建設業の労災事例

集じん装置の設置工事中、溶接火花が落下して汚泥タンクが爆発

      2022/12/22

【労災概要】

この災害は、工場に集じん装置を設置する工事中に、溶接火花により既設の汚泥タンクが爆発したものである。

Z社は、この集じん装置の設置工事のうち、工場の屋根に排気ダクトを設置する工事を1次下請業者として請け負った。

災害発生当日、Z社の作業者AおよびBは、前日までに地上で組み立ててあった排気ダクトを屋根上に運び、据え付ける作業を行っていた。排気ダクトを屋根に固定するため、アーク溶接を行っていたところ、突然、作業個所の軒下にあった密閉式のタンクが爆発した。作業していたAおよびBは、爆風により一度吹き飛ばされた後、屋根に叩き付けられ負傷した。

爆発したタンクは、工場排水の処理過程で発生した汚泥を一時貯蔵しておくためのもので、内部では、メタンガスが発生していた。タンクは密閉式であるが、ガス抜きのための排気口が設けられており、AおよびBが行っていたアーク溶接で発生した火花がこの排気口付近に落下し、排気口から立ち昇っていたメタンガスに引火して、タンクが爆発したものであった。

ダクト設置個所近くのタンク内でメタンガスが発生していることは、発注者である工場から元請業者に伝えられていなかったため、Z社の作業者AおよびBはタンクが爆発するおそれがあるという認識がないまま作業を行っていた。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 タンクの中で発生したメタンガスにアーク溶接の火花で引火爆発したこと

爆発したタンクには、工場排水の処理で発生した汚泥が貯蔵されており、そこでメタンガスが発生していた。タンクの上方の工場の屋根では集じん装置の排気ダクトの設置工事が行われており、アーク溶接により発生した火花が落下して、タンクの排気口から出ていたメタンガスに引火し、タンクが爆発した。

2 発注者等から危険情報が提供されていなかったこと

工事の発注者である工場では、タンクの中でメタンガスが発生し爆発する危険性があることについての情報を元請業者に対して提供していなかったため、Z社の作業者AおよびBもその危険性について知らされないまま火花が発生するアーク溶接を行った。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 メタンガスにアーク溶接の火花が引火しないような措置を講じること

メタンガスが存在する設備の近くでアーク溶接の作業を行うときは、メタンガスの発生を停止する、火花の飛散を防止する等、火花とメタンガスが接触しないような措置を講じる必要がある。

また、作業の前にメタンガスの濃度を測定し、爆発するおそれがないことを確認することも重要である。

2 工事に関連する危険有害性情報を請負業者に伝えること

爆発危険性や有害性のガスが存在する施設やその近辺で工事を行う場合、発注者は、その情報を元請業者に確実に伝え、元請業者は、その情報を下請業者に伝え、安全な作業計画書を作成させるとともに、実際に作業を行う作業者に周知徹底させる。

また、作業前の打ち合わせで、安全な作業方法について再確認することも重要である。

【業種】

建設設備工事業

【被害者数】

休業者数:2人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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下水道工事現場で残土排出用バケット車の下敷きになり死亡

   

【労災概要】

この災害は、下水道工事現場のずい道内において、掘削残土を排出する作業中に発生したものである。

この工事現場では、土圧式推進工法で掘削を行っており、掘削した残土をバッテリーカーで牽引したバケット車で搬出していた。

災害発生当日、下請Z社の作業者Aは、同僚の作業者3人、元請の現場代理人Bおよび下請Y社の作業者Cとともに現場に入った。作業分担は、バッテリーカーの運転をCが行い、AはCに合図する役割であった。当日の作業を終了するまで約1時間となったとき、CがAの合図で、バッテリーカーを徐々に後退させていたところ、最後尾のバケットが軌道の終端から落下し、Aは、転落したバケットの下敷きとなった。Aは救出されて病院に搬送されたが、死亡した。

災害が発生した工事現場では、軌道の終端に車止め装置を設置しておらず、施工計画書も軌道の終端に車止め装置を設置する内容となっていなかった。また、関係作業者も軌道の終端でバケット車を確実に止める方法について確認していなかった。

しかも災害発生当日、Aは、軌道の終端という危険な位置に立ちCに合図を送っていた。

なお、Cは動力軌条運搬車等の運転業務に係る特別教育を受けておらず、元請のBもCの特別教育実施の有無等について確認していなかった。

【原因】

この災害の原因として、次のようなことが考えられる。

1 バッテリーカーの軌道の終端に、確実な車止め装置が設置されていなかったこと

2 合図者が、軌道の終端の危険な位置に立っていたこと

3 バッテリーカーの運転者が、動力軌条運搬車等の運転業務に係る特別教育を受けていなかったこと

【対策】

同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 軌道の終端には確実な車止め装置を設けること

工事施工計画には、軌道の終端に車止め装置を設置することを含めるとともに、工事開始後は、車止め装置が有効であるか点検することが必要である。

2 軌道装置の運転者への合図の方法を関係者に周知徹底すること

軌道装置の運転者への合図について、合図者の立つ位置や合図の方法を定め、関係作業者に周知徹底する。また、定められた位置や方法で合図が行われていることを定期的に点検し、確認することも重要である。

3 軌道装置の動力車の運転は、有資格者に行わせること

軌道装置で使用するバッテリーカー等の動力車の運転は、動力軌条運搬車等の運転業務に係る特別教育を受けた者に行わせなければならない。

【業種】

トンネル建設工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

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