建設業の労災事例

橋梁架設工事で架設桁がバランスを失い谷に落下し、桁をつっていたホイールクレーンが引き込まれ運転者が被災

   

【労災発生状況】

本災害は、農道新設工事に伴う架設桁架設工法によるPC橋(橋長116m、3スパン)架設工事において発生した。

災害発生当日は、PC桁を設置するための架設桁の組立て作業を行っていた。

災害発生時は、手延べ桁3本(30m)と架設桁本体ブロック(1本7m)を2本目まで組立ていた。その全長は44m、全重量は21.5tであった。

組立の作業スペースが橋台と橋台との間の狭い範囲に限られていたため、架設桁の1ブロックを継ぐたびに新たに取扱い部材分の作業区域を確保する必要があった。本体ブロック3本目の組立て時点では、既に空中に手延べ部分が張り出し、架設桁の重心が取りにくくなっていた。そのため、ホイールクレーン(つり上げ荷重45t)で架設桁の後端をつって傾けながら、レバーブロックを使用して約30cm谷側へ動かしたところ、突然、架設桁が滑り始め、後端を浮かせて谷へと転落した。この時、架設桁の端をつっていたホイールクレーンは、架設桁に引き込まれて前方へ転倒し、ジブを支えにして倒立した。その際、ホイールクレーンの運転をしていた作業者は、転倒を始めたホイールクレーンから飛び出し、負傷したものである。

架設桁の移動は、作業前に計算された重心位置をもとにぎりぎりの位置まで行われた。また、移動中は作業の振動や風によりバランスを失うことを想定した監視は行われていなかった。さらに、実際の重心位置は後端をつり上げることにより計算よりも前方(谷側)にあった。

なお、本工事の計画段階では、工法の安全性などについての事前審査は行われていなかった。

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 架設桁の重心が計算結果よりもずれていたが、計算結果のみに頼って作業したこと

架設桁の後端をホイールクレーンでつり上げていたため、架設桁後部の重量が軽減され、その分だけ重心が計算結果よりも前方にかたよっていた。

さらに、架設桁を計算結果のみに頼って不安定になる直前まで移動し、振動や風の影響の検討や移動中の監視を行っていなかった。

2 計画段階で工事の安全性の評価が行われていなかったこと

この工事では、元々作業スペースが狭く作業方法の制約が大きかったにもかかわらず、工事の計画段階において工法などの安全性についての事前評価(セーフティ・アセスメント)が行われていなかった。

【対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 架設桁の転倒防止や逸走防止の措置を講じること

架設桁を移動するときには、ワイヤー等で転倒防止や逸走防止の措置を講じる等、工法に応じた安全な作業方法を定めて、これに従って作業する。特に安全を軽視した作業や安全率がぎりぎりとなるような作業を行わないことが重要である。

2 施工計画は、安全性の事前評価(セーフティ・アセスメント)を実施して決定すること

橋梁の工事については、その計画段階において、工法および作業の安全性について事前評価を確実に実施することが必要である。なお、PC橋梁の架設工事については、厚生労働省指針(昭和63年基発第136号)を参考にすること。本災害のように、狭い土地のため特殊な作業方法を取らざるを得ない場合は、特に十分な事前評価が必要である。

【業種】

橋梁建設工事業

【被害者数】

休業者数:1人

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101020より一部抜粋

 

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その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。

 

 

 

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建築工事で荷をつり上げ中に地盤が沈下してホイールクレーンが転倒

   

【発生状況】

本災害は、社会福祉施設の建築工事において、ホイールクレーン(つり上げ荷重50t)で荷をつり上げて旋回中、アウトリガー直下の地盤が沈下して、クレーンが転倒し、移動式クレーン運転士が負傷したものである。

災害発生当日は、現場入口付近に堆積してある埋戻し用土砂を入れたワイヤモッコをホイールクレーンでつり上げ、運搬する作業を行っていた。1回目の作業で、土砂約760kg(約0.4m3 )を入れたワイヤモッコをホイールクレーンでつり上げ、ブームを下げながら右旋回しようとしたところ、転倒モーメント90%の警報が鳴り、さらに転倒モーメント100%の警報が鳴って過負荷防止装置が働き一部機能が停止したが、旋回は可能だったため右旋回したところ、ホイールクレーンが運転席前方に傾き転倒した。このとき、建物側に張り出した前後のアウトリガー下の地面が10~15cm沈下していた。ホイールクレーンが置かれた場所は、建物基礎工事で一度、掘削された後に埋め戻されており、地盤の強度、整地状態等は十分でなかったため、アウトリガーの下には、コンパネ、鉄板、木材等を敷き地盤の養生をしていた。

なお、移動式クレーン運転士は、元請とホイールクレーンを所有する会社との間で運転手付きのリース契約が交わされ、現場に派遣されていた。

【原因】

この原因の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 ホイールクレーンを設置した地盤は、建物基礎工事で一度、掘削された後、埋め戻されたものであり、その強度、整地状態等が十分でなかったこと

ホイールクレーンのアウトリガーの下には鉄板、コンパネ、敷角(19×19×80cmの木材)等を敷いていたが、これらの地盤養生にも関わらず埋戻し土の強度が十分でなく、地面が沈下した。

2 ホイールクレーンの旋回中に過負荷防止装置の警報が鳴ったにも関わらず、旋回を中止しなかったこと

移動式クレーン運転士は、過負荷防止装置の警報が鳴った後も、引き続き操作が可能であった右旋回を行った。

【対策】

同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 ホイールクレーンの設置場所は、埋戻し地盤を避けること

埋戻し地盤は、転圧、締め固め、整地が不十分な場合があり、アウトリガーを張り出したときに地面が沈下するおそれがある。この場合、たとえ、鉄板等で養生したとしても、鉄板等の全体にわたり地面が沈下する可能性がある。このため、今回のようなケースでは、建物から距離を離し、埋め戻しをしていない場所にホイールクレーンを設置することが必要である。

また、埋戻し工事を適正に行うことも不可欠であり、施工計画書に従い埋戻しの一層の厚さを適正に管理し、転圧、締め固めを入念に行い、地表面ではくぼみができないように平らに埋め戻すことも重要である。

2 ホイールクレーンの過負荷防止装置の警報音が鳴ったら、速やかにその作業を中止すること

警報が鳴ったら一旦、作業を中止することは、ホイールクレーン操作の基本的な安全遵守事項であり、新規入場者教育時、毎朝の朝礼時等において移動式クレーン運転士に繰り返し教育する必要がある。

【業種】

鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業

【被害者数】

なし

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)

No.101021より一部抜粋

 

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