建設業の労災事例

大型看板解体中に看板が倒壊

      2022/12/14

【労災概要】

この災害は、構造物をアセチレン溶接装置で溶断中に当該構造物が倒壊し、溶断作業をしていた作業者に激突したものである。

この作業は、鉄くず回収業等を営む事業者が、営業を閉鎖した店舗の大型看板を譲り受け、鉄骨を回収するために行っていたものである。看板は、縦1m×横3mの鉄板5枚をコの字型に連結したものを6本の鉄骨で支えていた。

最初は、車両積載型トラッククレーンで引っ張りながら6本の鉄骨根元を溶断し、当該クレーンでつりあげようとしたがつりあげることができなかった。次に、クレーンの牽引用フックにワイヤロープを掛けて看板を引き倒すこととしたが看板は倒れなかった。このため看板を小分けすることとし、被災者は脚立に乗り、アセチレン溶接機で鉄板の固定を切断していたときに看板全体が倒壊を始め、被災者に激突したものである。

当該事業場で行う鉄くずの回収は小規模のものが多く、今回初めて大規模な解体作業を行っていたものである。

被災者は、ガス溶接技能講習修了の資格を有していなかった。また、保護帽を着用していなかった。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 事業場としてこれまで経験したことのないような大型の建築物の解体について、あらかじめ安全な解体方法等の検討が行われなかったこと。

建築物の解体の作業においては墜落災害、飛来落下災害、倒壊災害等が発生しており、これらの災害を防止するためにはあらかじめ安全な解体方法等について検討することが不可欠であるが、当該事業場においては、これらの検討が行われていなかった。

2 大型の建築物の解体について、無理な解体方法をとったこと。

当該看板はコの字型とはいえ、全長が15mに及ぶ長さのものを一度にクレーンでつって解体しようとした。重量もさることながら、横に長いものをつることによって全体にねじれが生じ、さまざまな形で構造物が変形するおそれがある。

3 溶断作業にあたった者の技能が未熟であったこと。

鉄骨等の溶断作業を行った被災者は、鉄骨の解体業務についてもほとんど経験がなく、しかも、ガス溶接技能講習も修了していなかった。被災者が溶断を行った鉄骨は一部に完全な溶断が行われていない箇所があり、最初にクレーンでつりあげられなかったことがこの災害の一要因ともなっている。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 安全な作業計画を定めること。

建築物の解体に当たっては、倒壊、墜落、飛来落下等の防止の観点から安全な作業計画を定め、作業者に周知する。特に大型の建築物は予想外の方向に倒壊することがあるので、安全の確認できる範囲でできる限り小分けした解体方法とする。

2 作業指揮者を配置すること。

大型建築物の解体に当たっては、作業指揮者を定め、関係者 以外の立入禁止、保護具の使用状況等を監視させるとともに、作業指揮者の指示の下に作業を行う。

3 資格を有しなければ就業できない作業について、資格の確認をすること。

職場で行われる作業には、一定の知識、経験がないと正しい作業ができなかったり、危険な作業方法を取ったり、必要な確認をしなかったりして、それらのことが要因となって災害が発生するものがある。労働安全衛生法で必要な資格を定め、資格を有していない者の当該作業への就業を禁じている作業に労働者を就かせる場合は、必要な資格を有している者であることを確認しなければならない。

【業種】

その他の建築工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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ブル・ドーザーの作業開始前点検を終えてエンジンを起動したときに、ブル・ドーザーが後進してひかれる

   

【労災概要】

 

この災害は、圃場整備建設工事現場において、ブル・ドーザーの作業開始前点検を行っていた被災者が、エンジンを始動したときにブル・ドーザーが後退したため、ブル・ドーザーにひかれたものである。

当日の朝、工事現場に到着した被災者と同僚1名は、それぞれが使用するブル・ドーザーの作業開始前点検を始めたが、被災者は点検しようとしていたブル・ドーザーの停止位置が傾斜地であったので、ブル・ドーザーを約3m後進させて平坦な地山の上に移動した。

その後、被災者は、ガバナ・レバーを押し下げてエンジンを止め、パーキングブレーキ・ノブを引かずに乗車席から降りて作業開始前点検をはじめた。

手順としては、まずエンジンオイルを補充し、次いで補給したオイル量をレベルゲージで行うためにクローラーの上に乗り、手を伸ばしてエンジンを始動したところ、ブル・ドーザーが後退し始めた。

そのため、被災者は、クローラーと運転席乗車用ステップとの間に巻き込まれたのちクローラーから地面に落下しブレードにひかれた。

なお、このブル・ドーザーは、クラッチを切らないとエンジンがかからない安全装置が備わっていたが、クラッチを切らなくても起動できる状態に改造されていた。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 被災者がブル・ドーザーの機能の変更を知らなかったこと

このブル・ドーザーは、以前はクラッチを切らないとエンジンが起動しない安全装置が備わっていた。

しかし、被災者の知らない間に電気系統が変更され、クラッチを切らなくてもエンジンが起動できるよう改造されていたのに、被災者はこの変更を知らなかった。

2 運転席を離れるときのブレーキ操作等を誤ったこと

被災者は、作業開始前点検を行うため運転席を降りるときに、前後進コントロール・レバー及びスピードコントロール・レバーをニュートラルの位置に戻さず、ガバナ・レバーを押し下げてエンジンを止め、パーキングブレーキ・ノブを引かずに降りたため、エンジンを始動させたときにブル・ドーザーが直ぐに後進を始めた。

なお、エンジンの始動をクローラーの上で行ったことも不適切であった。

3 作業開始前の点検要領を定めて徹底していなかったこと

ブル・ドーザーの作業開始前の点検は日常的に行われていたが、運転者に任せており、会社として点検要領、作業手順を定め関係者に徹底していなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 運転席から離れるときには、逸走防止措置等を確実に行うこと

ブル・ドーザー等の車両系建設機械の運転者が運転位置から離れるときには、エンジンを止め、及び走行ブレーキを掛ける等の逸走防止措置を確実に行う。(安衛則第160条)

2 定期自主検査等を実施し必要な補修等を行うこと

車両系建設機械については、1年以内ごとに1回の定期自主検査(有資格者による特定自主検査)、1月以内ごとに1回の定期自主検査及び作業開始前点検を確実に実施し、必要な補修等を行う。また、補修等に伴って電気系統などの変更を行った場合には、関係者に徹底する。(安衛則第167~171条)

3 ブル・ドーザーの作業開始前点検要領等を運転者に徹底すること

ブル・ドーザーの作業開始前点検要領及び補修の基準等を定め、運転者に周知徹底する。(安衛則第170条)

4 管理責任者を定め検査、補修等の管理を行わせること

ブル・ドーザー等車両系建設機械の管理責任者を定め、定期自主検査の実施及び補修等管理を行わせる。

とくに、運転者等による構造、安全装置等の不正改造のないよう管理する。

【業種】

その他の土木工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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