脚立を用いて既設配管の移設作業中、脚立が仮設配線を踏み、作業者が感電
【労災発生状況】
この災害は、工場増設に伴う既存配管の移設工事において、作業者4名が感電したものである。
災害発生当日、作業者2名がアルミ製脚立を用いて、既設配管の移設作業を行っていたところ、脚立の足で200ボルトの仮設配線を踏んでしまった。そのため配線の被覆が剥がれ落ち、脚立に上っていた作業者2名が感電したものである。また、このとき感電した2名が大声を出し、脚立から墜落しそうになったため、これを助けようとした別の作業者2名がアルミ脚立に近づいた際に、脚立に触れ、この2名も感電したものである。
仮設配線は、絶縁被覆が完全ではなく、養生もされていなかった。また、作業に用いていた脚立は、滑り止めのゴムが損傷した状態であり、このため高所での作業者の動きに反応して容易に移動する状態であった。
なお、本工事において、感電による被災者の救出方法などを定めた緊急時の対応マニュアルは用意されていなかった。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 絶縁被覆が完全ではない仮設配線を使用したこと
2 仮設配線を踏まないような養生をしないまま、作業を行ったこと
3 脚立の滑り止めゴムの損傷を改善しないまま、作業を行ったこと
脚立の滑り止めゴムの損傷した脚立は摩擦抵抗が小さくなっており、作業者の動きに反応して水平移動しやすい状態であった。
4 感電による被災者の救出方法などを定めた緊急時の対応マニュアルが用意されていなかったこと
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 使用する仮設配線の絶縁被覆を作業前に点検すること
仮設配線の絶縁被覆の状況を作業前に点検し、絶縁被覆が損傷している場合には、交換または補修などの措置を講じることが必要である。
2 仮設配線を踏まないように養生をして、作業を行うこと
床を這わせる仮設配線には、これを踏むことがないように覆いをするなど養生をした上で作業を行う。
3 脚立が作業者の動きによっても容易に移動しないようにすること
脚立の滑り止めが損傷している場合には速やかに交換又は補修を行い、作業中に脚立が容易に動かないようにすることが必要である。
4 緊急時の対応マニュアルを整備すること
感電による被災者の救出方法など緊急時の対応マニュアルを整備するとともに、その内容を作業者に周知徹底すること。
【業種】
建築設備工事業
【被害者数】
休業者数:2人
不休者数:2人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.101019より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。
橋梁架設工事で架設桁がバランスを失い谷に落下し、桁をつっていたホイールクレーンが引き込まれ運転者が被災
【労災発生状況】
本災害は、農道新設工事に伴う架設桁架設工法によるPC橋(橋長116m、3スパン)架設工事において発生した。
災害発生当日は、PC桁を設置するための架設桁の組立て作業を行っていた。
災害発生時は、手延べ桁3本(30m)と架設桁本体ブロック(1本7m)を2本目まで組立ていた。その全長は44m、全重量は21.5tであった。
組立の作業スペースが橋台と橋台との間の狭い範囲に限られていたため、架設桁の1ブロックを継ぐたびに新たに取扱い部材分の作業区域を確保する必要があった。本体ブロック3本目の組立て時点では、既に空中に手延べ部分が張り出し、架設桁の重心が取りにくくなっていた。そのため、ホイールクレーン(つり上げ荷重45t)で架設桁の後端をつって傾けながら、レバーブロックを使用して約30cm谷側へ動かしたところ、突然、架設桁が滑り始め、後端を浮かせて谷へと転落した。この時、架設桁の端をつっていたホイールクレーンは、架設桁に引き込まれて前方へ転倒し、ジブを支えにして倒立した。その際、ホイールクレーンの運転をしていた作業者は、転倒を始めたホイールクレーンから飛び出し、負傷したものである。
架設桁の移動は、作業前に計算された重心位置をもとにぎりぎりの位置まで行われた。また、移動中は作業の振動や風によりバランスを失うことを想定した監視は行われていなかった。さらに、実際の重心位置は後端をつり上げることにより計算よりも前方(谷側)にあった。
なお、本工事の計画段階では、工法の安全性などについての事前審査は行われていなかった。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 架設桁の重心が計算結果よりもずれていたが、計算結果のみに頼って作業したこと
架設桁の後端をホイールクレーンでつり上げていたため、架設桁後部の重量が軽減され、その分だけ重心が計算結果よりも前方にかたよっていた。
さらに、架設桁を計算結果のみに頼って不安定になる直前まで移動し、振動や風の影響の検討や移動中の監視を行っていなかった。
2 計画段階で工事の安全性の評価が行われていなかったこと
この工事では、元々作業スペースが狭く作業方法の制約が大きかったにもかかわらず、工事の計画段階において工法などの安全性についての事前評価(セーフティ・アセスメント)が行われていなかった。
【対策】
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 架設桁の転倒防止や逸走防止の措置を講じること
架設桁を移動するときには、ワイヤー等で転倒防止や逸走防止の措置を講じる等、工法に応じた安全な作業方法を定めて、これに従って作業する。特に安全を軽視した作業や安全率がぎりぎりとなるような作業を行わないことが重要である。
2 施工計画は、安全性の事前評価(セーフティ・アセスメント)を実施して決定すること
橋梁の工事については、その計画段階において、工法および作業の安全性について事前評価を確実に実施することが必要である。なお、PC橋梁の架設工事については、厚生労働省指針(昭和63年基発第136号)を参考にすること。本災害のように、狭い土地のため特殊な作業方法を取らざるを得ない場合は、特に十分な事前評価が必要である。
【業種】
橋梁建設工事業
【被害者数】
休業者数:1人
出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (mhlw.go.jp)
No.101020より一部抜粋
万が一、労災事故が起こった場合の労災申請に関して、ご不明点がありましたらお気軽にお尋ねください。
その他労務相談等お困りごとがございましたら、当団体運営の札幌・東京の社会保険労務士法人 Aimパートナーズ (aimgroup-sr.com)へ是非ご相談ください。
本日も無事故で一日を終えられますように。