること。
2 元請として、関係請負人および関係請負人の労働者に対し、1のような墜落防止の措置について、単に口頭などで指示することのみに終わらず、必ず、保護帽を適切に着用しているかどうかを確認し、着用していない労働者には、その場で着用を指示し、事業者にも着用の徹底方を要請すること。
安全帯の使用状況についても、常日頃から確認する必要があるが、安全帯が使用しにくい作業状況のときには、必ず、防網を梁、柱、母屋、屋根等の部分に設置するよう指導を行う必要がある。
3 元請または下請の事業者など工事責任者は、その日の作業開始前に、労働者の服装の点検、保護帽の着用状況、その日の作業からみて、特に墜落のおそれのある箇所の点検確認などを行うとともに、KY活動などにより危険防止の安全教育を併せて行うこと。
【業種】
木造家屋建築工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100793より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
- ■前の記事へ
- 母屋の継手の釘打ち作業中、墜落
- ■次の記事へ
- 木造2階床梁の足場上で墨出し作業中、墜落