建設業の労災事例

集合住宅の室内改装工事で、接着剤に含まれていた有機溶剤の蒸気に引火し、爆発

   

【労災発生状況】

この災害は、集合住宅の室内改装工事において、接着材に含まれていた有機溶剤の蒸気に引火爆発し、労働者3人が休業災害を負ったものである。

Z社は、集合住宅の室内改装工事のうち、壁下地材設置工事とクロス貼り付け工事を二次下請として受注した。災害発生当日は、Z社の作業者3人により、壁下地材設置工事のうち結露防止用ボードの貼り付け作業が予定されており、午前中は結露防止用ボードの位置決めと切断、午後は接着剤の塗布と乾燥および結露防止用ボードの貼り付けが行われることになっていた。

作業は予定通り進み、午後3時半頃、すべての壁面への接着剤の塗布が完了した。接着剤の乾燥を待つ間、午前中の作業で傷をつけた台所床面の補修を行うことになり、作業者の一人が補修用パテを軟らかくするために加熱しようとして、ライターに火をつけたところ、突然爆破して火災となり、作業者3名が火傷を負った。

壁に塗布した接着剤には、溶剤として第2種有機溶剤であるn-ヘキサンが65~75%含まれており、乾燥中に室内に充満した蒸気にライターの火が引火し、爆発したものであった。当日は、気温が低く、玄関を除きすべての窓を締め切った状態で作業を行っており、換気も行っていなかった。

Z社では、有機溶剤を含有する接着剤を使用する作業の実施に当たり、換気の実施、火気の取り扱い等の火災、爆発および中毒の防止のための対策を盛り込んだ作業計画を作成しておらず、また、有機溶剤作業主任者も選任していなかった。

災害発生当日の作業者は3人とも、普段は木工作業を行っており、接着剤を使用する仕事は1~2回程度しか行った経験がなく、有機溶剤の危険有害性についての知識がなかった。また、Z社では改装工事に従事させる作業者に対し、有機溶剤を含有する接着剤の安全な取扱い等を含む安全衛生教育を実施していなかった。

【原因】

この災害の原因としては、次のことが考えられる。

1 有機溶剤の蒸気が充満した室内でライターの火をつけたこと

作業者が有機溶剤の危険性を認識していなかったため、有機溶剤の蒸気が充満した室内で、ライターの火をつけたため爆発した。

2 作業計画を作成せずに作業を進めたこと

Z社では、有機溶剤を含有する接着剤を使用する作業の実施に当たり、火災、爆発および中毒の危険に配慮した作業計画を作成していなかった。また、有機溶剤作業主任者も選任されず、作業者任せで作業が行われていた。

3 安全衛生教育を実施していなかったこと

Z社では作業者に対し、有機溶剤を含有する接着剤の安全な取扱い等を含む安全衛生教育を実施していなかった。そのため、接着剤の取り扱い経験が少ない作業者は、有機溶剤の危険有害性についての知識がなく、危険な行為を行った。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 屋内で有機溶剤を含有する物を取り扱う場合は、十分な換気を行うとともに、火気は使用しないこと
特に、室内で接着剤等を使用する場合には、含まれる有機溶剤の量と危険有害性を事前に調査し、水溶性のもの等できるだけ危険有害成分の少ない接着剤を使用するようにすることが重要である。
やむを得ず有機溶剤を含有する物を使用する場合は、窓を開放する等により十分な換気を行うとともに作業者には火気禁止を徹底すること。

2 作業計画を作成し、作業者に周知徹底すること
事前に、作業内容や取り扱う材料等について、危険有害性を検討した上で安全な作業を行うための作業計画を作成するとともに、これを作業者に周知徹底する。

3 安全衛生管理を実施すること
接着剤に含有されている有機溶剤は、爆発の危険があるほか、人体に有害なものであり、有機溶剤の性状と危険性・有害性、換気の実施、引火源となる火気の排除、防毒マスク等個人用保護具の使用、等について関係作業者に十分な安全衛生教育を実施する。
また、作業者の中で、技能講習を修了した者を有機溶剤作業主任者として選任し、必要な職務を行わせることも必要である。

【業種】

建築設備工事業

【被害者数】

休業者数:3人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101077より一部抜粋

 

万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他、労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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石油タンクの解体中に火災

   

【労災発生状況】

この災害は、油槽所の廃止された石油タンクの解体作業で発生したものである。

災害発生当日は、8000kLの石油タンクの解体を、ドラグ・ショベルにカッターのアタッチメントを取り付けた機械で、石油タンクの側板を上部から底部まで縦方向に切断する方法で行っていた。

午後3時頃、この方法で石油タンクの上部の切断を行っていたところ、突然、石油タンクが燃え上がった。油槽所の所長は、一帯の共同防災センターの消防隊に出動を依頼するとともに、消防署に通報した。その後、消防車が到着して放水した結果、約1時間後に火災は鎮火した。なお、この火災による人的被害はなかった。

火災が発生した石油タンクは、上面が浮き蓋(フローチングルーフ)になっており、浮き蓋の直径は側板の内径より約40cm小さく、浮き蓋と側板との間にはウレタンフォームが内蔵されたゴム製の袋を充填していた。火災は、側板を切断する際に生じた火花が側板の内側に落下し、浮き蓋と側板との間に充填されたゴム製の袋を通し、ウレタンフォームに着火して起きたものである。なお、タンク内の石油は1ヶ月前に抜き取られていた。

石油タンクの解体工事を受注した元請および当日の作業を指揮していた一次下請業者は、タンク内にウレタンフォームが残っていることは知っていたが、ウレタンフォームが容易に着火することの認識がなく、側板の切断時に発生する火花による火災の発生防止を盛り込んだ作業計画書を作成していなかった。

【原因】

この火災の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 ウレタンフォームが内蔵されたゴム製の袋を除去することなく解体作業に着手したこと

元請および一次下請業者は、ウレタンフォームが可燃物であり容易に着火するものであるとの認識がなく、これを除去しないまま解体作業を行ったため、発生した火花によりウレタンフォームが着火し、火災となった。

2 火災の発生防止等を盛り込んだ作業計画書を作成していなかったこと

元請および一次下請業者は、側板の切断時に発生する火花により石油タンクの内部や周辺の可燃物が着火することを想定し、火災を防止するため予め可燃物を除去する等の措置を盛り込んだ作業計画書を作成していなかった。

【対策】

同種事故の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 燃焼するおそれのある可燃物を除去した後で切断作業を行うこと

今回の事例のように燃焼するおそれのあるウレタンフォーム等の可燃物がタンク内の構成材料として使用されている場合には、発注者と解体作業を請負った会社で情報交換を行い、可燃物を撤去した後、解体作業に着手するようにする。

2 解体対象物の材料や構造を検討し、安全な作業を行うための作業計画を作成すること

石油等の危険物を貯蔵していたタンクの解体作業を行うときには、タンク内に貯蔵していた危険物のガス、蒸気等の残存がないかを確認することはもちろんのこと、タンクおよび付属の断熱材等を構成する物について、その危険有害性をあらかじめ検討してタンクの解体方法等を決定し、作業計画書を作成する。

また、作業計画は予め関係労働者に対し周知徹底しておくことが重要である。

【業種】

その他

【被害者数】

人的被害なし

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101078より一部抜粋

また、他万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
にも労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

本日も無事故で一日を終えられますように。

 

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