新築工事現場の浴室の防水工事の作業中、有機溶剤(トルエン)中毒となり入院
【労災概要】
本災害は、新築工事現場の浴室の防水工事で、塗料の塗布作業中に発生した。
被災者は新築工事現場の浴室の防水工事において、壁面にプライマーと呼ばれる塗料を手持ちのローラーを使用して塗布する作業を一人で始めた。他の職人が作業に訪れたところ、浴室内に溶剤臭が充満しており、被災者が倒れているところを発見した。被災者は病院に搬送され、「有機溶剤(トルエン)中毒、一過性意識障害」と診断された。2日間入院加療後に回復し、退院した。
【原因】
①使用していた塗料に、第2種有機溶剤のトルエンが49%、酢酸エチルが15%以上含まれていたこと。
②有機溶剤業務について、換気を行っていなかったことにより、塗料に含まれていた有機溶剤の蒸気が浴室内に滞留したこと。
③防毒マスクまたは送気マスクを着用して作業していなかったこと。
④事業主の有機溶剤の有害性についての認識が不十分であり、作業者に対する有機溶剤取扱い上の注意事項、中毒発生時における処置等の安全衛生教育を行っていなかったこと。
⑤有機溶剤作業主任者を選任しておらず、作業の安全についての検討がされていなかったこと。
【対策】
①屋内で有機溶剤を取り扱う業務については、窓等の開放を行うとともに、ブロアー等で強制換気等を行い、有効な保護具の使用を徹底すること。
②屋内作業において、有機溶剤を用いる塗装作業は有機溶剤作業主任者を選任し、ばく露防止のための換気方法、作業方法等を事前に検討すること。
③作業者に有機溶剤の中毒防止のための安全衛生教育を行うこと。
④元請は下請けに対して、有機溶剤中毒防止のための安全衛生教育、換気の方法、保護具の適切な選択と使用方法などについて、指導援助を行うこと。
【業種】
建築工事業
【被害者数】
休業者数:1名
出典:厚生労働省ホームページ(職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp))
鉛酸化物製造設備解体による鉛中毒
【労災概要】
鉛酸化物を製造していた鉛設備の解体撤去工事(設備をガス溶断装置で分割し、廃材を洗浄し、クレーンでトラックに積込み、搬出・撤去する)を行っていたところ、作業開始から1ヶ月を過ぎた頃から複数の作業者が、腹痛や胃痛等の消化器症状を伴う体調不良となった。後日、医療機関を受診し血液検査を実施したところ、血中鉛濃度が異常値となっており、「鉛中毒」と診断された。なお、本解体撤去工事にて、計7名が被災し入院した。作業者らは保護具を着用していたが、鉛作業に対して不十分な能力のものであった。
【原因】
①鉛作業に適さない(防護が不十分な)呼吸用保護具を使用していたこと
②作業により鉛を含む粉じんやヒュームの発生があることやその有害性について、教育が不十分であったこと
【対策】
①鉛作業の際には、国家検定品の防じんマスクで区分2以上の防護能力のある呼吸用保護具を常に着用する
②鉛については経口で体内に取り込む可能性もあるため、作業場内で食事や喫煙をしない。また、食事や喫煙の際は、作業着を着替え、手洗いやシャワーによって洗い流す。脱いだ作業着は洗濯してから着用し、手袋は使い捨てにする。呼吸用保護具の内部に汚染がないことを確認してから使用する。作業着の襟元や袖口から内部に粉じんが入らないように、手袋の口から粉じんが入り込まないよう注意する
【業種】
その他の建築工事業
【被害者数】
休業者数:2名
出典:厚生労働省ホームページ
職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)