ボイラー洗浄時の1,4-ジクロロブテンのばく露による薬傷
【労災概要】
クロロプレンモノマープラントの異性化反応器に付属する2基の異性化反応器リボイラーのチューブ内のジェット洗浄作業を行った被災者が、作業終了後、身体の皮膚の各所が赤くなり眼が充血していることが確認され、病院に搬送された。治療のため入院していたが、災害発生3日目に、化学物質による熱傷性ショックの疑いで死亡した。チューブ内容物は、1,4-ジクロロ-2-ブテン(1,4-DCB)が約85%である。保護帽、有機ガス用防じん機能付き吸収缶を付けた全面形防毒マスク、雨合羽、ゴム手袋、ゴム長靴を着用していた。
【原因】
1 適切な保護具未着用
2 保護具管理不足・点検不備
3 作業標準書・マニュアルの不備
4 作業主任者・管理責任者等の指示内容の検討不足
【対策】
- 1 チューブ内のジェット洗浄作業で1,4-ジクロロ-2-ブテン(以下、1,4-DCB)のばく露するおそれがある作業を行うときは、以下の①及び②のように作業手順を見直す等により、同作業を行う労働者に可能なかぎり1,4-DCB含有のジェット洗浄水が跳ね返らないようにすること。
・ジェット洗浄作業前は、ジェット洗浄作業以外の方法で、あらかじめ、チューブ内の1,4-DCB含有の液溜まりやスケールを少なくすること。
・ジェット洗浄作業中は、ジェット洗浄ノズルに、お椀型のカップのような、ジェット洗浄水が跳ね返ることを防止する装置を付けること。
・計時的にジェット洗浄水の圧力を上げていき、ジェット洗浄水が跳ね返らない序盤にDCBを洗い流してしまうこと。
2 チューブ内のジェット洗浄作業のごとく1,4-DCBにばく露するおそれがある作業に従事する労働者に着用させる雨合羽等の保護具の隙間から1,4-DCBが侵入しないよう、隙間を可能な限り塞ぐとともに、被災者が着用していた雨合羽よりもDCBに対して不浸透性である保護衣を同作業に従事する労働者に着用させることを検討すること。
3 チューブ内のジェット洗浄作業のごとく1,4-DCBにばく露するおそれがある作業に従事する労働者に着用させる保護衣は使い捨てとすることが望ましいこと。また、保護衣を使い捨てにできない場合、1,4-DCBにばく露した可能性がある保護衣の表地を洗うときには、洗浄廃液を保護衣の裏地に付着させないこと。
4 チューブ内のジェット洗浄作業のごとく1,4-DCBにばく露するおそれがある作業に従事する労働者が着用する雨合羽等の保護具の隙間に1,4-DCBが侵入した可能性があるときには、当該労働者にその旨を関係労働者に自己申告させ、関係労働者は当該労働者にジェット洗浄作業を止めさせ、当該労働者への1,4-DCBのばく露の有無を確認させること。
【業種】
建設業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)
ダム建設工事現場の排水管工事において、被災者が墜落防止用の手すりの解体作業中に、手すりと共に高所から墜落して死亡した
【労災概要】
ダム建設工事現場の排水管工事において、被災者は擁壁上の手すりを撤去する作業を行っていたところ、墜落制止用器具を掛けていた手すり(単管をクランプで固定し、ロの字型にした囲い手すり)が倒壊し、手すりと共に約10m下の水路に墜落した。被災者は病院に搬送されたが、その後死亡した。
本来であれば、単管の接続は直交クランプで行うべきだったが、事故発生時は4箇所のうち1箇所に自在クランプが使われており、手すりは軽い力で倒れる不安定な状態であった。また、手すりの建地は擁壁に固定されていなかった。
【原因】
1 墜落抑止用器具を使用させるための取り付け設備を設け、解体作業の開始から終了までの間、労働者の墜落の危険を防止するための措置を講じていなかったこと
2 直交する単管同士(建地と下さん)の固定に用いたクランプの1つが、直交クランプではなく自在クランプであったこと
3 建地と下さんの固定に自在クランプが使用されていることを、関係者が把握していなかったこと
【対策】
1 手すり等を設けて解体作業等を行うことが著しく困難な場合は、墜落制止用器具を使用させるための取り付け設備を設け、解体作業の開始から終了までの間、これを使用させる等の労働者が墜落する危険を防止するための措置を講じること
【業種】
その他の建設業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)