天井裏の点検中、照明器具のプラグで感電し、死亡
【労災概要】
この災害は、食料品製造工場の天井断熱材の張替え工事で発生したものである。
災害発生当日、内装工事、建築板金を営むZ社の作業者Aは、班長Bとともに、天井断熱材の張替え工事を受注した食料品製造工場で朝から作業を開始した。当日の作業は、工場の2階天井裏の断熱材を張り替えた後の点検であった。
AおよびBは、天井裏で照明器具(100V、90Wの白熱灯)を使用するため、2階の壁にあるコンセントにドラム式延長コード(長さ30m)のプラグを差し込んだ後、延長コードのドラムと照明器具を1台ずつ持って天井裏へ上った。
天井裏で、2人は、ドラム式延長コードのコンセントに照明器具のプラグを差し込んで、断熱材の張替え作業の際に天井裏に置いた足場板(幅9cm)の上から断熱材の固定状況等を確認していたが、途中でコードの長さが足りなくなったので、新たに延長コード(長さ10m)を4本持ち込み、順次コードを接続して点検作業を行った。
午後3時頃、点検作業が終了したので延長コードの片付けを始めたが、その手順は照明器具のプラグを抜いた後、末端の延長コードのプラグを抜き、その後、照明器具のプラグをコンセントに差し込んで再び照明を確保して、抜いた延長コードを束ねながら後退するという手順で行っていた。この手順で2本の延長コードを束ね、3本目の延長コードを抜いたところに、Aが照明器具のプラグを差し込んだとき、火花が飛びAが倒れた。Aは病院に移送されたが死亡した。
Aがプラグを差し込んだコンセントのボディは、一部が破損していて内部の充電部が露出していた。Aは暗がりの中、手探りでプラグを差し込もうとしてコンセントの露出していた充電部に触れ、感電したものであった。
断熱材の張替え作業中では、天井裏に電源コードを仮設して照明や電動工具の電源を確保していたが、張替え作業修了とともにすべて撤去する工事計画書になっており、点検作業が行われた当日は、天井裏に照明設備はない状況であった。
また、AおよびBは当日、現場に持ち込んだ延長コードや照明器具を作業前に点検しておらず、Z社では工事作業中の感電災害防止について、作業者に教育を実施していなかったため、作業中の感電の危険性についての作業者の認識が欠けていた。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 延長コードのボディが破損していたこと
延長コードのボディが破損していて充電部が露出していたため、Aが暗がりの中、手探りでプラグを差し込もうとして充電部に触れ、感電した。災害発生当日は、作業前に持ち込んだ照明器具および延長コードを点検していなかった。
2 天井断熱材の張替え工事全体の工事計画書が不十分であったこと
天井裏の照明は、断熱材の張替え作業中には確保されるようになっていたが、点検作業時には照明が撤去されている計画となっていた。そのため、AおよびBは照明器具および延長コードを天井裏に持ち込み、また、延長コードの継ぎ足し時や片付け時には一時、照明がない状態で作業しなければならなかった。
3 作業者に対し、感電防止についての教育を実施していなかったこと
低圧電路であっても、設備の状況や作業方法によって感電する危険性があることを作業者に対し教育していなかった。そのため、作業者に作業中に感電するという認識はなかった。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 現場に持ち込んだ電気器具類の点検を作業前に行うこと
工事の際、現場に持ち込む電気器具や延長コードは、作業前に点検を行い、損傷がないことを確認する。万が一、損傷が見つかったときは、修理又は交替が済むまで作業では使用しないように区別する。
2 工事期間全体を考慮した工事計画書を作成すること
現場で作業が行われる間は常に照明が確保されるよう、準備作業や点検作業を含めた工事期間全体を考慮した工事計画書を作成する。
なお、出張作業において電源が確保されていない場所で作業を行う場合には、臨時の電源の確保について施設の所有者と工事着工前に十分な打ち合わせを行うようにする。
3 作業者に対し、感電防止についての教育を実施すること
低圧電路であっても周辺の状況によって充電部に接触した場合には感電死することがあるので、作業者に対して、その知識の有無を確認するとともに必要な教育を行う。
【業種】
その他の建築工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)
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また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
地下駐車場のピット内でアーク溶接機のホルダーを足場に掛け、3人が感電
【労災概要】
この災害は、マンションの新築工事に付随した地下立体駐車場のピット内工事で発生したものである。
災害発生当日、ピット内の壁面にステンレス製アングルの枠を据え付ける工事を請け負った1次下請業者Z社の作業者Aほか、計4人の作業者は、朝からアングル材の据付作業に取りかかった。AはZ社が現場に持ち込んだアーク溶接機を使用して作業を始めたが、アークが弱く十分な溶接ができないため、いったん作業を中断し、元請業者が持ち込んでいたアーク溶接機を借りて作業を再開した。
午後になり、別の1次下請業者Y社の作業者2人が入場し、ピット内で枠組足場の組立を始めたが、Z社の作業者4人は午前中に引き続き、アングル材の据付を行っていた。午後3時頃、それまで徐々にしみ出ていた漏水がピット内で深さ5cmほどの水たまりとなり、アーク溶接を続けると感電するおそれがあると判断したAは、作業を中断し、溶接棒のホルダーを足場の筋交いに掛け、足場を上り始めた。そのとき足場に手を掛けながら上っていたAと足場の根元で作業していたY社の作業者2人が感電し倒れた。3人は病院に運ばれ数日間入院した。Aが溶接棒ホルダーを筋交いに掛けたとき、アーク溶接機の電源は入のままであった。
Aが元請業者から借りたアーク溶接機は、自動電撃防止装置内蔵型のものであったが、20年前に製造されたもので、自動電撃防止装置は故障していて機能していなかった。Aはアーク溶接機を借りた際、元請業者のものであることから点検をしないまま溶接作業に使用していた。
AはZ社に入社して半年であり、アーク溶接等の業務に係る特別教育を受けておらず、同僚を真似て溶接作業を行っていた。また、Z社では作業者の資格や特別教育の受講歴を確認していなかった。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 電源を切らないまま溶接棒ホルダーを枠組足場の筋交いに掛けたこと
Aは午後3時頃に作業を中断したとき、アーク溶接機の電源を切らずに溶接棒のホルダーを枠組足場の筋交いに掛けた。そのため、アーク溶接機→ホルダー→足場→作業者→足場→水たまり→アーク溶接機の回路が形成され、3人の作業者が感電した。
2 アーク溶接機の自動電撃防止装置が機能していなかったこと
Aが元請業者から借りて使用していたアーク溶接機は、自動電撃防止装置内蔵型のものであったが、20年前に製造されたもので自動電撃防止装置が故障し機能していなかった。また、Aはこのアーク溶接機の点検をしないまま、溶接作業していた。
3 特別教育を受けていない作業者にアーク溶接の作業を行わせたこと
Z社では、作業者の資格や受講歴を確認せずに、作業に従事させていた。そのため、Aはアーク溶接等の業務に係る特別教育を受講しておらず、アーク溶接機の点検、感電防止措置等の知識がないまま、同僚を真似てアーク溶接を行っていた。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業者がアーク溶接作業を中断したときは、溶接機の電源を切らせること
アーク溶接作業を中断したときは、通電状態の溶接棒等による感電を防止するため、溶接機の電源を切ることを作業者に周知徹底する。
また、溶接作業場所の周囲に水たまりや金属製の構築物等、導電性のものがある場合は、それらを経由して感電災害が起こることがあるので、アーク溶接機、コード、溶接棒ホルダー等が触れないようにすることも重要である。
2 自動電撃防止装置の機能等を確認すること
鉄骨等の導電線が高い接地物に作業者が接触するおそれのある場所で交流アーク溶接機を使用する場合は、自動電撃防止装置が内蔵されたもの、または外付け型の自動電撃防止装置を取り付けたものを使用する。さらに、作業開始前に自動電撃防止装置の作動状況を必ず確認するほか、溶接棒ホルダーの絶縁性、コード類の絶縁被覆の状態を確認し、不良なものは取り替えることも重要である。
3 特別教育を実施すること
アーク溶接機を用いて行う溶接、溶断等を行う作業者に対しては、作業に従事する前に事業者が特別教育を実施するか、または教習機関等が実施する特別教育を受講させる必要がある。
【業種】
鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業
【被害者数】
休業者:2人
不休者数:1人
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