トラッククレーンでつり上げ作業中、突風で補助ジブが折れ、つり荷が落下
【発生状況】
この災害は、建築工事現場において、トラッククレーンでつり上げ作業中に補助ジブが折れ、つり荷が落下したものである。
災害発生当日は、トラッククレーン(つり上げ荷重100t)が現場に設置され、折板と呼ばれる長尺な屋根材をつり上げる作業が行われていた。この折板とは、コイル状の鋼板を現場で折り目を付けて成型した屋根材である。当日は、風が強く、常時、風速8m/秒程度の風が吹いていた。災害が発生したときのつり荷は、長さ36mの折板2枚であり、重量は2枚で460kgであった。つり上げ作業には天秤と呼ばれる長尺物用のつり具(重量720kg)が用いられた。したがって、荷重の合計は1.18tであった。この荷を3m程度つり上げたときに、突風が吹いて補助ジブが折れ曲がり、つり荷が落下した。
災害発生したとき、主ジブの先に補助ジブが取り付けられていたが、クレーンの過負荷防止装置には補助ジブの使用が入力されていなかった。そのため、突風により負荷が増加し、定格総荷重を超えたときに、過負荷防止装置が正常に機能しなかった。
なお、この災害による死傷者はなかった。
【原因】
この災害の原因として、次のようなことが考えられる。
1 突風により過荷重となったこと
水平に吊られた折板が風によって傾き、風荷重の鉛直分力を増加させた。特に本災害の例では、つり荷の折板が36mと長尺であったために、風による荷重増加が大きかった。
2 過負荷防止装置が正しく設定されていなかったこと
主ブームの先に補助ジブが取り付けられていたにもかかわらず、補助ジブの使用が過負荷防止装置には入力されてなく、誤った設定となっていた。そのため、突風によって荷重が増加した際に、荷重が定格総荷重を上回り、補助ジブの限界強度に到達した。このとき、過負荷装置が正常に機能しなかったために、過荷重となったことを知ることができなかった。
3 安全な作業方法について、関係労働者に教育されていなかったこと
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 強風時における長尺な荷のつり上げを行わないこと
クレーン等安全規則第74条の3では、強風時の作業中止を規定している。規定では強風を10分間の平均風速が10m/秒以上と定義しているが、クレーンの構造や、つり荷の形状等により、風による危険性の程度は異なる。したがって、風による荷の揺れや回転により、危険が労働者に及ぶおそれのあるときは作業を中止しなければならない。特に、定格荷重に近い質量の荷をつり上げる作業では、風圧による荷の動揺が作業半径を増大させ、定格荷重を超える場合があるので注意が必要である。
2 過負荷防止装置には正しい作業条件を入力すること
大型機械を安定させた状態で操作するためには、人間の感覚のみでは困難である。安全な操作を行うために、過負荷防止装置には正しい作業条件を入力するなど、安全装置を正常な状態で機能させることが重要である。
3 安全な作業方法について、関係労働者に教育すること
クレーン作業を行う際の風による危険、過負荷防止装置の使用等、安全な作業方法について、関係労働者に教育を行うことが必要である。
【業種】
その他の建設業
【被害者数】
なし
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.101025より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
クローラクレーンが自走中に転倒
【発生状況】
この災害は、漁港整備工事において、クローラクレーンが岸壁から防波堤に自走して移動する際に転倒したものである。
この工事現場では、クローラクレーン(つり上げ荷重65t)を用いて、型枠にコンクリートを打設する作業、型枠の脱型作業およびコンクリートブロックの据え付け作業を行っていた。災害発生当日、クローラクレーンは、まず岸壁で行われたコンクリート打設作業に用いられ、その終了後、次の作業のために防波堤に移動した。しかし、この移動に際しては、岸壁と防波堤の間の通路が一部狭くなっているため、作業中は最大幅の4.8mとしていたクローラ幅を3.5mに縮小する必要があった。クレーン運転士は、クローラ幅を縮小した後、自走中に上部旋回体を機体後方から前方に旋回させると同時にジブ起伏角を75度に増加させる操作を行った。上部旋回体の向きが真横に位置した時、片側のクローラが浮き上がり、その後、カウンターウェイト側に転倒した。なお、この災害による死傷者はいなかった。
クローラ幅を縮小しても、前後方向の安定性は変わらないことから、クレーン運転士は、当初、バック走行であったものから、自走方向を向くため上部旋回体の旋回操作を行ったものであり、旋回中に横に張り出し邪魔になるジブを起こす操作を同時に行った。
クレーンメーカーは、クローラ幅を縮小するのは、クレーンの機体の解体時と運搬時に限定しており、いずれの際もカウンターウェイトとジブを取り外すよう取扱マニュアルに明記していた。しかし、現場で用意した安全作業マニュアル等では、クローラクレーンの取扱マニュアルの内容が反映されていなかった。
【原因】
災害の発生原因として、次のようなことが考えられる。
1 クローラ幅を縮小した状態で、旋回とジブの起伏の操作を同時に行ったこと
クローラ幅を縮小した状態で、旋回とジブの起しを同時に操作したため、上部旋回体が横を向いた際に、旋回体後部のカウンターウェイトでバランスを失い、転倒した。
2 メーカーが推奨するクローラクレーンの安全な操作方法を作業マニュアル等に反映していなかったこと
メーカーが、クローラ幅を縮小したときの安全な取り扱い方法について取扱マニュアルに明記していたにもかかわらず、その内容が作業マニュアルに反映されていなかったため、結果として誤った操作が行われた。
3 クレーン運転士に対し、作業マニュアルに基づく安全教育が行われていなかったこと
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 誤った方法で使用しないこと
メーカーは、クローラ幅の縮小を分解と運搬時に限定しており、このときにはジブとカウンターウェイトを取り外すよう推奨しているので、この方法に従ってクレーンを正しく使用する必要がある。
2 安全な作業手順を計画すること
作業中に存在する危険を可能な限り排除した安全な作業マニュアルを用意し、その内容を作業者に周知させることが重要である。
3 作業マニュアル等については、クレーン運転士等関係労働者に対し十分教育しておくこと
【業種】
港湾海岸工事業
【被害者数】
なし
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.101026より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
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