建設業の労災事例

高速道路のトンネル工事中に切羽から岩石が落下し下敷になる

   

【発生状況】

この災害は、高速道路のトンネル工事において発生したものである。

このトンネルは、全長が約3,200mのもので両側から掘削が行われており、被災者の所属する会社はJVの1次下請として東側からの掘削工事を請負っていた。

作業は、TBM工法(トンネルボーリングマシーン工法)で貫通した導坑を、上半先進ベンチカット工法により切り広げるものであった。

災害発生当日、被災者ら7名は、午後5時30分からの2番方として2次下請(11名)とともに総勢18名が現場に集合し、午後6時から現場事務所でKYK(危険予知活動)を行った後、坑口より約390m地点の切羽において上半掘削の作業に着手した。

作業の具体的な内容は、1番方が切羽の鏡面を含めた壁面のコンクリート1次吹き付けと支保工の建て込みまで行っていたので、コンクリートの2次吹き付け、ロックボルトの打設、削孔、発破、ずり出し、浮石除去、コンクリート吹き付け、支保工立て込みの順で行うことであった。

KYKの終了後、午後7時まで支保工部分への2次吹き付けを行い、引き続きホイールジャンボで午後8時まで同じ箇所へロックボルト施工を行った後、発破のための削孔(約20個)を行ったが、この作業は約20分で終了したので、削孔穴の掃除、装薬に取り掛かった。

この装薬が残り5個程度となったときに、切羽鏡面に向かって左側下部で装薬作業を行っていた被災者の上部約5mの所から肌落ちが生じ、被災者は落ちてきた岩(0.5m×0.5m×0.3m:推定質量180kg)が脚部にあたって転倒したところへ、さらに大きな岩(1.2m×1.2m×0.4m:推定質量1,440kg)が落下してきて背部にあたり下敷きになった。

その後、被災者は、近くで作業を行っていた同僚たちに救出されて病院に移送され、手術・入院となったが、意識が戻らないまま1週間後に肺挫傷等のため死亡した。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 肌落ちしやすい地質であったこと

災害が発生した切羽は、凝灰岩で風化が進んでおり、また、粘土が介在していることもあって、もともと肌落ちしやすい地質であった。

なお、当日の削孔作業に取り掛かる前に、鏡面の右側上部から小崩落があったことから、この部分の下部を削孔する際にはホイールジャンボの移動足場で作業員の頭上を防護する措置を講じていた

2 先番からの申し送り事項を確認して作業を行わなかったこと

先番からは、切羽全体の地山全体が不安定で肌落ちがあるため、中央下部の発破量を少なくして、切羽鏡面の下部を残し気味にして安定させるように等の申し送りがあったが、この申し送り内容について作業開始前に検討して、浮石の撤去等の安全な作業方法を定めてはいなかった。

3 切羽の事前の点検、監視が行われていなかったこと

この作業では、ずい道作業主任者が選任されていたが2台のホイールジャンボの間で材料等の片付け作業を行っており、また、監視人として指名されていた者も火薬係が兼務であったため、作業主任者と同様の場所で残薬等の片付け作業に従事していて、監視人としての職務を行っていなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 施工計画を明確に定め作業を行わせること

ずい道等の作業を行う場合には、あらかじめ落盤、出水等の状況を調査し、それに基づいた施工計画を定めて作業を行わせる。また、作業の途中において危険が予測されるときには、施工計画を変更した上で作業を行わせる。(安衛則第379、380、383条関連)

2 点検者を指名して落盤等の危険の有無を点検させること

点検者を指名して、ずい道内部の地山について、毎日(および中震以上の地震の後)、浮石および亀裂の有無および状態等を点検させる。(安衛則第382条関連)

3 落盤等による危険防止措置を確実に実施すること

落盤又は肌落ちにより危険が予測されるときには、ずい道支保工を設け、ロックボルトを施し、浮石を除去する等の措置を講ずることが必要であるが、特に肌落ちしやすい地質等作業現場の状況に応じて落石除去等の徹底を図る。(安衛則第384条関連)

また、元方事業者は、関係請負人が行うずい道の建設の作業については、落盤、肌落ちによる危険を防止するため、上記の措置を行った上で作業を行わせる。(安衛則第651条関連)

4 ずい道等掘削等作業主任者の職務の励行を行わせること

ずい道等掘削に際しては、ずい道等の掘削等作業主任者を選任するとともに、次の職務を確実に行わせる。(安衛則第383条の2,383条の3関連)

(1) 作業方法及び労働者の配置を決定し、作業を直接指揮すること

(2) 器具、工具、安全帯および保護帽の機能を点検し、不良品を取り除くこと

(3) 安全帯および保護帽の使用状況を監視すること

【業種】

トンネル建設工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100808より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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ビルの高圧受変電設備の改修工事中に充電されていた断路器のブレードに触れ感電

   

【発生状況】

この災害は、ビルの電気設備の改修工事において発生したものである。

この工事は、約5か月かけてビル内にある高圧受変電設備(キュービクルタイプ)、非常用発電設備等のリニューアルを行うもので、建物全体の工事を請け負った建設会社から電気設備会社Aが一括して受注し、一般電気工事の作業を別の会社Bに発注したが、実際の作業の一部は工事応援という形で被災者の属する会社Cの3名が行っていた。

災害発生当日、被災者らは、前日に引き続き午前7時から一般電灯系について停電による作業を行い、この作業は午前中に終了した。午後からは午前の休憩のときにB社から当日の追加の作業として指示された「高圧発電引込盤の中に中央監視室用の信号ケーブルを引き込む」作業をB社の作業指揮者と被災者および同僚で行うことになった。

引き込み作業は、高圧発電引込盤(幅80cm,高さ230cm)の上方にあるラックから信号ケーブルを引込盤上の穴(直径10cm)に差し込み、それを下で引き込む方法で行われるものである。最初は同僚がラック上で、指揮者は断路器への接触防止用に取り付けてあったアクリル板を取り外して引込盤上のところで引き込む作業を行い、被災者は指揮者の後ろで作業を見ていた。

ところが、ケーブル8本を引き込んだところで、指揮者はケーブルが2本足りないことに気づいた。指揮者は被災者らに2本のケーブルの追加引き込みと、全ての引き込みが終わったところで止め具を用いて整線するよう指示し、「活きているかも知れないから注意するように」と言った後、地下2階で行われている他の作業箇所の巡視を行ってから地下1階の工事事務所に戻った。

残った2人は、2本のケーブルをラック伝いに配線した後、同僚が引き続いてラック上で、被災者が責任者の行っていたケーブルを引き込む作業を行っていた。同僚が2本目のケーブルを差し込んだ午後2時20分頃、突然ビル全体が停電となった。

このとき、被災者は、高圧発電引込盤の裏側にある一般電灯用の配電盤にもたれ掛るようにして倒れていた。そのため直ちに救出して病院に移送したが、2時間後に電撃症のため死亡が確認された。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 絶縁防護措置が行われていなかったこと

被災者が電撃を受けて死亡した直接的な原因は、充電状態にあつた断路器のブレードに接触したものと推定されるが、信号ケーブルをキュービクルタイプの高圧発電引込盤に差し込む作業の際、断路器への接触防止用のアクリル板を取り外したのに、断路器のブレード部分を絶縁用防具等により防護しなかった。

2 作業計画が明確に定められていなかったこと

災害は、当日の作業予定にはなかった信号ケーブルを高圧発電引込盤に引き込む作業で発生した。一連の作業計画の中でこの作業を停電で実施するのか、活線近接の作業で行うのかの計画が定められていなかった。

また、翌日の作業計画については、前日の午後に電気工事一式を請け負った会社からビルのリニューアル工事全体を請け負った建設会社に日報の形で提出するようになっていたが、形式的で計画の変更の手順等についての定めもなかった。

3 作業者が充電部分を認識しないまま作業を行ったこと

被災者は、信号ケーブルを高圧発電引込盤に引き込む作業を作業責任者の後を引き継いで行っていて被災した。その作業について特段の説明、指示を受けることなく、直前に見ていた動作を真似て作業を実施したもので、充電部分があることを認識していなかった。

4 安全管理が行われていなかったこと

電気設備に関する一連のリニューアル工事は、銀行に電気を供給していることから、全停電で行うことが難しく、必然的に活線近接作業が予測されていた。しかし、感電防止に関する安全管理等について関係会社間で十分な連絡調整を実施していなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 作業計画を明確に定めること

既設の受変電設備の改修工事を行う場合、ビル全体を全停電で行うことが難しい場合も少なくないので、工事全体を通じた停電、一部停電の作業等の区分をあらかじめ検討し、その検討結果に基づく毎日の作業計画を明確に定め、関係作業者にその日の作業を開始する前(前日および当日)に周知徹底する。

2 停電の確認と充電部分を絶縁防護すること

電路を開路して電路またはその支持物の敷設、点検、修理等の作業を行う場合には、電路の電圧に適合した検電器具により停電を確認し、短絡接地を行う。(安衛則第339条)

また、断路器を開放しても、その片側が充電されている状態でその充電部分に接近して作業を行う必要がある場合には、充電部分に電路の電圧に適合した絶縁用防具を装着するか作業者に絶縁用保護具を着用させる。

3 作業マニュアルを定め周知すること

高圧または特別高圧の充電電路もしくは充電電路に近接してその支持物の点検修理等を行う場合には常に感電危険が伴うので、その業務に従事する者に対してあらかじめ特別教育を実施する。

4 作業指揮者を定める等の安全管理を実施すること

充電電路に近接して作業を行う場合等には、関係作業者に対し、作業を行う期間、作業の内容ならびに取り扱う電路およびこれに近接する電路の系統について周知するとともに、作業指揮者を定めて次の事項を実施させる。

(1)   作業者にあらかじめ作業の方法および順序を周知させ、かつ、作業を直接指揮すること

(2) 電路を開路して作業を行う場合には、電路の停電の状態および電路に用いた開閉器の施錠、通電禁止に関する標示、監視人の配置の状態等を確認した後に作業の着手を命ずること

【業種】

電気通信工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.100817より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。

その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

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