排泥弁室内に持ち込まれた練炭により、被災者は、意識障害等の体調不良を訴え、救急搬送先の病院で一酸化炭素中毒と診断された
【労災事例】
災害発生前日、被災者は、農業用水路管の排泥弁室内に打設されたコンクリートが凍結しないように、養生用の練炭を排泥弁室内に持ち込んだ。被災者は、練炭に着火し、燃焼させた後屋外に戻り、マンホールに蓋をして排泥弁室内を密閉した。
翌日、被災者は排泥弁室内に置いた練炭の状況を確認するため、同室内に入った。次いで同僚作業員が入室したところ、排泥弁室内のダグタイル鋳鉄管にもたれ掛るようにぐったりとしている被災者を発見した。
発見者は、救援のため駆け付けた別の作業員とともに、被災者を救出した。被災者は意識が朦朧としていたため直ちに救急車を要請し、搬送先の病院にて一酸化炭素中毒と診断された。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 通風・換気が不十分な室内で練炭を燃焼させた後、換気を行うことなく入室して一酸化炭素を吸引したこと。
2 一酸化炭素の有害性等の安全衛生教育が不十分であり、練炭を使用する際の作業手順書を明確に定めていなかったこと。
【対策】
類似災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 自然換気が不十分な場所では、練炭、バーベキューコンロ、内燃機関、石油ストーブやガスストーブ等を使用しないこと。
2 やむを得ず、自然換気が不十分な場所で練炭等を使用するときは、換気・排気を十分に行うこと。
3 救助にあたっては、救助者は空気呼吸器又は送気マスクを着用すること。尚、一酸化炭素用防毒マスクは、酸欠が同時に発生している場合は、酸欠症に対して無効であるため使用しない。
4 一酸化炭素は、特定化学物質等障害予防規則(特化則)の第3類物質に指定されている極めて毒性の高い気体であるため、関係労働者に対し、一酸化炭素の有害性等の安全衛生教育を実施するとともに、練炭等を使用する際の作業手順書を定めること。
【業種】
河川土木工事業
【被害者数】
不休者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)