建設業の労災事例

防水塗装塗布作業中に急性トルエン中毒により死亡

   

【労災概要】

本災害は、防水塗装塗布作業中に発生した。

洗剤工場新築工事で、1階排水貯留槽ピット内を一人で防水塗装塗布作業を行う予定であった作業者(防水工)が、当該作業日の2日後に当該ピット内で倒れ死亡しているのを発見された。当該防水塗料(無溶剤型エポキシ樹脂塗料)は有機溶剤の含有重量が5%以下の塗料であったが、希釈するのにトルエンを使用した。災害発生当初は死因が判明しなかったが、後日、司法解剖の結果から、死因は急性トルエン中毒であった。

【原因】

1 危険性の高いピット内作業を単独で行ったこと。

2 無溶剤の防水塗料をトルエンで希釈しピット内に持ち込んだこと。

3 排水処理室内のマンホール付近には使用を指示された送風機(ポータブルファン)が設置されていたが、稼動させていなかったこと。

4 当該作業場内の道具置場に保護具(防毒マスク)が用意されておらず、また、着用されなかったこと。

5 有機溶剤作業主任者が防毒マスク着用、全体換気装置の設置など作業方法の決定を行わなかったこと。

6 工事打合簿には安全衛生指示事項としてピット内単独作業禁止と記載されており、元請は当日の稼動人員が1名と単独作業を事前に知りえていたが是正されていなかったこと。

7 元請の作業指示、管理が不徹底、作業終了点呼、作業箇所巡回をしなかったこと。

【対策】

1 ピット内でトルエンによる希釈塗料を用いることは可能な限り避けること。やむを得ず用いる場合は、以下の暴露防止措置を徹底させること。

2 作業現場に送風機を設置し換気対策を十分に講じること。

3 適正な呼吸用保護具を確実に着用させること。

4 有機溶剤作業主任者が適正な指揮、管理等を行わせること。

5 安全衛生教育を行い、作業標準を徹底させること。

6 元請が作業指示、管理を徹底し、作業終了点呼、作業箇所巡回を行うこと。

【業種】

その他の建築工事業

【被害者数】

死亡者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

 - 函館の建設業, 旭川の建設業, 札幌の建設業 , , , , , , , , , , , ,

ボイラー洗浄時の1,4-ジクロロブテンのばく露による薬傷

   

【労災概要】

クロロプレンモノマープラントの異性化反応器に付属する2基の異性化反応器リボイラーのチューブ内のジェット洗浄作業を行った被災者が、作業終了後、身体の皮膚の各所が赤くなり眼が充血していることが確認され、病院に搬送された。治療のため入院していたが、災害発生3日目に、化学物質による熱傷性ショックの疑いで死亡した。チューブ内容物は、1,4-ジクロロ-2-ブテン(1,4-DCB)が約85%である。保護帽、有機ガス用防じん機能付き吸収缶を付けた全面形防毒マスク、雨合羽、ゴム手袋、ゴム長靴を着用していた。

【原因】

1 適切な保護具未着用

2 保護具管理不足・点検不備

3 作業標準書・マニュアルの不備

4 作業主任者・管理責任者等の指示内容の検討不足

【対策】

  • 1 チューブ内のジェット洗浄作業で1,4-ジクロロ-2-ブテン(以下、1,4-DCB)のばく露するおそれがある作業を行うときは、以下の①及び②のように作業手順を見直す等により、同作業を行う労働者に可能なかぎり1,4-DCB含有のジェット洗浄水が跳ね返らないようにすること。

・ジェット洗浄作業前は、ジェット洗浄作業以外の方法で、あらかじめ、チューブ内の1,4-DCB含有の液溜まりやスケールを少なくすること。

・ジェット洗浄作業中は、ジェット洗浄ノズルに、お椀型のカップのような、ジェット洗浄水が跳ね返ることを防止する装置を付けること。

・計時的にジェット洗浄水の圧力を上げていき、ジェット洗浄水が跳ね返らない序盤にDCBを洗い流してしまうこと。

2 チューブ内のジェット洗浄作業のごとく1,4-DCBにばく露するおそれがある作業に従事する労働者に着用させる雨合羽等の保護具の隙間から1,4-DCBが侵入しないよう、隙間を可能な限り塞ぐとともに、被災者が着用していた雨合羽よりもDCBに対して不浸透性である保護衣を同作業に従事する労働者に着用させることを検討すること。

3 チューブ内のジェット洗浄作業のごとく1,4-DCBにばく露するおそれがある作業に従事する労働者に着用させる保護衣は使い捨てとすることが望ましいこと。また、保護衣を使い捨てにできない場合、1,4-DCBにばく露した可能性がある保護衣の表地を洗うときには、洗浄廃液を保護衣の裏地に付着させないこと。

4 チューブ内のジェット洗浄作業のごとく1,4-DCBにばく露するおそれがある作業に従事する労働者が着用する雨合羽等の保護具の隙間に1,4-DCBが侵入した可能性があるときには、当該労働者にその旨を関係労働者に自己申告させ、関係労働者は当該労働者にジェット洗浄作業を止めさせ、当該労働者への1,4-DCBのばく露の有無を確認させること。

【業種】

建設業

【被害者数】

死亡者数:1人

 

出典:厚生労働省ホームページ 職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)

 - 函館の建設業, 旭川の建設業, 札幌の建設業 , , , , , , , , , , , , , ,