水系剥離剤を用いた橋梁塗装の剥離作業中の中毒
【労災概要】
橋梁の塗替塗装のため、吊り足場上において電動ファン付き呼吸用保護具(防じん機能付き防毒マスク)を着用して剥離剤(ベンジルアルコール 30~40%含有)の吹付作業を単独で行っていた被災者が倒れていたところを発見された。夏季の気温が高い日の午後の作業であった。作業場所は剥離対象の塗料に含まれるPCB及び鉛の飛散防止のため隔離措置が施された狭隘空間であり、通風はなく、剥離剤を吹き付けると有機ガスの濃度が上がり続ける状態であったが、排気装置の設置等の措置は講じられていなかった。
【原因】
1 狭隘な場所で有機溶剤を含む剥離剤の噴霧作業をしていて、暑さや息苦しさにより不意に呼吸用保護具をずらしてしまうなどして高濃度の化学物質にばく露した可能性があること
2 夏期の高温下では有機溶剤濃度が上昇し、呼吸用保護具の防護能力を超えた可能性があること
3 十分な換気のための措置がされていなかったこと
4 単独作業のため意識を失ったときに発見が遅れたこと
【対策】
1 有機溶剤濃度も上昇し熱中症のリスクも高くなるため、夏期(特に午後)などWBGT値が高い暑熱環境下での剥離剤の噴霧作業は基本的に避ける
2 作業場所と保護具の性質上、作業中の水分補給ができないため、熱中症の危険を避け、暑さのあまり無意識に保護具をずらしたりしないためにも、頻繁に休憩時間を設ける
3 塗膜由来の汚染物質を広めないために密閉化を行う場合でも、有機溶剤中毒のリスクをできるだけ低減するために可能な限り広い空間を確保する
4 密閉化を行う場合には送気マスクや強力な換気装置を使用して、常に新鮮な空気を供給する。送気マスクの使用に当たっては、送気ラインを潰したり絡めたりしないように十分注意するほか、発動機の排ガスをコンプレッサーが吸入しないように(一酸化炭素中毒対策)適切な距離を空けるなどの基本的な安全対策にも十分注意する。また暑熱期は、可能であれば、空調装置により送気を冷やすことも検討する
5 送気マスクの使用が困難な作業場で、防じん防毒マスクと強力な換気装置を併用する場合は、マスクの吸収缶が破過しないように頻繁に交換する
6 作業者が体調不良に陥った場合に速やかに作業を中断させ救助できるように、監視者を置き、単独では作業させない。有機溶剤の蒸気は足下に滞留するため、意識を失って転倒した場合に発見が遅れると、高濃度の有機溶剤の蒸気により死亡したり重篤な後遺症が残るリスクが高くなる
【業種】
建設業
【被害者数】
休業者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)
被災者が、移動式クレーンに取り付けた搭乗設備に乗り、高所の枝打ち作業中に、搭乗設備から墜落し死亡
2022/09/22
【労災概要】
被災者が、移動式クレーンに取り付けた搭乗設備(高さ約10メートル)に乗って、伐木予定のヒノキの枝打ち作業を行っていた。休憩のために作業を中断し、地上に降りるため、被災者自ら移動式クレーンを操作してジブの格納を開始した際、バランスを崩し搭乗設備から地上に墜落した。被災者は病院に搬送されたが、その後死亡した。
ジブを格納する際、先端に取り付けた搭乗設備の水平機構(搭乗設備の水平を保つ機能)が無効になっていた。そのため、ジブの格納開始と同時に搭乗設備が大きく揺れ、被災者の上半身が木の枝に当たり、体勢を崩し、墜落したものと考えられる。被災者は墜落制止用器具を装着していたが、フックは掛けられていなかった。
【原因】
1 高所作業を行うための設備として、移動式クレーンのジブ先端に取り付けた搭乗設備を使用し、ジブ格納時に搭乗設備の水平機構を無効にしていたこと
2 墜落抑止用器具のフックを外していたこと
【対策】
1 高所での作業について、高所作業車を使用するなど、より安全な方法を検討すること
2 高所での作業では、墜落抑止用器具の適切な使用を徹底させること
【業種】
その他の土木工事業
【被害者数】
死亡者:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)