農業用排水路の改修工事で、排水路内を不整地運搬車で走行中に橋に激突
2023/03/17
【労災概要】
この災害は、既設の農業用排水路をコンクリート製に改修する工事で、掘削した土砂を不整地運搬車で運搬する作業中に発生したものである。
災害発生当日は、排水路の底にたまった土砂の掘削、搬出作業の初日であった。作業内容は、土砂を掘削する排水路の中に小型のドラグ・ショベル1台および不整地運搬車(最大積載量0.9t)1台を入れ、ドラグ・ショベルで掘削した土砂を不整地運搬車で運搬して排水路内の1箇所に集積し、これをドラグ・ショベルで排水路の横に配置したダンプトラックに積み込み、土捨場に運搬するというものであった。
当日は、工事を請け負ったZ社の現場代理人Aと作業者B~Dが朝礼で作業方法と役割分担を確認した後、作業を始めた。役割分担は、Bが不整地運搬車を、Cがドラグ・ショベルを、Dがダンプトラックを運転するというものであった。Aは作業が始まると同時に現場を離れた。
午後5時頃、辺りが暗くなってきたため、この日の作業を終えることになり、Bは最後の土砂を運搬するため不整地運搬車をバックで運転していたところ、土砂の集積場所を通り過ぎ、排水路に架けられていたコンクリート製の橋に激突した。
不整地運搬車が集積場所を通り過ぎたことに気づいたCとDが駆け寄ってみると、Bは橋と荷台の握り棒の間にはさまれており、直ちに病院に搬送されたが、死亡した。
Bは、車両系建設機械の運転資格はあったが、不整地運搬車の運転資格はなかった。Z社では、作業者の資格の確認は行っていたが、通常、不整地運搬車を使用する工事を行っていなかったため、不整地運搬車の運転資格は確認していなかった。
この工事については、工事計画書の作成や安全な作業方法の検討は行われておらず、作業方法や役割分担が、当日の朝、Aから作業者に口頭で指示されただけであった。
【原因】
この災害の原因としては、次のことが考えられる。
1 工事計画の作成や安全な作業方法の検討を行わなかったこと
2 資格がない作業者に不整地運搬車を運転させたこと
3 現場代理人が作業の監視を行っていなかったこと
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 安全な作業方法を検討した上で作業計画を定めて作業を行うこと
工事を行う前に予想される危険や安全な作業方法を検討した上で工事計画書を作成し、その内容を関係作業者に徹底する。激突するおそれのある構造物がある場合は、土砂の集積場所を離すか柵を設置する等の対策を行った上で工事を始める。
2 工事で使用する建設機械や荷役運搬機械は運転資格を有する者に運転させること
不整地運搬車を運転する作業者は、最大積載量が1t以上のものは技能講習を修了していること、1t未満のものは特別教育を受講していること、がそれぞれ必要であるので、計画の段階で作業者の資格の有無を確認し、無資格者には運転させないようにする。
3 責任者が作業状況の監視、確認等を行うこと
現場の責任者は、作業状況を監視、確認し、災害が発生しないよう必要に応じて作業者に指示を行う。
なお、一の荷でその重量が100kgを超えるものを不整地運搬車に積み下ろしをする場合には、作業の指揮者を指名し、次の事項を行わせる必要がある。
[1] 作業手順および作業手順ごとの作業の方法を決定し、作業を直接指揮させること
[2] 器具および工具を点検し、不良品を取り除くこと
[3] 当該作業を行う個所には、関係作業者以外のものを立ち入らせないこと
[4] ロープ解きの作業およびシート外しの作業を行うときは、荷台上の荷の落下の危険がないことを確認した後に当該作業の着手を指示すること
[5] 最大積載量5t以上の不整地運搬車への荷の積み下ろしのため作業者が床面と荷台の間を昇降する設備および保護帽の使用状況を監視すること
【業種】
その他の土木工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
橋の路面改修後の点検作業中、走行してきたトラックと接触して死亡
【労災概要】
この災害は、橋梁の路面改修工事終了後の点検作業中に発生したものである。
災害発生当日、路面改修工事を請け負ったZ社の道路舗装工事部門の責任者であるAは、橋梁の路面改修工事のために走行車線の切替え作業が行われることから、これを監督することになり、いったん本社に出勤したのち午前9時半頃に現場に到着し、午前中は車線切替え作業を監督した。
午後は、午前中に終了した車線切替え作業で使用した車両規制用の標識等の撤去作業が開始され、Aはその状況を監督していた。Aは、柵で仕切られた工事用の占有場所内で残された標識等がないことを確認した後、柵を乗り越えて走行車線に立ち入り、走行車線に標識等が残っていないか点検をしていたとき、走行してきた4tトラックの側面に接触して5mほど引きずられた。Aは直ちに病院に搬送されたが、その後、死亡した。
Aは被災したとき、橋梁上の切替え車線の分岐個所に設けられた導流帯(ゼブラゾーン)の上に立っていたが、午後の作業でゼブラゾーン上に作業者が立つことは想定していなかったため、ゼブラゾーンと走行車線の境にはバリケード等は設けられていなかった。
現場の工事責任者は、車線切替え作業が午前中に終了したことから、午後は他の作業の打合せを行っていて、標識等の撤去作業には立ち会っていなかった。また、この工事現場には2名の交通誘導員が配置されていたが、車線切替え作業時に一般車両の誘導を行うよう指示されており、車線の切替え後には避難させられていた。
現場では、毎日の朝礼時に作業者や交通誘導員の配置、当日の作業スケジュールと現場の状況について、工事責任者が関係作業者に指示していたが、本社からの監督者にはこれらの指示事項を伝えていなかった。
また、Z社は、Aら本社の管理部門の労働者に対して、交通安全、監督時の安全確保等についての安全衛生教育を実施していなかった。
【原因】
この災害の原因としては、次のことが考えられる。
1 Aが監督中に走行車線に立ち入ったこと
Aは、工事部門の責任者として、走行車線の切替え作業やその後の標識等の撤去状況を監督していたものであるが、そのとき、すでに一般車両の走行が可能になっていた車線に立ち入った。
2 走行車線の切替え作業について、監督者の動きも含めた作業手順を定めていなかったこと
走行車線の切替え作業時の人員配置、交通誘導員の配置等については、朝礼時に工事責任者が関係作業者に指示していたが、本社からの監督者とは事前の打合せがなく、その動きを含めた作業手順となっていなかった。
3 本社の管理部門の労働者に対する安全衛生教育が行われていなかったこと
Aは、自らが管理する現場について、それまでにも監督等を行ったことはあったが、Z社はAら本社の管理部門の労働者に対し、交通安全を含め、現場の監督を行う際の安全確保等についての安全衛生教育を実施していなかった。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 走行車線への立入禁止措置を確実に行うこと
現場の作業者のみならず、すべての関係者が、一般車両の走行車線等の危険エリアに立ち入ることがないよう、バリケード等の立入禁止措置を確実に実施するとともに、作業者や関係者に対し、立入禁止を徹底する。2 走行車線の切替え作業について、監督者の動きも含めた作業手順を定めること
車線切替え作業後の状況の確認では、走行車両による危険があるので、監視範囲、時間、実施者等について打合せを行って作業手順を定め、関係作業者に周知徹底する。
なお、道路の一部を一般車が走行する道路改修工事、舗装工事等においては、走行車線から車両が飛び込む例、速度超過のため曲り切れずに交通誘導員に激突する例等が多いので、誘導員の配置と安全確保、車両の飛び込み防止柵の設置等を行う。3 監督者の安全衛生教育を実施すること
本社の管理部門の労働者は、関係請負人を含めた安全衛生確保の指導について、必ずしも十分な知識、経験を有していない場合もあるので、定期あるいは随時に管理部門の労働者の安全衛生教育を実施する。
【業種】
その他の土木工事業
【被害者数】
死亡者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp) より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
また、他にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
- ■前の記事へ
- 橋の路面改修後の点検作業中、走行してきたトラックと接触して死亡
- ■次の記事へ
- 林道の法面のコンクリート吹付け作業中、墜落し死亡