クローラクレーンが自走中に転倒
【発生状況】
この災害は、漁港整備工事において、クローラクレーンが岸壁から防波堤に自走して移動する際に転倒したものである。
この工事現場では、クローラクレーン(つり上げ荷重65t)を用いて、型枠にコンクリートを打設する作業、型枠の脱型作業およびコンクリートブロックの据え付け作業を行っていた。災害発生当日、クローラクレーンは、まず岸壁で行われたコンクリート打設作業に用いられ、その終了後、次の作業のために防波堤に移動した。しかし、この移動に際しては、岸壁と防波堤の間の通路が一部狭くなっているため、作業中は最大幅の4.8mとしていたクローラ幅を3.5mに縮小する必要があった。クレーン運転士は、クローラ幅を縮小した後、自走中に上部旋回体を機体後方から前方に旋回させると同時にジブ起伏角を75度に増加させる操作を行った。上部旋回体の向きが真横に位置した時、片側のクローラが浮き上がり、その後、カウンターウェイト側に転倒した。なお、この災害による死傷者はいなかった。
クローラ幅を縮小しても、前後方向の安定性は変わらないことから、クレーン運転士は、当初、バック走行であったものから、自走方向を向くため上部旋回体の旋回操作を行ったものであり、旋回中に横に張り出し邪魔になるジブを起こす操作を同時に行った。
クレーンメーカーは、クローラ幅を縮小するのは、クレーンの機体の解体時と運搬時に限定しており、いずれの際もカウンターウェイトとジブを取り外すよう取扱マニュアルに明記していた。しかし、現場で用意した安全作業マニュアル等では、クローラクレーンの取扱マニュアルの内容が反映されていなかった。
【原因】
災害の発生原因として、次のようなことが考えられる。
1 クローラ幅を縮小した状態で、旋回とジブの起伏の操作を同時に行ったこと
クローラ幅を縮小した状態で、旋回とジブの起しを同時に操作したため、上部旋回体が横を向いた際に、旋回体後部のカウンターウェイトでバランスを失い、転倒した。
2 メーカーが推奨するクローラクレーンの安全な操作方法を作業マニュアル等に反映していなかったこと
メーカーが、クローラ幅を縮小したときの安全な取り扱い方法について取扱マニュアルに明記していたにもかかわらず、その内容が作業マニュアルに反映されていなかったため、結果として誤った操作が行われた。
3 クレーン運転士に対し、作業マニュアルに基づく安全教育が行われていなかったこと
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 誤った方法で使用しないこと
メーカーは、クローラ幅の縮小を分解と運搬時に限定しており、このときにはジブとカウンターウェイトを取り外すよう推奨しているので、この方法に従ってクレーンを正しく使用する必要がある。
2 安全な作業手順を計画すること
作業中に存在する危険を可能な限り排除した安全な作業マニュアルを用意し、その内容を作業者に周知させることが重要である。
3 作業マニュアル等については、クレーン運転士等関係労働者に対し十分教育しておくこと
【業種】
港湾海岸工事業
【被害者数】
なし
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.101026より一部抜粋
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建築用資材の積み込み中、車両積載形トラッククレーンが横転
【労災発生状況】
この災害は、事業所が所有する建築資材置き場において、車両積載形トラッククレーンを用いて資材の積み込み作業を行っている際に、トラッククレーンが横転したものである。
災害発生当日、作業者AとBの2名は、建築資材置き場に保管していた建築資材をトラッククレーンに積み込む作業を行うため、車両積載形トラッククレーンで資材置き場に到着したが、置き場内に資材が散らかっていて、車両を駐車するスペースがなかったため、敷地に面した公道にトラッククレーンを駐車して資材を積み込むことにした。Bは敷地側(車両右側)にあるアウトリガーを全張り出しにし、積み込み作業を開始した。このとき、反対側(左側)は通行車両の邪魔になるため、アウトリガーを使用せず、トラックのタイヤで重量を支えている状態であった。
Bは、建築資材(重量1t)の玉掛け作業を行った後、Aとともにトラックの荷台に上がり、クレーンの操作を行った。つり荷を敷地側からつり上げ、荷台中央付近に降ろすため徐々にトラッククレーンの後方へ旋回していったところ、ジブが荷台の中心線を越えたあたりでトラック全体が公道側に傾き、そのまま横転した。このとき、AとBは、とっさに道路上に飛び降りたが、Aが負傷した。
Bは、玉掛け技能講習および小型移動式クレーン運転技能講習を修了していた。
災害が発生した資材置き場では、日常的に建築資材のトラックへの積み下ろしが行われていたが、クレーン等、積み下ろしのための設備はなく、車両積載形トラッククレーンを持ち込んで作業を行っていた。また、作業者には、クレーンの安全な操作方法などの安全衛生教育は実施されてなく、作業前ミーティングも行われていなかった。
【原因】
災害の発生原因として、次のようなことが考えられる。
1 建築材料をトラックに積み込んだり積みおろしたりするための専用設備がなかったこと
資材置き場では、日常的に建築資料の搬入・搬出が行われていたにもかかわらず、建築材料をトラックに積み込んだり積みおろしたりするための専用の設備がなく、車両積載形トラッククレーンを使用せざるを得なかった。さらに、当日は、資材置き場が乱雑で、車両積載形トラッククレーンの駐車・作業スペースが取れなかったため、車両積載形トラッククレーンを公道に駐車して、積み込み作業を行った。
2 アウトリガーを片方しか張り出さずにつり上げ作業をしたこと
車両積載形トラッククレーンを駐車した公道を通行する車両の邪魔にならないよう敷地側のアウトリガーしか張り出さなかったため、つり上げた荷がトラックの荷台上で振れたときにバランスを失い、トラックが横転した。
3 作業者に安全衛生教育を実施していなかったこと
作業者に対し、クレーンの取扱等に関する安全衛生教育を実施しておらず、作業者に安全な作業方法が周知されていなかったため、誤った方法で作業した。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 建築材料をトラックに積み込むための専用設備又はスペースを設けること
日常的に建築資材の積み下ろし作業を行う資材置き場では、建築材料をトラックに積み込むための専用の設備を設けるようにする。これが難しい場合は少なくとも、敷地内を整理・整頓し、トラックを駐車し作業するためのスペースを常に確保しておくことが必要である。
2 アウトリガーは左右とも張り出して、つり上げ作業を行うこと
クレーンのアウトリガーは、左右とも張り出した状態で、つり上げ作業を行う。なお、公道にクレーンを駐車して作業を行う場合には、監視人を置き、周囲の安全に配慮することも必要である。
3 作業者に安全衛生教育等を実施すること
作業者に対し、クレーンの取扱等に関する安全衛生教育を実施するとともに、作業内容と作業手順をあらかじめ勘案し、安全な作業のための作業手順書を作成し、これを作業前ミーティング等で確認することが必要である。
【業種】
木造家屋建築工事業
【被害者数】
休業者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.101027より一部抜粋
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