鉄骨柱の昇降タラップを登っていたとき、タラップの仮付け部分が外れ、墜落
【発生状況】
この災害は、鉄骨柱の昇降タラップを登っていたとき発生したものである。
この工事は、SRC構造の地下1階、地上10階建てのマンションの建築工事であり、被災者の所属する事業場は、鉄骨建方作業を請負った2次下請だった。
災害発生前日までに鉄骨柱0節(地下1階部分)および1節の建方が終了しており、災害発生当日は、2節の鉄骨柱5本、梁24本の鉄骨建方作業を行う予定であった。
午前8時10分頃から、鉄骨2節の鉄骨建方作業を開始し、被災者と他の作業者の2人は、クレーンで吊り上げられている鉄骨柱の下部と前日に組み立てられている1節の鉄骨柱の上部をボルトで仮締し接続する作業を行っていた。午前中このような作業を繰り返し、2節の鉄骨柱4本の組立を終了した。
11時40分頃から鉄骨柱の2節5本目の鉄骨建方作業を開始した。被災者は2節5本目の鉄骨柱に巻き付けられていたフープ筋の箇所を通過するため、安全ブロックを外し、タラップに安全帯をかけ、手をかけたところ、タラップの仮付け溶接部が外れ、タラップとともに約20m下の1階床テラスに墜落した。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 被災者が安全ブロックのフックを安全帯の口環から外し、安全帯のフックと手を同一のタラップにかけたところ、タラップが仮付けのままであったため鉄骨柱から外れたこと。
被災者は、2節の部分の仮ボルト締めが終わり吊っていた鉄骨の玉掛け用ワイヤロープを外すために、鉄骨柱2節5本目を登っていたものであるが、墜落箇所から、さらに、約1.5m登らないと、それを外す所まで届かないので移動していた。
2 現場において、タラップの点検者および有効な点検方法を明確に定めていなかったため、適切に溶接箇所の安全性の確認を行うこともなく、仮付けのままのタラップを事前に発見できなかったこと。
3 フープ筋の取付け状況が他の箇所と違っており、通過できなかったため、昇降時に安全ブロックのフックを安全帯の口環から外さざるを得なかったこと。
4 仮付け溶接のままのタラップ位置とフープ筋の取付け位置が重なって見えにくくなっていたため、溶接工がタラップの仮付け溶接の箇所を見落とし、本溶接としなかったこと。
5 鉄骨製造後の検査で、タラップの溶接不良箇所が発見できず、検査管理体制が不十分であったこと。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 鉄骨柱の昇降中は、常時、安全ブロックを使用するよう徹底すること。
2 現場において、タラップの溶接状況を点検する者を配置し、点検基準に従って適切に点検を実施すること。
3 現場において、フープ筋の取付け方法を統一化し、途中で安全ブロックのフックを外すことなく昇降できるよう、フープ筋の取付け状況を事前に確認すること。
4 鉄骨柱の昇降中に、安全ブロックを確実に使用できる作業方法を定め、その作業方法を全員に周知励行させること。
5 タラップの取付け位置とフープの取付け位置とが重ならないよう配置方法を検討し、溶接不良を防止するための作業標準書を作成して、溶接作業者に点検確認を徹底すること。
6 タラップの溶接部の検査方法を見直し、検査が確実に実施されるような検査管理体制を整備すること。
7 日常のKY活動等で鉄骨建方作業における安全ポイントを教育訓練しておくこと。
【業種】
鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100799より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
建造中の排水処理槽スラブ上で作業中、開口部から転落
【発生状況】
この災害は、農業排水処理場の建設工事中に発生したものである。
この工事は、地下に埋設する農業集落排水処理槽(約10m×10m、深さ4.9m)とその上に2階建ての地上施設を建設するものであった。災害は地上施設の建設準備段階で発生した。
被災者の所属するY社は、1次下請として排水処理槽のコンクリート打設の作業を請け負っていた。
災害発生当日、Y社は、地上部の建築の際に不要なスラブ上の単管等の撤去と片付け作業を行うことになっていた。職長役の被災者と作業員4名は、午前8時10分頃に現場に到着して、元請の現場代理人から10分ほどの朝礼指示を受けた後、直ちに排水処理槽スラブ上にある単管等の片付け作業を開始し、午前10時の午前の休憩を挟んで作業を続けていた。
午前10時40分頃、被災者は2人の作業員とスラブ上で、養生用の青のビニールシート(10m×10m)をたたむ作業を行っているときに、ビニールシートで隠れていた開口部(100cm×60cm)から4.9m下の排水処理槽内のコンクリート床まで転落した。
転落直後、被災者は意識があったが、救急車で病院に移送されて間もなく脳挫傷等により死亡した。
なお、当時、スラブ上には、排水処理槽内部に施した防水材の乾燥と点検のために大小(大きいもので500cm×60cm)20個の開口部が設けられていた。そのうち14個については覆いが設けられていたが、残りの6個は開放されたままであった。
また、当日の作業に従事したのは、被災者の他は日本姓を名乗る東南アジア系の外国人であったが、不法就労のためか災害発生後には行方が不明になった。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 開口部に覆いが設けられていなかったこと
災害の直接的な原因は、排水処理槽スラブ上を覆っていたビニールシートを片付ける作業の前に、開口部に覆い等を設けなかったことである。
なお、開口部は、排水処理槽内に塗布した防水材の乾燥等のために設けられていたものであるが、その乾燥状況も確認しないまま作業に着手したことも間接的な原因といえる。
2 朝礼の指示を守らなかったこと
この現場はJV(共同企業体)で施工されていた。現場に常駐しているのは 現場代理人 1名だけで、当日の朝礼でこの現場代理人が開口部を覆ってから片付け作業を行うように指示していたにもかかわらず、被災者らはその指示に従わずに片付け作業を行った。
3 作業手順が定められていなかったこと
当日の作業について、排水処理槽内部の乾燥状況の確認、開口部の覆い等の設置などの一連の作業手順が定められていなかった。
4 元請も安全管理を行っていなかったこと
現場代理人は、朝礼のときに開口部の覆いについて指示はしていたが、片付け作業を指示通りに行っていないことを承知していたのに、改めて作業の中止、覆いの取り付け等の具体的な是正指示を行わなかった。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 墜落危険箇所の防護を確実に行うこと
高さが2m以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれがある箇所には、囲い、手すり、覆い等を設ける。(安衛則第519条、第653条関連)
なお、囲い等を設けることが著しく困難なとき又は作業の必要上臨時に囲い等を取り外すときは、防網を張り、労働者に安全帯を使用させる等の措置を行う。
2 作業計画を作成し徹底すること
片付け作業など作業の内容が比較的単純な場合には、作業の計画・手順を定めずに口頭指示だけで作業を行わせることが少なくない。作業床の端、開口部等、墜落の危険がある場所で作業を行わせる場合には、墜落防止措置の具体的な実施方法等について作業計画・作業手順を定め、関係労働者に徹底する。
3 元方事業者として安全管理を実施すること
元方事業者は、関係請負事業者の労働者に対して作業内容の指示を行うだけではなく、請負事業者として実施すべき安全対策について指導等を行うとともに、随時に作業場所を巡視し必要な指示、指導を行う。
また、複数の下請が同一の場所で作業を行う場合には、作業間の連絡調整等を行う。(安衛法第30条、安衛則第636条関連)
4 安全教育を実施すること
事業者は、作業現場で指揮監督する者に対して、あらかじめ安全衛生に関する教育(職長教育)を実施するとともに、関係作業者に対しても必要な安全衛生教育を実施する。(安衛法第59,60条関連)
【業種】
その他の建設業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.100800より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
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