建設業の労災事例

土止め支保工の近くに張り出したアウトリガーが沈下し、移動式クレーンが転倒

   

【労災発生状況】

この災害は、公園内の建設作業現場において、移動式クレーンを用いて鉄筋束の搬入作業を行っている最中に発生した。

災害発生当日、クレーン運転士Aは、アスファルト舗装された遊歩道上に移動式クレーンを設置し、トラックで搬入された1束約800kgの鉄筋のつり下ろし作業を行っていた。3回目の作業で鉄筋の束を所定の位置に下ろした直後、前方のアウトリガーが地中に沈み始め、そのまま移動式クレーンは横転した。このときAは、変形した運転席でからだをはさまれて負傷した。

現場では、掘削作業が同時に行われており、土止め支保工から1mの距離に移動式クレーンの前方のアウトリガーが張り出されていた。アウトリガーは厚さ9cm、縦横50cm角の硬質プラスチック製の敷板の上に張り出されていたが、災害発生後、アウトリガーが張り出されていた遊歩道のアスファルト舗装は、ひび割れており、また、土止め支保工で用いられた矢板が倒れて土砂が流れ込んでいた。

工事計画書は元請が作成していたが、鉄筋束の搬入作業と掘削作業は同時に行われることになっていた。また、周囲は雑木林と建物になっており、ほかに鉄筋束の搬入場所を確保することは困難であった。

【原因】

この災害の原因として、次のようなことが考えられる。

1 地盤が崩壊しやすい場所に移動式クレーンのアウトリガーを張り出したこと

移動式クレーンのアウトリガーは、遊歩道のアスファルト舗装の上に張り出していたが、近くに掘削工事現場があり、舗装下の土砂がアウトリガーからの圧力で土止め支保工側に流出したため、舗装地面ごとアウトリガーが沈下した。

2 クレーン作業と掘削作業が同時に行われる工事計画であったこと

元請が作成した工事計画では、もともと移動式クレーンによる鉄筋束の搬入作業と掘削作業が同時に行われることになっていた。また、移動式クレーンの設置場所は、周辺が雑木林と建物であることから掘削現場の近くにしか確保できない状況であった。

このため、上記1の状態で移動式クレーンを使用する結果となった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 崩壊のおそれがない堅固な地盤に移動式クレーンを設置すること

移動式クレーンの設置に際し、予め地盤の状況を入念に確認することが必要である。

建築土木の現場では、工事の進展に伴い、掘削や埋め戻しにより地盤の状況が変化するので、以前に移動式クレーンを設置して安全に作業できた場所でも、再度、沈下するおそれがないことを確認する。

2 周辺の状況や予定される作業内容を事前に確認し、安全に作業できる工事計画を作成すること

周辺の状況や予定される作業内容を事前によく確認した上で安全に作業を行うことができる工事計画を作成する。特に、同時に行うことで新たな危険が生じるような作業を同時並行させない等、安全に配慮することが重要である。

【業種】

建築工事業

【被害者数】

休業者:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101029より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

 

 

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ホイールクレーンでつり上げた荷を下ろすため、ジブを倒したところ、クレーンが転倒

   

【労災発生状況】

この災害は、発注会社の工場内でのコジェネレーション施設の新設工事のうち、施設の防音壁を建築する工事において、ホイールクレーンを用いて防音パネルを運搬中にクレーンが転倒したものである。

災害発生当日は、あらかじめ立てられた支柱に防音パネルを取り付ける作業が行われた。1スパン目と2スパン目の取り付け作業が終了し、3スパン目に取りかかる際、3スパン目の支柱間隔が2スパン目までより広かったために、別の場所に積んであった防音パネルをホイールクレーンで作業エリアへ搬入する必要が生じた。

玉掛け者Aは、防音パネル9枚の束(重量1,134kg)を玉掛けし、巻上げを合図した。ホイールクレーンの運転士Bは、地切りを行う際に定格荷重の80%を超過している警告音が鳴ったので、過負荷防止装置を解除した。その後、Bは、ジブを旋回し、徐々に巻き下げと、ジブを倒す操作を行いながら、Aが合図する場所へ近づけていったところ、突然、ホイールクレーンが転倒した。この災害による被災者はいなかった。

ホイールクレーンが転倒したとき、過負荷防止装置は解除されたままであり、そのため、つり荷の重量が定格荷重を超えても自動停止装置が働かない状態であった。

なお、災害が起きた工事現場では、作業者に対し、入構時の安全衛生教育は実施していなかった。

【原因】

この災害の発生原因として、次のようなことが考えられる。

1 クレーン運転士が過負荷防止装置を解除したまま、ジブを倒す操作を行ったこと

Bは、防音パネルを地切りした際、定格荷重の80%を超えた警告音がなったが、まだ安全につり上げられると判断し、過負荷防止装置を解除した。そのまま、クレーン操作を続け、ジブを倒したため、つり荷の重量が定格荷重を超えたが、自動停止機能が働かず、ホイールクレーンが転倒した。

2 入構時の安全衛生教育が実施されていなかったこと

【対策】

同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 移動式クレーンの操作中は、過負荷防止装置を解除させないこと

過負荷防止装置は、移動式クレーンの転倒を防止するために設置されている安全装置であり、作業中は過負荷防止装置を決して解除してはならない。また、過負荷防止装置が働いてクレーンが停止した際には、つり荷を小分けにする、ジブの作業半径を小さくする等の安全な作業方法で作業しなおすことを、普段からクレーン運転士に周知徹底することも重要である。

2 作業者に対する入構時の安全衛生教育を実施すること

新たに入構する作業者に対しては、従事する作業に関する安全衛生教育を行うこと。特に、クレーン運転士、玉掛け者等、クレーン作業に携わる者に対しては、

[1]クレーンの定格荷重を超える荷をつってはならいこと

[2]クレーン作業中は過負荷防止装置を解除してはならないこと等のクレーン災害防止のための安全教育を実施すること

が重要である。

【業種】

建築設備工事業

【被害者数】

なし

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101030より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

 

 

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